沿岸域での陸軍航空:インド太平洋軍大規模戦闘作戦における作戦上のギャップを埋める

序文
陸軍は、マルチドメイン作戦環境におけるLSCO( Large-Scale Combat Operations, 大規模戦闘作戦)の訓練、戦闘、勝利の方法を検討する中、重大な転換点に立っている。国防総省が中東における対テロ戦争から同等の敵対勢力との大国間競争へと軸足を移している今、陸軍は、地政学的舞台における競争相手を十分に抑止するため、現在の教義、能力、全体的な態勢を速やかに見直さなければならない。LSCOは、我が軍が地理的統合戦闘コマンドの下で統合軍として戦い、各軍種の構成コマンドを活用して、割り当てられた戦域内で互いに補完し合うことを要求する。太平洋戦域ほど多様で管理が困難な戦域はない。世界人口の約60パーセントを占める38カ国を擁するインド太平洋軍(INDOPACOM, Indo-Pacific Command)および米陸軍太平洋軍(USARPAC, U.S. Army Pacific)の責任地域は、米国が、その戦力投射と敵対勢力の抑止のために、この地域において積極的なプレゼンスを維持する上で極めて重要である(INDOPACOM, 2024)。さらに、この戦域には3,000を超える言語が存在し、世界で最も混雑する国際航路、世界最大の港湾10のうち9つを擁し、世界最大の海洋に広がっている(USARPAC, n.d.).。インド太平洋軍は、その規模、多様性、そして世界的な重要性のため、他のどの戦闘コマンドとも異なる戦略的課題に直面している(INDOPACOM, 2024)のである。
広大な海洋は当然ながら海軍の責任範囲であり、特に紛争時の戦域設定のための形成作戦においてそうであるが、陸軍航空も、洋上能力の向上により、沿岸地域における米海軍の取り組みに貢献できる。
海軍との統合相互運用性を高める堅固な洋上飛行および着艦資格(DLQ, deck landing qualification)プログラムを開発することにより、米陸軍航空は、沿岸域において世界規模で訓練、戦闘、勝利するための独自の立場にある。具体的には、インド太平洋軍の作戦において、陸軍は航空資産を活用して、沿岸域を越えて人員と装備を迅速に移動させ、作戦範囲を拡大し、作戦上および持続支援上の不足を埋めなければならない。
私は、ワシントン州のジョイントベース・ルイス-マコードにおける第16戦闘航空旅団(CAB, Combat Aviation Brigade)での勤務経験から、沿岸に拠点を置くすべての戦闘航空旅団が実施する一貫性のある洋上訓練プログラムを陸軍が開発する必要性を直接目にしてきた。沿岸地域における陸軍作戦の成功は、各階層で着艦資格を維持するために海軍と継続的に連携することにかかっている。本稿は、陸軍の現在の海上作戦(MAROPS, maritime operations)の実践を評価し、訓練・教義コマンドの教義、組織、訓練、装備、指導と教育、人員、施設、政策(通称DOTMILPF-P, doctrine, organization, training, materiel, leadership and education, personnel, facilities, and policy)の枠組みをレンズとして、沿岸地域での作戦能力をより高めるためのプログラム改善を提言するものである。

洞察
インド太平洋軍全域で作戦を行う中で、兵站維持作戦は、陸軍部隊を展開し維持するための最も重要な戦闘機能であるにもかかわらず、作戦計画において最も困難な側面の一つであることを私は観察した。ロシア・ウクライナ戦争における現代的な事例は、堅固な兵站維持計画の重要性がいくら強調してもしすぎることはないことを示唆している。太平洋の広大さは、長期化する紛争での兵站維持における唯一の課題ではない。太平洋には、あらゆる規模と生態系の島が20,000以上存在する(Pacific RISA, 2024)。これらの島々や群島の多くは、港湾の水深が浅く、我々の装備を収容するための適切なインフラ、具体的には、老朽化した港湾、飛行場、道路・鉄道網を欠いている(D. Carpenter、個人的なコミュニケーション、2024年6月1日)。沿岸地域で作戦を行うためには、紛争中に橋頭堡を拡大し、奪取した重要地形を保持するために必要な関連インフラが利用可能でなければならない。
