AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

行動の選択肢を保持すること

上級准尉4 クリス・ダベンポート
第228航空連隊第2大隊B中隊
ジョージア州ドビンズ空軍基地

2012年の後半、私は、4日間にわたって、UC-35でヨーロッパの各地に重要な要員を空輸する任務を行っていました。2日目の任務は、午前中にポーランドのバードゴスを出発し、ルーマニアのブカレストで給油してから、トルコのアンカラに向かう予定でした。

いつものように、私は、ホテルを出発する前に最新のMETER(定時飛行場実況気象通報式)と目的地のTAF(運航用飛行場予報気象通報式)を確認し、ウェザー・ブリーフィングの内容をあらかじめ予測していました。ブカレストのMETARは、視程4分の1マイル未満、シーリングが100フィート以下で着氷性の霧が発生していました。TAFは、その状態が、我々の予定到着時間よりもずっと遅い午後の後半まで解消されないことを示していました。ところが、アメリカ空軍の予報官から受領したDD 175-1(FLIGHT WEATHAER BRIEFING)には、それとは違った内容が記載されていました。現況については、METERと同じでしたが、その状態は今後1時間以内に大きく改善すると予報されていたのです。

ブリーフィング中に、アメリカ空軍の予報官に質問したところ、TAFには同意できない、もっと状況が良くなる、という回答でした。その回答を完全に信用できなかった私は、METARおよびTARで終日VFRが予報されているブルガリアのブルガスを代替飛行場とし、その気象情報の提供を依頼しました。(規則上、要求はされていなかったが)計画した代替飛行場に関する情報で武装した我々は、その日の最初の飛行を開始しました。

ブカレストの管制圏に入ると、管制官から、目的地の現況を把握しているかと聞かれました。ATIS(Automatic Terminal Information Service, 飛行場情報放送業務)がほとんど聞き取れなかったため、管制官に現況を読み上げてもらうと、シーリングが100フィート以下、着氷性の霧により視程200メートル以下でした。代替飛行場に目的地を変更する必要があると判断し、ブルガスの現況を聞くと、そこも同じ状況でした。

東ヨーロッパの地図を思い浮かべながら他の空港を探し、管制官にルーマニアのコンスタンツァとブルガリアのソフィアの気象情報の提供を依頼しました。どちらも、同じように状況が悪く、着氷性の霧が発生していました。頭の中の地図の範囲を広げて、トルコのイスタンブールの状況を聞くと、VFR状態であることが分かりました。イスタンブールのアタテュルク国際空港に目的地を変更して着陸し、燃料を補給して、空港で入国審査と税関を済ませた後、その日のうちに当初の目的地まで飛行することができました。

この経験から、多くの教訓が得られましたし、それを確認することができました。第一に、機長は、いかなること(この場合では気象予報)についても、質問する権利があるということです。予報官の言うことがあらかじめ自分自身で調べていた情報と合致しない場合は、躊躇せずに質問すべきです。また、規則上、代替飛行場の指定が要求されていない場合であっても、自分の直感を信じて、それの気象予報を入手しておくべきです。行動の選択肢が無くなるという状態には何も良いことがありません。できるだけ多くの選択肢を保持すべきなのです。自主裁量の余地を確保するということは、まだ他に行動の選択肢がある状態で地上に安全に着陸するということを意味するのです。

最後に、地理を知っておくことです。ヘリコプターのパイロットは、開かつ地であればどこにでも着陸することができますが、固定翼機のパイロットは、どうしても滑走路が必要です。気象予報上、要求されるかどうかにかかわらず、代替飛行場を把握しておくこと。自分の行動の選択肢の中に、そこへの着陸を含めておくことが重要なのです。

                               

出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2019年10月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    アメリカは、陸軍の機体でも、こんな任務を行うのですね。