AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

航空科部隊の特性をアピールせよ(前編)

陸軍航空に特有の要求事項に対応するために

中佐 ジョン・Q・ボルトン
少佐 ワイアット・A・ブリテン

訳者注:米陸軍航空教育研究センター(Army Aviation Center of Excellence)が発行する「AVIATION DIGEST」2022年4月~6月号に掲載された「Talk About Flying: Addressing Army Aviation’s Unique Requirements」と題する記事を前後編の2回に分けて翻訳・掲載します。

ハンガリーのタザール飛行場に着陸するアパッチ攻撃ヘリコプター。写真:SGT Preston Malizia

「我々は、戦闘をアピールしなければならない。そもそも、戦闘というものを理解できていなければ、偉大な指揮官になることはできない。そのどちらもが重要なのだ。」—中佐 テディ・クライスナー

陸軍航空は、アフガニスタン、イラク、その他の地域における持続的な戦闘作戦において、卓越した支援を行ってきた。変化し続ける安全保障環境の中、低強度紛争への対応を怠ることなく、陸軍航空の訓練を新たな要求に適応させなければならない。過去20年間にわたってパイロットが直面してきた環境、任務および敵は、ロシアや中国による接近阻止や西太平洋沿岸における環境といった現代の脅威とはほとんど共通点がない。2014年以来、フォート・ラッカーは、部隊レベルの訓練ではなく、「ハードドライブをデフラグ」し、准尉の経歴を改革するため、パイロットがコックピット内でどのように操作するかというような各個訓練を重視してきた(Francis, 2021; Sauls, 2014)。それは、航空科職種にとって正しい動きではあるが、戦闘訓練センター(CTC)における作戦用航空機の演習の結果は、航空機が十分に活用されず、空中機動やattacks out of contact(非接触攻撃)などの戦闘状況において、困難に直面することを示している(Sevigny 2021;Woodward&Godfrey,2015)。この問題に対処するため、陸軍航空の部隊レベルの訓練において3つの取り組みを推奨する。飛行文化を醸成し、飛行訓練と「巨大な陸軍」における訓練との制度との違いを明確化し、大規模な訓練を重視することである。そうすることにより、陸軍航空の訓練文化を近代化し、すでに実施されている個人レベルの変革を活かすことが可能となる。

第一に、陸軍航空は、たとえアメリカ陸軍および統合軍に対する支援を行う場合であっても、その独自性を確立しなければならない。最近の「Field Grade Leader」誌のある記事は、軍の各級指揮官が「戦闘をアピール(Talk About Fighting)」することを推奨している。それは、指揮官が訓練管理の目的、対象および手法について、意見を明確に述べることを意味している(Kleisner,2018)。これは素晴らしいアドバイスである。航空部隊の指揮官も、同じように「飛行をアピール(Talk About Fling)」する必要がある。

「飛行をアピール」するとは、航空教義を知らしめ、我々がどのように飛行し、機体を維持し、地上部隊を支援し、統合軍に適合するかについて、オープンかつ率直に議論することを意味する。このことは、航空科職種を発展させるために不可欠である。これはまた、パイロットの戦術教育が、単なる義務ではなく、航空部隊の(整備および飛行以外の)基本的な活動であることを意味する。「飛行をアピール」するには、航空祭などの地元のイベントでのプロモーション、准尉の学校教育や週1回のパイロットの戦術教育を超えた航空専門技能教育の実施、民間資格に関するパイロットへの支援などが必要となる。このような取り組みは、部隊の士気を高めると同時に、職種のパイロットの維持に関する問題の解決にも役立つ(Randel, 2020)。

言うまでもないことであるが、もっと傲慢になれと言っているわけではない。陸軍の飛行は、無数の困難な業務を遂行することが期待されている名誉ある役割である。我々には、複雑な作戦において、複雑な機体を運用する名誉ある役割を与えられている。通常の飛行訓練にさえ、民間パイロットがほとんど行うことのない飛行が含まれている。陸軍のパイロットは、常に、狭隘な降着地域を用いた正確な作戦を実行し、ほふく飛行を行い、武装を用いた戦闘戦術を余剰出力が小さい状態で夜間において実行している。平均的な陸軍パイロットは、民間パイロットや、陸軍航空よりも規模の大きな他軍種のパイロットを上回る能力を発揮している。