統合出版物1-02「国防総省軍事用語辞典」は、沿岸地域を「1. 海側:外洋から海岸までの陸上作戦を支援するために制御されなければならない地域」と、「2. 陸側:海岸から内陸の地域で海から直接支援および防衛できる地域」の二つに区分される作戦環境と定義している(Joint Chiefs of Staff、2017年、p. 144)。「急速な人口増加、加速する都市化、沿岸化(人々とインフラが海岸線に集中する傾向)、そしてグローバル化」(Schwartz, 2024, p. 47)のような一般的な社会的傾向は、この地域、特に沿岸域での作戦実施の困難さを示唆している(Kilcullen, 2013)。海軍の中核的教義の一つは、海上交通路を維持し、事前集結地または米国本土から太平洋戦域へと戦闘力を機動させるための戦略的海上輸送を実施することである。一方、海兵隊は水陸両用攻撃を開始して、沿岸沿いの橋頭堡やその他の重要地形を確保することができる。しかし、陸軍がインド太平洋軍内で長期的な陸上作戦を行うために十分なレベルの戦闘力を結集するには、準備が必要である。第二次世界大戦の太平洋戦域では、攻撃から橋頭堡の安定化への移行を促進する統合強襲進入(JFE, joint forceable entry)作戦が陸軍の一般的な役割であった(Joint Chiefs of Staff、2021b、IV-2)。
統合強襲進入の根本的な目的は、「上陸部隊を陸上に確立するために戦闘力を迅速に構築することであり…通常、陸上での戦闘能力がゼロの状態から始まる」(Joint Chiefs of Staff、2021a、p. II-11)。沿岸地域を開放することは、陸軍が第2および第3構成部隊の兵站維持艦隊を使用し、小型装備を船舶から陸上へ移動させるために不可欠である。しかし、この地域、特に小さな島々では、ほとんどの海軍および商業用戦略海上輸送船が必要とする深水港が限られている。陸軍と海軍は、この問題を解決するために統合沿岸兵站(JLOTS, joint logistics over-the-shore)システムを共同で開発した。統合沿岸兵站システムは、深水域の船舶と陸上を接続する浮動式の橋を作り、装備を戦闘作戦に迅速に移動させる(MacCarley & Coleman, 2009, p. 25)。しかし、統合沿岸兵站システムを保護するためには安全保障作戦が必要であり、上陸地点を確保しなければ、このシステムを設置することはできない。
陸軍には、戦域への到着から戦闘地域への到着までの間に既存のギャップが存在する。陸軍航空は、適切な訓練と統合協力により、このギャップを埋めることに貢献できる。

海上基地化は、航空機動コマンドからの米空軍機を収容できる深水港と飛行場を奪取する前に、統合作戦を促進するための重要な手法である。統合出版物3-02「水陸両用作戦」は、海上基地化を「統合作戦地域(JOA, joint operations area)内の陸上基地に依存することなく、海上から統合戦力の展開、集結、指揮、投射、再編成、持続支援、再投入を行うこと」と定義している(Joint Chiefs of Staff、2021a、p. IV-18)。具体的には、支援する陸軍航空資源の海上基地化により、統合軍司令官(JFC, joint force commander)および統合軍陸上構成部隊司令官(JFLCC, joint force land component commander)が作戦を拡大し、統合強襲進入における攻撃および兵站維持作戦を支援するために必要な回転翼資産を即座に提供できるようになる(陸軍省、2022年)。しかし、野戦教範(FM, Field Manual)3-0「作戦」に記載されているように、「戦域内回転翼機動…は、艦上着陸および洋上飛行作戦のために訓練され、装備された航空科隊員を必要とする」(陸軍省、2022年、p. 7-18)。この教義に根ざしたこの包括的原則は、米陸軍太平洋軍以外の陸軍航空および戦闘航空旅団全体には普及していない。実際、持続的な洋上および着艦資格プログラムを開発しているのは、第2戦闘航空旅団、第16戦闘航空旅団、第25戦闘航空旅団、および第160特殊作戦航空連隊に限られている(K. Hawley、個人的なコミュニケーション、2024年7月23日)。陸軍の装備と人員を収容できる船舶から作戦を行うことは、統合軍司令官にとって戦力を倍増する効果がある。この能力により、統合軍は、中国が南シナ海全域で実施する防御手段である接近阻止・領域拒否(A2/AD, anti-access and aerial denial)を克服できる。さらに、海上基地化は、陸上基地化に伴う兵站維持および戦力保護の要件を軽減する(陸軍省、2020年、p. 1-17)。

教義、政策、装備、訓練への適切な更新により、陸軍航空は、統合軍陸上構成部隊司令官が作戦地域全体に作戦を拡大できるという戦略的優位性をもたらすことができる。さらに、陸軍航空の核となる能力である作戦環境全体での監視、攻撃、移動、延伸により、陸上への着陸を促進し、統合軍をより効果的に支援できる。陸軍航空が陸上ベースの機動部隊としての作戦を主体とする時代は終わった。インド太平洋軍における優位性を維持するため、陸軍は適応を続け、海軍および海兵隊に隣接して作戦を実施することに習熟し、諸兵科連合チームとして沿岸域を支配しなければならない。
