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陸軍航空の情報センター

航空事故回顧:フレア誤発射による地面への接触

概要

暗視ゴーグル(NVG, Night Vision Goggle)条件下での緊急空中機動任務を実施中、アップスロープ・ランディングを行った際にCH-47Dの前部ローター・ブレードが地面に接触した。当該ローター・ディスクがアンバランス状態となり、前後のローターのシンクロが失われ、重大な機体損傷および4名の軽傷を引き起こした。

発生の経緯

事故機は2機の戦術作戦用夜間待機任務機のうちの1機であった。事故当夜の1900(現地時間)に戦術任務クルーは任務を開始した。2100(現地時間)、本拠地から15マイル離れた山岳地帯における潜入および離脱任務が付与された。2機のCH-47Dには、2機のAH-64Dが護衛機として割り当てられた。2230、任務ブリーフィングが実施され、低照度環境(レッド・イルミネーション、月高度30度未満)であり、非標準的ヘリコプター降着地域(NSHLZ, Non-Standard Helicopter Landing Zones)を使用することから、高リスクの任務と判定された。現地にいた旅団長が任務を承認した。任務ブリーフィング後、中隊指揮所(CP, Command Post)でクルー・ブリーフィングが実施され、続いて飛行前点検および地上試運転が実施された。気象予報は晴天で視程に制限はなかった。潜入時の飛行中における月の輝面率は68%であり、月の高度は30度と低かった。

2345(現地時間)、編隊は事故機を長機として離陸した。降着地域(LZ, Landing Zone)に到着した際、左席の機長(PC, Pilot in Command)はその場所に2機が同時に着陸することはできないと判断し、2番機のLZを空けるため前進することを決心した。右席で操縦していた副操縦士(PI, Pilot)は、アップスロープ・ランディングを行うために適当な場所を探しながら前進した。2358(現地時間)、着陸中に共通ミサイル警報システム(CMWS, Common Missile Warning System)がフレアを放出し、前部ローターが地面に接触した。機体は右に横転し、今度は後部ローターが地面に接触した。機体は左側に戻って真っ直ぐになり、正立状態で停止した。機体は大破し、4名の人員が軽傷を負った。

搭乗員の練度

左席の機長は総飛行時間3,000時間以上、CH-47Dで1,300時間、そのうち950時間を教官操縦士(IP, Instructor Pilot)/標準化操縦士(SP, Standardization Pilot)として飛行していた。副操縦士は総飛行時間1,500時間以上、CH-47Dで266時間を飛行し、UH-60およびCH-47Dの機長資格を保有していた。右側キャビン・ドアに位置していた航空機関士(FE, Flight Engineer)の総飛行時間は3,900時間以上、ランプに位置していたクルー・チーフ(CE, Crew Chief)は300時間、左側キャビン窓に位置していたドア・ガナーは89時間であった。

考察

事故調査委員会は、LZでNVGを使用したアップスロープ・ランディングを実施中、操縦していた副操縦士が誤ってフレア・ディスペンサーを作動させ、多数のフレアが放出されたため、注意散漫な状態になったと断定した。副操縦士が反射的にサイクリック・コントロールを前方に倒したため、前部ローター・ディスクが地面に接触した。ローター・システムがアンバランスとなってシンクロを失い、重大な機体損傷と4名の軽傷を引き起こした。フレア・ディスペンサー制御スイッチの押下は、UH-60のトリムと同じ位置にあったため、間違って操作したものであった。また、搭乗員は搭乗員手順書(APG, Aircrew Procedures Guide)に従ったフレア・ディスペンサーの安全化(セーフ状態への切替)を行っていなかった。一部の搭乗者は、搭乗員の指示を待たずにシートベルトを外してしまっていた。このため、カーゴ・エリア内に体が投げ出され、軽傷を負うことになった。

注記 本報告書に含まれるすべての情報は事故防止の目的以外に使用してはならない。 また、米陸軍コンバット・レディネス・センター(USACRC, U.S. Army Combat Readiness Center)の事前承認を受けることなく、国防総省(DOD, Department of Defense)の外部に配布してはならない。 完全な事故速報は、コンバット・レディネス・センターのリスク管理情報システム(RMIS, Risk Management Information System)からアクセス可能である。 陸軍ナレッジ・オンライン(AKO, Army Knowledge Online)の利用にあたっては、パスワードとRMISへのアクセス許可が必要である。

                               

出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2012年06月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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2件のコメント

  1. 管理人 より:

    2012年の記事です。

  2. 管理人 より:

    元の題名は「NVGを使用した複数機による空中機動」でしたが、事故の原因である「フレア誤発射による地面への接触」に変更しました。