陸軍航空固有の訓練要求事項に対応せよ

陸軍航空の文化を醸成するということは、それを保護することを意味する。第二に、航空に関する要求事故を「巨大な陸軍」の訓練体制と統合する上での構造的及び文化的障害に立ち向かわなければならない。問題は、主に構造的なものである。陸軍の訓練の枠組みは、航空部隊が必要とする継続的な訓練には十分に適合していない。陸軍航空の独自の能力には、独自の要求事項が存在する。航空は、部隊が「陸軍のおまけ」に行うものではなく、陸軍のために行うものである。したがって、陸軍航空の部隊が、旅団戦闘チーム(BCT)と同じ訓練管理サイクルに合わせたり、11、19、13、または21シリーズの兵士と同じ「戦闘戦技」を身に着けさせたりするのは非現実的なことである。陸軍航空の各級指揮官は、任務遂行に不可欠な業務(mission essential tasks, METs)に習熟するため、「巨大な陸軍」の要求事項を模倣することではなく、航空固有の戦技を重視する必要がある。

航空部隊は、空飛ぶ地上大隊ではない。むしろ、ある上級准尉が言うように、「軍に奉仕する飛行組織」(personal communications, Harkness, 2022)なのである。航空部隊の指揮官は、柔軟で殺傷性を有する航空戦力を構築するには、時間、資金、重点を大幅に投資する必要があることを認識しなければならない。パイロットの最低飛行時間は、まさに「最小限」なのである。様々な業務について航空機乗組員と部隊の能力を維持するには、航空機の中や周りで過ごし、そして部隊レベルの計画とともに航空機について議論するための時間がさらに必要である(Forsling, 2016)。長期にわたる海外展開の中で容易に経験を積むことができなくなった今、部隊長は、能力を意図的に構築することをこれまで以上に重視しなければならない。

「航空科職種の各級指揮官は、漸進的で厳格で包括的かつ反復的な道筋を達成し、部隊の即応態勢を達成するため、各個・部隊訓練を航空機乗組員の訓練プログラム、武装プログラム、および整備プログラムと同期させる必要がある。」—中将(退役) マイケル・ランディ

しかし、陸軍のパイロットがなぜ自分たちが異なるのかを説明するとき、この独自性を率直に説明することができない場合が多い。このため、射撃検定、体力検定、レンジャーや空挺課程など、地上部隊と同じ指標に頼ることになる。航空科における指標には、実施された整備時間、機長認定、および地上部隊に対する支援飛行の回数などがある。これらを「巨大な陸軍」の用語に翻訳しなければならない場合が多いが、航空部隊の指揮官は次のことを理解する必要がある。歩兵を支援するためには、必ずしも歩兵である必要はない。

図1訓練計画の作成(Britten, 2022)

航空部隊は、部隊レベルの業務に焦点を当てつつ、個々の兵士およびパイロットの技術的および戦術的能力を育成するために必要なことを重視しなければならない。間違ったことをうまくやるのは無駄なことなのだ。図1に示すように、航空戦闘の即応性を構築するための主要な業務、技能、およびチーム・ワークの醸成が訓練スケジュールの主体とならなければならない。そのためには、過去に機能したことや容易に判断されたことが無関係である可能性があることを認識しながら、無駄な業務を排除する必要がある。最近、この点を簡潔に述べた記事が発表された。「ケトルベル(ヤカンのような形をしたダンベル)は月では役に立たない」(Byerly, 2020)。重要なことは、すべての技能を向上することは不可能であり、部隊は向上が必要なことを重視しなければならないということである。

例えば、航空科部隊は、野外において運用できなければならない。しかし、真に訓練しなければならない業務は、長距離展開である。テントを張ったり、陣地を掘ったり、迷彩服を着たりするなどの野外勤務も重要ではあるが、部隊が指揮、兵站、保守活動を持続的に実施しつつ、遠隔地において運用できることの方がもっと重要である。その遠隔地が、森の中であるか、草地の飛行場であるか、舗装された(ただし離隔している)飛行場であるかは、ほとんど問題にならない。しかし、指揮官には、訓練の「厳しさ」とその有効性を区別できず、ドーランを塗ることなどの表面的な行為と個人および部隊の能力とを混同している者があまりにも多い。15シリーズの兵士が射撃検定や体力検定を重視することに異議を唱えるつもりはないが、長距離の行軍、防護マスクを装着した射撃(または夜間射撃)、手榴弾の投てきなどは、航空科職種に不可欠な能力ではない。にもかかわらず、それらが航空機の整備や必要な飛行訓練よりも優先されることがあまりにも多い。

