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陸軍航空の情報センター

航空事故回顧-AH-64射撃訓練中の事故

飛行の経過

当該AH-64Dは、夜間のロケット射撃を実施中に地面と接触し、機体に甚大な被害を与えた。乗員に負傷はなかった。

その任務は、駐屯地近郊の総合射場において、2機編成のAWT(attack weapons team, 戦闘ヘリ・チーム)によるガンおよびロケット射撃を実施し、FSCE(fire support coordination exercise, 火力支援調整訓練)を支援するものであった。乗員は、1300(現地時間)に飛行準備を開始した。事故機の乗員は、リスク評価ワークシートを記入し、ブリーフィングを完了して、任務実施の承認を得た。本任務は、低照度環境下における実弾射撃であり、中程度のリスクを伴うものと認識されていた。

1400にO&I( operations and intelligence, 作戦・情報)アップデート・ブリーフィングを終了し、その後、飛行前点検を実施した。1430にチーム・ブリーフィングを実施した。その後、一日の最初の飛行前に行うクルー・ブリーフィングを行った。事故発生当時の気象は、気温:12℃、視程:12マイル、雲高/雲量対地:2,900フィートにおいてFEW(ほとんどなし)、対地4,000フィートにおいてOVERCAST(全雲)、風向/風速:340度6ノット、照度:19%であった。現地の標高は、平均海面高度5,813フィート(1,770メートル)であり、地形は、飛行方向に上り坂になっていた。その計算上の勾配は、2°であった。

1527、AWTは、集結地を出発し、FARP(Forward Arming and Refueling Point,弾薬燃料再補給点)において燃料再補給と弾薬搭載を行った。1717から1827にかけて、AWTは、FSCX(fire support coordination exercise, 火力支援調整訓練)飛行経路を用いて1回目の訓練を行った。チームはその後、1938から2145にかけて、計画されていた2回の夜間訓練のうちの1回目を実施した。AWTは、2215に最後の夜間訓練に飛び立った。3回の飛行はすべて、NOE(nap of the earth, ほふく飛行)に引き続き、ホバリング状態でのAWS(area weapons system, 地域攻撃兵器システム)射撃およびホバリング状態でのロケット射撃を行うように計画されていた。

攻撃準備態勢を取り終わると、AMC(airborne mission commander, 機上任務指揮官)は、AWTをABF(attack by fire, 攻撃位置)までNOE飛行ルート沿いに飛行させた。長機は左に位置し、事故機はその右後方に位置した。チームはその後、ホバリング状態でのAWS射撃を実施した。この時、事故機は70発を発射している。

次の射撃は、ホバリング状態でのロケット射撃であり、事故機は、照明ロケット弾を1発発射する予定であった。目標までの距離は、1,738メートルであった。事故機のPI(副操縦士)は、目標を入力した後、目標の標高に2,000フィートを加えた。事故機のPC(機長)も、その加算を承認した。PCは、「ロッキンク・チェア・テクニック」を使って射撃しようとしていた。それは、航空機を24KTAS(真対気速度ノット)まで増速し、機首を上げてから、ロケットを射撃するというものであった。PCは、ロケットを射撃した後、高度を維持したままで、航空機を停止させるつもりであった。PCは、対地60フィートで前進を開始し、航空機が20KTASまで増速すると機首を上げ、照明ロケット弾の発射姿勢をとった。PCは、51°の機首上げ姿勢となった時にロケットを発射した。ロケット発射とほぼ同時に、テール・ホィールが地面に接触した。

地面との接触により、No.2外側ロケット・ポッドが機体から脱落し、No.2側メイン・ランディング・ギアのタイヤがリムから外れ、ガン・ターレットが破断した。次に、機体は、再び空中に舞い上がり、左方向に約180°ヨーイングした。PCは、左方向のヨーイングを止めると、機体をやや右にドリフトさせながら、前下方に機体を進めた。メイン・ランディング・ギアが地面に接地した後、機体は約15フィート滑走した。機体が停止したのは、2319であった。機体の損傷は、クラスBに該当するレベルであると判定された。

搭乗員の練度

後方座席に搭乗していたPCは、総飛行時間1,600時間、AH-64Dで1,536時間、NVSで559時間、NVGで196時間およびPCとして610時間の経験を有していた。前席座席に搭乗していたPIは、総飛行時間509時間、AH-64Dで426時間、NVSで147時間、NVGで33時間およびPCとして13時間の経験を有していた。

考 察

事故調査報告書は、次のとおり示している。搭乗員はロケット射撃の実施に集中するあまり、機動中に機体下方の上り坂の地形がもたらす危険を適切に認識できなかった。また、搭乗員は、TC 3-04.45 COMBAT AVIATION GUNNERYに示されているとおり、射場の概ね中間の地点で射撃を行ったが、その際、不必要に目標高度を増加させた。また、TC 3-04.45 COMBAT AVIATION GUNNERYには、「ロッキング・チェア・デリバリー・テクニック」に関し、照明ロケット弾を発射する際に機首を上げた結果、後進飛行となることを避けるため、それを使用することが記載されているものの、それに関する標準的教義は存在していない。「ロッキング・チェア・デリバリー・テクニック」に関する部隊レベルでの操作要領の確立や、TPP(tactic technique and procedure, 戦術的テクニックおよび手順)が文書化されていないことが、搭乗員に「ロッキング・チェア」的な機動を行う場合において、特にロケット発射後の機体姿勢回復時の危険性についての認識を低減させた。

           

出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness/Safety Center 2016年05月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    AH-64が照明ロケット弾を射撃できるとは知りませんでした。