教訓
洋上作戦への習熟と、統合強襲進入作戦を実施できる熟練した部隊としての海軍および海兵隊との連携には、いくつかの微妙な違いがある。基本的な教義、すなわちFM 3-0は洋上作戦の重要性を反映するように更新されたが、他の教義はまだこの理解を欠いている。これらの教義は、必要な推進力が広まり、部隊がこれらの不慣れな作戦を日常的かつ安全に実施できるように更新されなければならない。さらに、国防総省の政策は、陸軍と海軍の間の相互運用性の重要性を反映し、成文化するために更新されなければならない。これにより、統合能力の強化を目的とした訓練義務が法的に生じることになる。これらの作戦を実施できる態勢を整えるためには、陸軍全体で装備を調達しなければならない。最後に、熟練した有能な戦闘力を確保するためには、挑戦的で現実的な訓練がより頻繁に行われなければならない。
関連する提言の詳細は以下のとおりである。
教義
陸軍の改訂されたFM 3-0には海上作戦に関する章があり、下位文書の更新を示唆している。陸軍航空は、この領域を適切にカバーするため、出版物の見直しを実施しなければならない。野戦教範3-04「陸軍航空」には、海上作戦に関する記述が2段落しかない(Department of the Army, 2025, pp. 23-24)。野戦教範3-04は、陸軍航空における海上作戦能力の維持が必要であることを強調する、より多くの海上作戦の内容を含むように拡張されなければならない。そこには、諸兵科連合チームの一員として必要となる、外洋と沿岸域での作戦の詳細が記載されるべきである。あるいは、28年前に編集済みの洋上作戦を扱うFMであるFM 1-564「艦上作戦」を再発行することで、海上作戦および洋上飛行に関連する訓練の進行と基準の詳細な分析が提供できると私は考えている(Department of Army, 1997)。
陸軍航空センター・オブ・エクセレンスの訓練・教義局(DOTD)は、海上作戦訓練支援パッケージで多くの成果物を公開している。しかし、それらは4年から10年前のものであり、現在のような係争中のA2/AD環境における海上作戦の実施に関する認識が不足している。更新された訓練支援パッケージと対応する標準作戦手順は、部隊が海上作戦の即応態勢にある航空科隊員をよりよく訓練するために、一貫した訓練の道筋を辿ることを可能にすると私は考えている。さらに、部隊の任務必須タスクリスト(METL)訓練および評価の概要を更新して海上作戦を重視することで、部隊は海上作戦能力を成文化する訓練パイプラインを採用する必要が生じるだろう。

政策
おそらく、海上作戦への参入における最も重大な障壁は、着艦資格および海上基地作戦を実施するための海軍艦艇の利用可能性である(K. Hawley、個人的なコミュニケーション、2024年7月23日)。着艦資格および艦上着陸に関する海軍と姉妹軍種間の合意覚書(MOA, Memorandum of Agreement)には、「海軍は、米陸軍/米空軍の着艦資格訓練要件を支援するために甲板時間を予定するものとする」と記されている(U.S. Navy, 2023, p. 1, attachment 7)。ただし、この原則には支援の頻度に関する指示が一切ない。私の経験では、着艦資格の機会は散発的に発生しており、専用のスケジュール外で、海軍にとっての機会の窓の中で実施されるのが一般的だった。着艦資格プログラムの実施に関する陸軍と海軍の関係を正式化し、専用の訓練期間を設けることで、適切な資格の継続性と現行要件を確保するための予測可能な訓練経路が生まれる。
この目的を達成するため、陸軍規則95-1「飛行規則」は、海上作戦の重要性の高まりを反映するように更新されなければならない。陸軍規則95-1は、洋上飛行について、必要なサバイバル装備について議論する1つの段落でのみ言及しているにすぎない(Department of the Army, 2018, p. 50)。すべての陸軍航空科隊員の間で共通の理解を得るために、飛行手順、海軍との連携、および拡張されたサバイバル・セクションなどのトピックを含めるべきである。
装備
沿岸域全体にわたって作戦を拡大するためには、海上作戦環境全体での燃料弾薬再補給点(FARPs, forward arming and refueling points)へのアクセスが限られた状況で艦上作戦を実施するため、機体燃料搭載量の増加が必要となる。具体的には、陸軍は、組織装備変更表(MTOE)に基づく航空機割り当ての50%以上の補助燃料タンクを必要とする。これらのシステムは、陸軍航空機の航続距離と飛行時間を延長し、FARPまたは給油艦の距離に応じて、より遠くまで飛行したり、より多くの離着陸を可能にしたりする上で極めて重要である。UH-60ブラックホーク用の耐衝撃性外部燃料システムと、AH-64アパッチおよびCH-47チヌークプラットフォーム用の内部自己密閉型燃料タンクの調達を増やすことは、統合軍司令官に柔軟性をもたらす。さらに、航空機が沿岸域での戦闘力の有効なプラットフォームとして機能するために十分な時間を維持できるようにする。
