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陸軍航空の情報センター

行間(隠れたリスク)を読む

上級准尉2 ジェイコブ・モニカ
第2機甲旅団戦闘団第8騎兵連隊第6騎兵大隊
ジョージア州フォート・スチュワート

2021年初頭、私が新たな機長(PC:無人機操作員)下士官として着任したばかりの頃、コロラド州の飛行場において、グレイ・イーグル MQ-1CがATLS(automatic takeoff and landing system, 自動離着陸システム)による発進時に離陸できず、外柵を突き破って墜落する事故が発生しました。当該機は、総額730万ドル(約10億円)を超える損害を被り、クラスA事故(損害)と認定されました。表面的な主原因は明白(クリア)でした(「クリア(氷がない)」とかけた駄洒落ではありませんが)。それは、主翼への着氷(アイス・コンタミネーション)でした。しかし、そのような状態で航空機を滑走路へ向かわせてしまった潜在的な要因には、陸軍航空全体が抱えるより根深い課題がありました。すなわち、「慢心」の危険性と、手順に偏重したリスク管理に存在する環境要因を過小評価した場合の限界です。

その日の始まりは、冬季運航においてよくある、ありふれた朝でした。当該機は夜間、暖房の効いた格納庫内に保管され、0415頃にエプロン(ランプ)へけん引されました。格納庫内は華氏70度(摂氏21度)近くに保たれていましたが、外気温は華氏23度(摂氏マイナス5度)まで下がっていました。機体が暖かい場所から冷気の中へ移動したことで、翼の表面に結露が生じ、それが凍結したのです。技術図書や作業基準書には「飛行前に機体表面のすべての雪、霜、および氷を除去しなければならない」と明確に警告されていました。しかし、機付長(クルー・チーフ)による除氷作業(デアイシング)が行われないまま、当該機機は発進しました。

飛行前点検の過程において、故障表示(フォルト)、システムの警告、あるいは手順上の不備は一切ありませんでした。気象ブリーフィングでも、快晴と微風が予報されていました。操作員や整備員にとって、それは「飛行に支障なし(Go)」の任務に見えたのです。しかし不幸なことに、実際はそうではありませんでした。MQ-1CはATLSの制御下で滑走を開始しましたが、十分な揚力を発生しませんでした。離陸に必要な対気速度に達したにもかかわらず、機体は浮揚しませんでした。離陸中止(アボート)がコールされましたが、その時すでに、滑走可能な残距離はほとんどありませんでした。

機体は滑走路を逸脱(オーバーラン)し、土手に衝突した後、外柵へ激突しました。事故後の分析により、翼表面の着氷が正常な気流を阻害し、揚力の発生を妨げていたことが確認されました。その着氷は、早朝の暗闇の中では目視しにくいものでしたが、いつもと変わらない任務を全損事故に変えるには十分でした。

リスク管理の破綻

この事象は、航空安全にありがちな死角を浮き彫りにしています。それは、手順の遵守への過度な依存と、チェックリストさえ消化すればリスクを特定できるという思い込みです。その朝、整備点検、飛行前点検、気象ブリーフィング、システム診断など、すべてのチェック項目には「レ(完了)」が入っていました。しかし、それは除氷作業を省略するという人的判断や、急激な温度変化の重大性を見落とすことまではカバーしていません。リスク管理の本質は、完璧なチェックリストを作ることではありません。環境要因によって、書類上では想定されていない不確定要素(変数)が持ち込まれた時、それを認識することにあります。

慣れた環境に潜む「慢心」

慢心(コンプレイセンシー)もまた、事故の大きな要因でした。クルーは、同様の飛行前ルーチンをこれまでに何十回も問題なくこなしていました。航空機は空調管理された格納庫から出たばかりで、空は晴れ渡っていました。状況は一見して危険には見えなかったかもしれませんが、寒冷地での運用においては、往々にしてそうした状況こそが危険なのです。氷ができるのに、吹雪である必要はありません。暖かい機体の表面が、氷点下の空気にさらされるだけで十分なのです。

異常が「いつものこと」と感じられると、リスクは日常の中に姿を隠します。自信過剰を生むのは、まさにこのような些細な環境条件の組み合わせなのです。たとえ善意であっても、その危険性を疑うことなく生じた小さな見落としは、深刻な結果を招く可能性があります。

教訓事項

この事故は、我々に以下のような教訓を残しました。

寒冷地での運用には、格別の警戒が求められます。

急激な温度変化に対し、操作員や整備員は直ちに警戒態勢をとる(フラグを立てる)べきです。着氷は目に見えないことが多く、降水や降雪がなくても発生し得ます。航空機が暖房された環境から氷点下の環境へ移動する場合は常に、除氷作業を「例外」ではなく「基本(デフォルト)」とすべきです。

マニュアルの警告は、選択事項ではありません。

技術図書の定型的な警告は、形骸化し、ただの風景の一部になりがちです。この事故は、飛行前に機体表面からすべての霜と氷を除去するという明確な指針に従っていれば防げたものでした。これらは単なる注意書きではありません。過去の尊い犠牲と教訓から書き記された「血の教訓」なのです。

リスク管理は「対話」であり、「形式」ではありません。

危険見積(risk common operating picture, RCOP)は強力なツールですが、環境の変化やクルーの判断といった主観的なリスクについて活発に議論されて初めてその機能は発揮されます。状況が完全に把握できていない場合には、整備員であっても、操作員であっても、懸念を表明し、前提を疑い、発進を遅らせることができる環境が不可欠です。

重要な局面では「立ち止まる」文化を築くことです。

任務のテンポはクルーに迅速な行動を強いることがよくありますが、寒冷地での運用には異なる心構え(マインドセット)が求められます。各級指揮官は、特に環境的な危険を検知しにくい季節の変わり目には、慎重かつ確実なペースで任務を進めるよう指導すべきです。

結論

この事故は、すべての危険が大きく、目に見え、容易に測定できるわけではないことを再認識させてくれます。時としてわずか数度の温度差と薄い霜の層が脅威になります。そして、音もなく忍び寄り、目立たず、そして致命的な結果をもたらすのです。チェックリスト、手順書、ブリーフィングは不可欠ですが、人間の判断力や環境への意識(シチュエーション・アウェアネス)に取って代わるものではありません。航空の世界、特に無人機システムにおいて任務を完遂できるかどうかは、単にマニュアルに従うだけでなく、立ち止まり、再評価し、そして「行間」に何が欠けているのかを問いかける能力にかかっているのです。

                               

出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2026年02月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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