AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

テクニカルトーク:継続的耐空性

軍属 デイブ・クリップスおよびスティーブン・ブラッドム

米国陸軍レッドストーン試験センターにおいて航空機整備を行う契約業者

この記事は、耐空性の基本的原則に関する連載記事の最終回です。

前回までの2つの記事では、航空システムの設計が航空機に適用される適切な軍用「建築基準」要求に従っていることを確保する設計承認と、「実際に製造された」システムが承認された設計に適合していることを確保する製造承認について取り上げました。本記事では最後に必要となる継続的耐空性を取り上げます。

設計承認の焦点は特定の型式、設計、および系列のすべての航空機であり、製造承認の焦点は個別の機体でした。継続的耐空性は、個別の機体が全運用期間を通じて耐空性を維持することを焦点とします。耐空性とは、承認された使用限界に従って飛行を安全に達成し、維持し、完了できる航空システム構成の特性です。継続的耐空性の重要な要素は、航空機をその運用マニュアルの第5章に定める使用限界および第6章に定める重量・重心限界内で運用すること、ならびにあらゆる限界の超過後に適切な点検および整備を実施することです。

航空機の構成品は、運用期間全体にわたってさらされる応力と荷重の強度と期間を定義する運用プロファイルに基づいて設計されます。この運用プロファイルから著しく逸脱した場合は、構成品の寿命が短くなる可能性があります。継続的耐空性はまた、運用マニュアルの第8章に従った通常運用手順および第9章に従った緊急手順の厳格な遵守を義務付けます。

継続的耐空性はまた、航空機の整備が、航空機整備マニュアル(Technical Manuals, TM)および補給所整備作業要求(Depot Maintenance Work Requirements, DMWR)に示された間隔および手順に従って実施されることを要求します。適切な整備員の訓練、承認済み整備マニュアル、航空機整備員から独立した品質管理および技術検査員、部隊指導層による重点施策、および航空資源管理調査(Aviation Resource Management Survey, ARMS)は、整備が継続的耐空性要求を満たすことを確保するための方策の一例です。しかし、現場においては、航空機整備マニュアルに示された承認済みの手順、間隔、または検査基準からの逸脱を必要とする状況が発生します。これらの状況において、その逸脱を評価し、承認し、文書化するために使用されるのが航空機等技術指令書(Maintenance Engineering Call, MEC)と呼ばれる耐空性措置です。航空・ミサイル・コマンドの連絡技術士官(Liaison Engineers, LE)は、現場の部隊と協働しつつ、航空機の可動状態および耐空性を維持するため、年間数千件の航空機等技術指令書を調整および管理しています。部隊整備または補給所整備の恒久的な変更が必要な場合には、整備マニュアルまたは補給所整備作業要求が更新されるまでの間、整備技術命令(Maintenance Engineering Order, MEO)が使用されます。実施された作業を記録するだけでなく、作業の検査および承認、ならびに実施された作業の履歴を把握し、事故が発生した場合の要因検討を容易にするためには、記録保持を厳格に実施する必要があります。

システムの全寿命にわたって耐空性を維持するためには、航空機が配備された後に発見される欠陥またはその他の潜在的な危険状態に対処することが必要になります。そのような欠陥または危険な状態が発見された際には、根本原因の技術調査を開始する製品品質不具合報告書(Product Quality Deficiency Report, PQDR)が作成されます。米国陸軍航空・ミサイル・コマンド(U.S. Army Aviation & Missile Command, AMCOM)は、陸軍規則750-6に従って、飛行安全(Safety of Flight, SOF)通達航空安全措置通達(Aviation Safety Action Messages, ASAM)、および航空整備措置通達(Aviation Maintenance Action Messages, AMAM)などの文書を発出し、問題に対処するための整備、技術またはその他の情報、ならびに指示および指針を提供します。継続的耐空性を確保するためには、これらすべての通達に従わなければなりません。

最後に、継続的耐空性を確保するためには、部品およびプロセスが厳格に検証され、必要な技術および品質要求を満たした、交換部品およびオーバーホール・サービスの供給源の存在が不可欠です。これには、製造承認に関する前回の記事で論じた重要安全品目(Critical Safety Items, CSI)の管理が含まれます。

設計および製造耐空性は、装備開発者、調達プログラム・オフィス、および耐空性技術士官・担当官の責任ですが、継続的耐空性はすべての者の責任です。操縦者、整備員、訓練者、およびすべての階層の指導者は、承認された制限、過程、および手順に従って航空機を運用および維持することにより、陸軍航空機の継続的耐空性を確保する重大な責任を有しているのです。

デイブ・クリップス氏は米国陸軍戦闘能力開発コマンド航空・ミサイル・センター・システム即応性局(アラバマ州レッドストーン兵廠)に所属する主任耐空性技術士官であり、スティーブン・ブラッドム氏は副耐空性技術士官です。

                               

出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2024年07月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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