加えて、陸軍はすべての陸軍飛行場(AAF, Army Airfield)の近くに地上着艦パターン訓練(FDLP, field deck landing pattern)パッドを建設しなければならない。艦上での着艦資格訓練を実施する前に、最低5回の地上着艦パターン訓練の離着陸を実施しなければならない(U.S. Navy, 2023, pp. 2-3)。すべての戦闘航空旅団で地上着艦パターン・パッドを維持することは、内陸の戦闘航空旅団であっても、外洋や利用可能な艦艇なしで海上作戦訓練を促進し、すべてのパイロットの熟練度を確保することを可能にする。推奨されるのは、これらのパッドを部隊の訓練エリアのオープン・スペースに作成し、標準的なAAFの交通パターンとの衝突を避けることである。地上着艦パターン訓練は、悪天候が最適な飛行条件に影響を与える場合には、シミュレーターでも実施できる。着艦資格に関する合意覚書の基準を満たすように更新されたシミュレーターを部隊に装備させることで、この要件が促進され、部隊は年間を通じて着艦資格訓練を実施できるようになる。
海上基地化における重要な制限要因は、腐食の防止および制御に伴うメンテナンスコストの増加である。2017会計年度には、海軍はすべてのMH-60派生型の総メンテナンス費用として9億9,700万ドルを費やした(Herzberg et al., 2019, p. 2-3)。2016会計年度には、MH-60のメンテナンス予算の2億8,100万ドル、つまり28.2%が、海軍の腐食防止および制御活動に直接費やされた(Herzberg et al, 2019, p. A-3)。対照的に、陸軍航空は、同期間の総メンテナンス予算の19.1%しか腐食の防止および制御に費やしていない(Herzberg et al., 2019, p. A-3)。
海上環境で運用するためには、陸軍は自己の腐食制御実施能力を高め、腐食防止戦略を姉妹軍種の戦略と連携させる必要がある。提言には、厳しい海上環境で運用する場合、腐食制御検査の間隔を30日から15日に短縮することが含まれる。腐食に関連するコストが最も高い2つの作業対象は、機体とエンジンである(Herzberg et al., 2019, p. 2-5)。海軍が航空機に使用しているシーラントは、陸軍航空機の機体保護にも利用できる。また、様々なヘリコプターの技術マニュアルで規定されている定期的なエンジン・フラッシングを実施することで、エンジンの寿命を維持できる。陸軍航空が海上作戦の効率性を開発し続けるにつれて、これらの必須システムを腐食から保護するための新しい方法を研究し、提言すべきである。

訓練
海上作戦への大きなハードルは、モジュラー脱出訓練シミュレーター(METS, modular egress training simulator)、つまりダンカー訓練での初期資格取得と、浅水脱出訓練装置(SWET, shallow water egress trainer)の実施である。モジュラー脱出訓練シミュレーター訓練は、アラバマ州フォートラッカーでの初級回転翼(IERW, Initial Entry Rotary-Wing)訓練中に実施されるべきだと私は考えている。初級回転翼の訓練課目からダンカー訓練を削除したことで、戦闘航空旅団は訓練の遅延に対応する必要が生じている。ほとんどの戦闘航空旅団にはダンカー施設がないため、近隣の海軍または国際的なモジュラー脱出訓練シミュレーター施設に訓練を外部委託している。これにより、海上作戦を実施できる航空科隊員の数が減少するという問題が生じている。この問題を抑制するため、飛行学校入校中にモジュラー脱出訓練シミュレーターを実施することで、すべての航空科隊員が洋上サバイバル訓練とベースラインの海上作戦知識の基礎的な理解を持っていることを確保できる。さらに、彼らはどの部隊に到着しても、直ちに海上作戦飛行訓練に参加できるようになる。
