Task Force や Expeditionary Force をどう訳すか
はじめに
米海兵隊のMarine Air-Ground Task Force(MAGTF)は、Marine Expeditionary Force(MEF)、Marine Expeditionary Brigade(MEB)およびMarine Expeditionary Unit(MEU)と呼ばれる部隊で構成されています。在日米海兵隊にも、3MEFとその隷下部隊である3MEBおよび31MEUが編成されています。ここで用いられているTaskとExpeditionaryの訳語について、自分の調べたことをまとめておきたいと思います。
在日海兵隊と防衛省の訳語の違い
在日米海兵隊のウェブサイトでは、Taskを「機動」、Expeditionaryを「遠征」と訳し、MAGTFに海兵空陸機動部隊、3MEFに第3海兵遠征軍、3MEBに第3海兵遠征旅団、そして31MEUに第31海兵遠征部隊という訳語を用いています。ウェブサイト以外のSNSなどでも一貫して「機動」および「遠征」の訳語を使用しているようです。第3海兵遠征軍日本語版ウェブ担当者にメールで確認したところ、米海兵隊では、ウェブサイトを開設する以前から、この訳語を使用しており、これを変更する予定はないそうです。
これに対し、防衛省においては、防衛白書(平成29年度第II部第4章第3節3 在日米軍再編の進捗状況)などにおいて、Taskを「任務」、Expeditionaryを「機動展開」と訳し、MAGTFに海兵空地任務部隊、3MEFに第3海兵機動展開部隊の訳語を用いています。ウェブサイト以外の報道資料などでも「任務」および「機動展開」の訳語を一貫して使用しており、こちらも、今さら変更するのは難しいのではないかと思います。なお、自分の経験では、1988年に実施されたYS-7でも「第3機動展開部隊」の訳語が用いられていたと記憶しています。
「遠征」か「機動展開」か
このような状況を踏まえ、Wikipedia 日本語版では、海兵空地任務部隊の記事のように、防衛省が用いている「任務」および「機動展開」の訳語に加えて、在日海兵隊が用いている「機動」および「遠征」の訳語を併記する場合が多いようです。
個人的には、Taskの「機動」という訳語の方はともかく、Expeditionaryの「遠征」という訳語は、軍事上の部隊名や行動よりも、スポーツの「海外遠征」や歴史上の「十字軍の遠征」などのイメージが強く、米海兵隊の部隊名としては相応しくないような気がしています。在日米海軍がホスト国である日本の省庁が使用している「任務」や「機動展開」の訳語に合わせてくれれば、MAGTFやMEFなどに関する日本語の表現を統一し、意思の疎通を確実にできると思うのですが、それが実現する可能性はかなり低いようです。
おわりに
Aviation Assetsにおいては、米海兵隊のTaskとExpeditionaryについて、いつの日か定訳が確立されることを願いつつ、防衛省が用いている「任務」と「機動展開」の訳語を使用してゆきたいと思います。
発行:Aviation Assets
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2件のコメント
1988年に機動展開の用語が使用されていたことは、事実です。陸上自衛隊と米海兵隊がカウンターパートになる議論が陸幕でされたのは、それから約3年さかのぼります。海兵隊のexpeditionaryをどのように訳すかも検討されました。当時は、作戦上の外国語の用語に関しては、陸幕調査部が所掌し、各情報担当班が起案関係部と密接に調整の上、調査部長が決裁するということでしたので、調査部内でexpeditionaryは「機動展開」と決定され、定訳となりました。”MEF、MEB、MEU”は、それぞれ「機動展開部隊、機動展開旅団、機動展開隊」となりました。
貴重な情報を頂き、ありがとうございました。何とか、海兵隊側が陸上自衛隊側に合わせてくれないものでしょうかね。