15シリーズの兵士に警衛勤務などの非戦闘的業務を制限するのと同じ考え方である。なぜなら、整備は訓練であり、飛行部隊に欠かせないものであり、すでに多忙な航空部隊において兵士を雑多な業務に狩り出すことは、深刻な人員不足をもたらし、整備員の技能向上に必要な実務訓練の機会を奪うことになるからである。部外の業者は、一部の整備作業について部隊を支援することができるが、大規模な部隊としてチーム化され、十分に訓練された(派遣可能な)兵士の代わりにはならない。個人の整備能力を重視することは極めて重要であり、Training Circular 3-04.71「指揮官の航空整備訓練プログラム」が発行され、その能力の把握と確認が要求されている(Department of the Army, 2020)。航空部隊の指揮官は、整備作業を重視した「戦闘戦技」訓練および技能の強化を検討すべきである。これは単に戦闘戦技の代わりに定期整備を実施することを意味するのではない。整備及び航空業務を重視した戦闘戦技を構築することを意味する。

航空訓練に対する構造的な問題を悪化させているのは、その文化なのかもしれない。多くの場合、その課題は「巨大な陸軍」の要求事項ではなく、なぜ航空部隊が無関係な業務を回避しなければならないのか、あるいは潜在的な地上支援を削減しなければならないのかを説明できないことである。工兵や歩兵部隊とは別の職種として任務を遂行してきた航空部隊は、陸軍で群を抜いて忙しい部隊である。その理由は単純である。地上部隊が野外に行くのも難しいことだが、パイロットは休憩を取るのも難しいからである。単純な統計から考えてみよう。高機動多目的装甲車(High Mobility Multipurpose Wheeled Vehicle, Humvee)は、年間168時間の稼働を必要とするが、ヘリコプターは同等の稼働をほぼ毎週必要とする。地上車両の整備には1-3日かかるが、ヘリコプターのフェーズ点検には1か月以上を要する。航空機の整備、パイロットの技量維持及び航空支援機器に関する欠かすことのできない要求事項は、旅団戦闘団(brigade combat team, BCT)に対する主要な訓練演習の前、最中又は後においても、わずかであっても緩和されることはない。これらの業務は、問題の始まりにすぎない。新しいパイロット(他の職種のように機長として受け入れるわけではない)の認定、年間の学業、パイロットおよび整備員の記録管理、補給整備検査、および評価標準化局(Directorate of Evaluation and Standardization, DES)による監査など、独自の(そして集中的な)航空要求事項への対応が必要となる。

「すべてのパイロットは、これらの重要な業務を定期的に実行する必要があります。これらの飛行は単に管理のために必要なのではなく、不可欠なものなのです」—カール・フォースリング、作家、海兵隊パイロット

航空科部隊の文化を還元せよ

我々は、陸軍航空が要求された(そして効果的な)支援を提供するための条件として、ほとんどの師団および旅団の司令官や参謀が航空特有の要求事項を理解していると信じている。しかし、部隊レベルに応じた違いを理解させるには、詳細な説明が必要である。パイロットの独自性を簡単に説明することは難しいが、補給整備会議、航空攻撃ブリーフィング、航空任務計画セッションなどの航空固有の活動への招待を通じて、地上指揮官への理解を得るようにしなければならない。そうすることは、航空の独自性を理解させるだけでなく、諸職種連合チーム全体に共通の語彙と期待を生み出す上で大いに役立つだろう。

米軍のパイロットたちは、そういった説明を行う一方で、職種全体の文化の問題にも取り組まなければならない。航空部隊の指揮官は、パイロットが飛行することに対して、奇妙で有害な罪悪感を抱いている。陸軍の飛行部隊の中だけではなく、その近くに配置された他の軍種のパイロットにとって、(あらかじめ知識を持っていない限り)極めて奇妙なことに違いない。陸軍のパイロットは、例えば、師団の参謀などの場合、常に最新の状態を維持する責任を果たすための時間を見つけることができない。アメリカ空軍のジェフリー・ハリガン中将は、空軍中央軍司令官時代にF-22での戦闘任務を日常的に遂行していたが(図2)、旅団戦闘団やその他の幕僚として配属された陸軍のパイロットは、近くに航空科部隊があっても、飛行活動カテゴリ(flight activity category, FAC)3の最低限の飛行さえも、日常的に実施することができていない(注1)。

