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陸軍航空の情報センター

テクニカルトーク:設計承認

軍属 スティーブン・ブラッドム

耐空性の基本理念に焦点を当てた技術コラムの連載第1回です。 国防総省および陸軍は、耐空性を「承認された運用制限に従い、安全に飛行を達成、維持、完了する航空システム形態が有する特性」と定義しています。この記事では、耐空性の基礎的要素の一つである設計承認を取り上げます。

耐空性に関するすべての要素の前提となる設計承認は耐空性プロセス(安全性確保のための措置)における最初の一歩であり、通常、最も時間と費用を要する部分です。端的に言えば、設計承認とは、航空機の設計が、適用されるすべての航空機用「建築基準法」要件を満たしていることを確認する作業です。

その作業は、設計審査(「設計図」に問題はないか?)を通じて行われます。具体的には、部品、アセンブリ、主要構成品、およびサブシステムが正しく作動することを試験で確認し、ソフトウェアと、それが関連するすべての系統の試験を行います。そして最終的には、地上では実施不可能なすべての項目について飛行試験を実施します。

耐空性要件は、AMACC(Army Military Airworthiness Certification Criteria, 陸軍安全性認定基準)で定められています。AMACCには、対処基準(何をすべきか?)、各基準が満たすべき規格(どれだけうまくやるべきか?)、および各基準の受入可能な適合性実証手段(どのように実証すべきか?)などが約850ページにわたって規定されています。

AMACCには、航空機構造、ドライブ・システム、エンジンおよびエンジン制御システム、油圧系統、燃料系統、操縦装置、機体飛行性能、航空力学、ヒューマン・システム・インタラクション、アビオニクスと航法、電力系統、電磁環境が及ぼす影響、システム安全、ソフトウェア耐空性、耐空性の維持、兵装とストア搭載、搭乗者安全、材料・プロセスなどの数多くの対処基準が含まれています。

すべてのAMACC要件が特定の航空機の設計に適用されるわけではなく、個別の要件はその設計に適用可能なものに「調整(テーラリング)」されますが、それでも新しい航空機の設計に適用される対処基準のリストは非常に広範におよびます。

航空機の改修を計画する場合(例:新型エンジンの搭載、電子光学センサの追加、新型ASE(aircraft survivability equipment, 自己防護装置)の追加など)には、その改修自体がすべての対処基準を満たす必要があるだけではありません。その改修が航空機の耐空性を損なわないことを確認するため、既に承認された航空機について、その改修が影響を及ぼし得るあらゆる要素(例えば、改修品が装着される構造体が、通常およびハード・ランディングの全荷重に耐え得るか、または電力系統が追加の電力負荷に対応するように適切に設計されているか)についても再評価されなければなりません。

適用される耐空性要件の一覧は、AQP(Airworthiness Qualification Plan, 耐空適格性計画)として、PMO(Program Manager’s Office, プログラム管理室)および開発企業に提示されます。開発企業は、それらの要件をいかに満たすかをAQS(Airworthiness Qualification Specification, 耐空適格性仕様書)で回答し、これが契約の一部となります。

開発企業がそれぞれの基準に対応するためには、適切な証左をPMOを通じて航空及びミサイル・センターのシステム即応性部局に提出します。システム即応性部局がその情報が要件を満たしていると判断した場合、その基準は完了とマークされます。要件を完全に満たしていない場合には、PMOは、開発企業にその基準へのさらなる対応を促したり、あるいは結果として生じるリスクを評価したりして投資継続の妥当性を判断します。

すべての適用可能な対処基準が正常に満たされるか、リスクが特定され適切なレベルで受け入れられた場合、その設計は正式に承認されます。陸軍における設計承認は、現在、装備化AWR(Airworthiness Release, 安全性改善通報)という形をとります。民間航空における承認は、航空機に対するTC(Type Certificate, 型式証明)、あるいは航空機への改修適用に対するSTC(Supplemental Type Certificate, 追加型式証明)という形をとります。

設計承認にはもう一つの側面があります。それは、適用されるすべての取扱説明書、整備指示書、すべての定期点検および特別点検、その他、航空機を耐空性のある状態に保ち、運航・維持するために必要な情報を発行することです。これらの指示一式はICA(Instructions for Continuing Airworthiness, 継続耐空性指示)と呼ばれており、近いうちに別の記事の主題として取り上げる予定です。

スティーブン・ブラッドム氏は、アラバマ州レッドストーン工廠に所在する米陸軍戦闘能力開発コマンド航空及びミサイル・センターのシステム即応性部局で勤務する耐空性副エンジニアです。

                               

出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2024年05月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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