テクニカルトーク:航空機構成品の振動試験
古い車を運転していて、車の下の緩んだ金属製排気遮熱板のようなものががたがたと音を立てるのを聞いたことはないでしょうか。さらに、それが特定のエンジン回転速度でのみ発生することに気づくかもしれません。
この現象は共振と呼ばれます。エンジン回転速度が緩んだ遮熱板の固有振動数(または複数の固有振動数)と一致することで、大きな振動応答が引き起こされるのです。この状態は、耳障りなだけでなく、遮熱板自体やその隣にある物体を損傷させる可能性があります。
この状態が高感度な電子機器に起こることを想像してみてください。それが弾薬だったらどうでしょうか? ましてや、車の中ではなく、飛行中のヘリコプターに搭乗していているとしたら...
振動による破壊的な影響を避けるには、どうすればよいのでしょうか? そこで登場するのが構成品振動認証です。この認証は、陸軍安全性認定基準(Army Military Airworthiness Certification Criteria, AMACC)により、すべての陸軍航空機(ヘリコプター、固定翼機、さらにはUAS(Unmanned Aircraft System, 無人航空機システム))の新規または更新された航空機器材に適用が義務付けられています。さらに、振動認証は飛行安全(Safety of Flight, SOF)要件であり、構成品を航空機に搭載する前に必要な環境認証試験の一部となっています。認証を受けた構成品は、搭載される航空機の振動環境に耐えられることが保証されます。

振動認証試験の一般的なガイドラインは、ADS-27A-SPに記載されていますが、詳細な手順はMIL-STD-810の最新版(現在はリビジョンH)に記載されています。通常、構成品はシェーカー・テーブル(典型的な設定は図1のとおりです)で試験され、規定された振動プロファイルが軸ごとに4時間(構成品が航空機に搭載される方向に対応する縦方向、横方向、垂直方向の合計12時間)加えられます。
適用される試験プロファイルは用途によって異なり、構成品が搭載される航空機プラットフォームと航空機上の位置によって決定されます。この軸あたり4時間の振動プロファイルは、ヘリコプターでの2,500飛行時間をシミュレートしています(固定翼機の試験は軸あたり1時間で、1,000飛行時間をシミュレートしています)。このため、試験の振動レベルは、試験時間が圧縮されていることを考慮し、実際のレベルよりも大幅に拡大されています。アパッチ、ブラック・ホーク、およびチヌーク・ヘリコプターの場合、MIL-STD-810Hによって試験運用手順01-2-603Aの実施が指示されており、各機体に適した試験プロファイルが提供されています。他の陸軍航空機については、MIL-STD-810H自体にプロファイルを導出するために必要な方程式が含まれています。
試験される装備品には、試験中に損傷を受けなかったことを確認するため、試験前および試験後に目視および機能点検を行います。また、必要に応じ、シェーカー・テーブル試験の全期間中、すべての機能が作動可能であることが監視されます。
複数の機種に搭載される構成品の場合には、マルチ・プラットフォーム・アプローチを採用するのが通常です。この方式では、構成品の共振周波数を特定するために、シェーカー・テーブルでサイン・スイープ(正弦波の周波数を一定の範囲で徐々に変化させながら振動を加える試験)を実施します。これらの周波数は各航空機タイプの駆動周波数と比較され、最も一致する周波数が最悪ケースの試験プロファイルに用いられます。構成品は、すべてのプラットフォームの振動環境に耐えられることが期待されるため、機種ごとに個別に試験するのではなく、この最悪ケースのプロファイルを使用して認証が行われます。この合理化された試験方式を採用することで、コストと時間の両方を削減することができています。
AH-64Eアパッチのように火器を装備した航空機に搭載される構成品は、飛行振動認証試験に加えて、射撃振動認証を受ける必要があります。試験期間は軸あたり1時間で、ボーイング文書で示されたプロファイルに従って行われます。注目すべき点は、この試験は(条件を厳しくして試験機関を短縮する)加速試験ではないことです。試験対象となる構成品には、シェーカー・テーブルでの1時間の試験の間に、37,000サイクルの振動が与えられます。これは、アパッチのM230ガンの実際のサイクリック発射速度(連続射撃時の1分間あたりの発射可能弾数の繰り返し)に相当します。なお、M230の影響を受ける区画の外にある構成品には、この試験の実施が免除されます。
以上述べたことは、もちろん、構成品振動認証試験の要点を説明したに過ぎません。他の多くの環境認証要件と同様に、手間がかかり、時間とコストもかかる試験ですが、航空機の耐空性と即応性を確保するために欠かせないものなのです。
レイ・ルゴスは、アラバマ州レッドストーン工廠の米陸軍戦闘能力開発コマンド航空・ミサイル・センター・システム・レディネス局航空力学部(Aeromechanics Division)で勤務する航空宇宙技術者です。
出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2024年12月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
アクセス回数:59
Aviation Assetsを応援
Aviation Assetsの活動を応援していただける方からの協賛金(1口100円)を受け付けています。「Buy Now」のボタンを押していただくとPayPalを使って入金できます。