部隊レベルに移行した後は、着艦資格プログラムをゼロから開始することは本質的に困難である。第25戦闘航空旅団が2014年に着艦資格プログラムを開始したとき、彼らは第160特殊作戦航空連隊から専門特技保有者を呼び寄せ、訓練担当者を訓練した(K. Hawley、個人的なコミュニケーション、2024年7月23日)。教官および標準化パイロットが訓練された後、彼らは機長集団に指導することができた。第16戦闘航空旅団では、2023年に第25戦闘航空旅団の専門特技保有者を招き、同じ要領を実施した。他の戦闘航空旅団、特に海から200マイル以内の部隊は、この同じモデルに従うことができる。訓練科目には、地上学術、地上着艦パターン訓練、シミュレーター着艦資格訓練、昼間着艦資格訓練、および暗視ゴーグル着艦資格訓練の反復が含まれる。訓練実施後は、その資格更新が問題になる。シングル・スポット着艦資格は6か月間有効であり、マルチ・スポット着艦資格は1年間有効である(U.S. Navy, 2023)。海軍との関係を成文化することで、資格更新のジレンマが軽減される。
最後に、階層レベルでの訓練に焦点を当てると、LSCO( Large-Scale Combat Operations, 大規模戦闘作戦)に習熟する唯一の方法は、統合軍全体でLSCO要員とリーダーに負荷をかけることである。かつて太平洋経路(Pacific Pathways)と呼ばれていたオペレーション・パスウェイズは、まさにそれを行う。具体的には、オペレーション・パスウェイズは「戦域を設定し、階層レベルで即応性を構築し、大規模な作戦の傘下で機能するためにすべての要員を結集させる」(Center for Army Lessons Learned, 2016, p. 41)。二国間軍事演習は、統合軍と外国パートナーとの間の作戦能力を構築するための優れたツールである(D. Carpenter、個人的なコミュニケーション、2024年7月19日)。しかし、その演習内容を改善して、統合相互運用性を強制する余地がある。まず、陸軍の装備は、海軍の戦略海上輸送コマンドと陸軍の船舶艦隊によって輸送されなければならない。紛争中の海上作戦環境で運用するためには、自身を保護できる艦艇によって装備が輸送される必要がある。さらに、海上ベースの統合強襲進入を実施するためには、陸軍の航空機を収容し、沿岸域に投射できる着艦可能な艦艇が必要となる。
海軍艦隊内で陸軍旗を掲げた船舶に装備を移動させるため、陸軍はパスウェイズ演習に、第2および第3構成部隊のさらに多くの部隊を組み込むべきである。陸軍の兵站維持能力の70%以上が第2および第3構成部隊に存在する。しかし、彼らは(第1構成部隊と比較して)訓練の機会が少なく、現在のオペレーション・パスウェイズの枠組みに関与していない場合が多い(MacCarley & Coleman, 2009, p. 25)。
最後に、陸軍は相互運用性を維持するためには、統合軍のさらなる統合を強調しなければならない。私は、洋上能力の不足のために、統合軍司令官が陸軍航空を十分に活用しなかったいくつかの太平洋経路が反復されるのを目撃したことがある。部隊レベルでの海上作戦習熟度の向上は、統合軍司令官に「陸軍航空を長距離の行程で活用し」、より効果的に統合作戦に組み込むための柔軟性を提供する(K. Hawley、個人的なコミュニケーション、2024年7月23日)。艦上態勢から陸軍航空をこれらの演習に組み込むことは、陸軍が統合し、沿岸域で戦闘力を拡大する能力を促進する。
結論
陸軍の大規模マルチドメイン戦闘作戦への移行は、沿岸地域での作戦への転換を示唆している。陸軍航空は、船舶から陸上へと戦闘力を拡大し、統合軍司令官が戦闘および兵站維持作戦を促進するための柔軟性を生み出す、陸軍最大の資産である。統合強襲進入およびその後の作戦の準備のために航空機と人員を海上基地化することは、容易なことではない。特定の教義、装備、政策、訓練を近代化することで、陸軍航空は戦闘力を沿岸域にまで投射する作戦上のギャップを埋めることができる。この戦略的優位性を活用するためには、着艦資格および海上飛行訓練を訓練し実施するという部隊への期待を成文化することが不可欠である。陸軍は、沿岸域を支配し、インド太平洋軍およびすべての沿岸地域で使用可能な資産を統合軍司令官に提供するため、洋上作戦の実施に慣熟しなければならない。
Above the Best!(さらなる高みを目指せ!)
著者略歴
CPT(Captain, 大尉)コリン・クーリーは、UH-60M機長および航空任務指揮官であり、航空大尉キャリアコースおよび航空騎兵指導者コースの卒業生でもある。現在はハワイのウィーラーAAFにある第25戦闘航空旅団に配属され、運用士官補佐として勤務している。
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出典:AVIATION DIGEST, Army Aviation Center of Excellence 2025年04月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:太字装飾は、訳者によるものです。
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