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陸軍航空の情報センター

気象予報とサイコロ

氏名非公開

陸軍航空科職種に1日以上在籍した者であれば誰でも、「経験した者と、これから経験する者(Those who have and those who will)」という言葉を聞いたことがあるでしょう。私の経験を紹介します。

それは、私と搭乗員にとって、他に類を見ない一日でした。なぜでしょうか? 陸軍の機長クラブに入会したばかりの新人だった私は、1月のアフガニスタンのシンダンド派遣されていて、新米機長としての緊張感を払拭したいと思っていました。その任務は西部地域司令部を支援するため現地の搭載地域まで飛行する、ごく標準的な航空任務でした。その任務を副操縦士として5ヶ月間続けてきた私は、それにすっかり慣れ親しんでいました。しかし、今回は状況が違っていました。私は指示を出し、新しいCH-47Fと搭乗員、搭乗者の命に最終的な責任を負う、機長という立場だったからです。

0530に航空任務要請を確認すると、2科から脅威ブリーフィングと気象ブリーフィングを受けました。天候を含め、すべてが良好に思えました。しかし、アフガニスタンの山岳地帯を飛行した経験がある人なら誰でも知っているとおり、その時期の天候は全く予測不可能で、急激に変化することがありました。0840にはローターを回転させ、0859に管制塔に離陸許可を要求しました。

その任務の最初の区間は、わずか59マイル(約95キロメートル)北のヘラートに向かうもので、そこにある小さな山々は平均海面高度「わずか」6,000フィート(約1829メートル)の高さでした。気象予報が良かったと言ったのを覚えていますか?空軍の連中は持てる手段で頑張っていますが、気象というものは、科学というよりもサイコロを振るようなものです。もちろん彼らも、コンピューターの前に座っているだけでなく、外に出て自分たちの目で実際に確認するなど、努力してくれてはいました。

シンダンドの平均海面高度は3,850フィート(約1173メートル)で、12マイル(約22キロメートル)北にある最初の山脈の平均海面高度は5,000フィート(約1524メートル)でした。離陸許可を受けた私たちは、飛行を開始しました。天候は良好で、シーリングは報告通りでした。しかし、ヘラートに到着すると、そこから先の峠が雲に覆われているのが見えました。このため、そこから先には進めないと判断しました。

指揮所に通報し、残りの任務をキャンセルする許可を得た後、帰投先のシンダンドの気象事務所に連絡して現地の気象状況を確認しました。天候は良好だとの回答を得ました。ところが、シンダンドの北12マイル(約22キロメートル)にある最後の峠を飛行中に、それは起こりました。なんと、雪が降っていたのです!

機内はたちまちパニックに陥りました。そのとき、飛行訓練で学んだ非常に重要なことを思い出しました。「緊急事態には、パイロットの即座で本能的な行動が必要になる。最も重要な考慮事項は機体の制御である。これは、他のすべての手順に優先する。」

このような状況に遭遇したことのない人には、その言葉を本当に理解することができないでしょう。幸いなことに、副操縦士と私は地面が確認できており、優れたクルー・コーディネーションを発揮できていました。ところが、僚機からUHFとVHFが使用不能になったという連絡がありました。それは、もし私がGPSアプローチを行うことにした場合、機体間隔を維持するため、自機の無線交信に加えて僚機の分も行わなければならないということを意味しました。そんな状況での訓練を行ったことはありません。マーフィーの法則(訳者注:「訓練しなかったシナリオが、最も起こりやすい」)が完全に当てはまっていました!

私は、無線の問題を考慮に入れつつも、まだ地上を目視できていたことから、前進することを決心しました。その時点では、対地高度200フィート(約61メートル)、対地速度60ノット(約111キロメートル)で、視程は4分の1マイル(約63メートル)未満、前方作戦基地の北4マイル(約7キロメートル)の地点にいました。私は地形を熟知しており、多機能ディスプレイを地形回避モードにしていました。前の日にも同じ地域を飛行していたので、衝突の可能性がある丘陵やアンテナがないことを把握できていました。管制塔に連絡し、機体の位置を伝え、特別有視界飛行方式での進入許可を要求しました。

2マイル手前で降雪が弱くなり、整備施設が見え、ついに滑走路が見えました。その時、ある有名な格言を思い出しました。「地上にいて空を飛びたいと思うほうが、空を飛んでいて地上にいたいと思うよりもましだ」。これほど真実を言い表した言葉はないでしょう。IMC(計器気象状態)を経験したとまでは言えませんが、それにかなり近いものでした。振り返ってみれば、たとえ2番機の無線交信を代わって行わなければならない状況であっても、GPSアプローチを実行したのは適切でした。

優れたクルー・コーディネーションを発揮した搭乗員、特に任務遂行のために積極的にタスクを実行してくれた副操縦士に感謝します。自然がもたらす想定外の事態について、あらかじめ訓練しておくことはできませんが、ストレスの高い状況でこそ、訓練に立ち返ることで正しい判断を下せるのであり、そうあるべきなのです。

                               

出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2024年12月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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