図2 2018年8月7日、F-22飛行での最終フライトを終えたアメリカ中央空軍司令部(現アメリカ空軍センター)司令官のハリガン中将。撮影:TSgt Nieko Carzis)

このような否認状態にあるパイロットの存在は、部隊全体に浸透し、有害な影響を及ぼす。司令官が「X大尉はどこにいるのか?」と尋ねる場面を想像してもらいたい。「彼(彼女)は飛んでいる」と答えると、おそらく沈黙が部屋を支配するであろう。中には、「私が言うまで二度と飛ばせるな」と言う司令官もいるかも知れない。実弾射撃に参加するために会議を欠席した歩兵将校や、砲術を監督する砲兵指揮官を批判する者はいないが、パイロットはこの種の破壊的な批判に日常的に直面する。空挺戦闘旅団戦闘団においては、職員は降下訓練のために6-10時間にわたって不在になるのが日常である。しかし、陸軍航空では、陸軍であればどの職種でも行っていることを実施したことで、自分自身を罰するのである。パイロットの優先事項である航空を軽視するのであれば、かなりの数のパイロットが最低基準を満たしていないのはあたり前である(注2)。我々は、自らその状況を作っているのである。パイロットが飛行しているのを聞いた航空科職種の各級指揮官は、「良かった。その飛行が我々の訓練計画の基礎だ」と言うのが正しい反応だ。

他軍種の機体と比較して陸軍ヘリコプターのコストが比較的低いことを考えると、我々が最低要件を満たさないことに弁解の余地はない。航空の文化を変えない限り、特に下級士官にとって、職種内での問題を生じさせる。奇妙なことに、パイロットが自分自身の技量の維持を重視すると、しばしば「運転手」またはそれ以下として認識される。一部の上級パイロットにも、そのように認識する者がいる。航空科の尉官たちは、士官、管理者およびパイロットになるために十分な時間をかけようとしているが、その頭上には剣が逆さにつり下がっているのだ。他軍種の下級士官のパイロットは、最初の配属先で飛行することだけを重視していればよいにも関わらず。

このような反航空的な状況は、2020年の軍事航空研究に関する国家委員会(National Commission on Military Aviation Study, NCMAS、2020年)においても、暗黙のうちに非難されている。2013年から2019年にかけて、286人の命と116億ドルの財産を奪った6,000件の軍用機事故を調査したこの研究では、基本的な技能の欠如と、飛行以外の業務による注意散漫が、多くの事故の主な原因であると結論づけられた。たとえパイロットが飛行したとしても、最低飛行時間を満たしているだけでは、事故の要因となりうるのである(NCMAS、2020; Forsling、2016)。さらに、この研究によれば、最小限の飛行しかしていないパイロットは不安全なだけでなく、部隊の能力発揮を困難にするという十分な証拠を提供している。このように、軍事航空研究に関する国家委員会(および常識)は、航空科職種の文化が安全に影響を及ぼしていると考えている。航空業務を重視しない部隊は、航空機搭乗員の運用に伴う不安全要因を増大させているのである。

最新バージョンのAH-64Eアパッチヘリコプターについて教育を受けるMarne Air Soldiers(撮影:SPC Savannah Roy)

注1: 詳細については、Training Circular 3-04.71(https://armypubs.army.mil/epubs/dr_pubs/dr_a/pdf/web/arn14459_tc%203-04×11%20 c1%20 incl%20 final%20 web.pdf)、2018、7-4ページを参照のこと

注2:評価標準化局関係者からの聞き取り。陸軍航空全体の正確な記録を収集することは極めて困難であるが、2019~2020年の評価標準化局の視察結果および飛行時間データの分析によれば、最低基準を満たしていないパイロットは15%に達すると推定される。

<航空科部隊の特性をアピールせよ(後編)>

                               

出典:AVIATION DIGEST, Army Aviation Center of Excellence 2022年04月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

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2件のコメント

  1. 管理人 より:

    長文のため、TexTraを活用し、かっ飛ばして翻訳したものです。
    不十分なところが、あちこちにあると思いますが、ご容赦ください。

  2. 管理人 より:

    「Marne Air Soldiers」の意味が分かりません。ピンとくる方がいれば、教えて下さい。