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陸軍航空の情報センター

標的にされ、さらされる――なぜ指揮所にパラダイム・シフトが求められるのか

1等軍曹 サミュエル・K・カロキ

はじめに

ドイツ・ホーヘンフェルスの統合多国籍即応センター(Joint Multinational Readiness Center, JMRC)において指揮所を警戒する米陸軍兵士。写真:米陸軍上級軍曹デビッド・ルイス撮影。

現代の陸軍航空の指揮所(Command Post, CP)の生存性を確保するためには、対反乱(Counterinsurgency, COIN)作戦に根ざした旧来の慣行から脱却し、機動的・分散的・低シグネチャな形態へと転換することが求められています。本稿はロシア・ウクライナ戦争の教訓を踏まえ、機動性、指揮所設計のモジュール化、指揮所の分散、そして電波管制(Emissions Control, EMCON)の必要性を強調するものです。防護という戦闘機能は、指揮所、航空アセット、および各種構造物の生存性において最優先事項となります。航空が脅威への対処、偵察、兵站、および兵站維持において果たす役割を踏まえると、任務遂行能力をいかに強化・保護するかについて真剣に議論することが不可欠です。本稿はまた、現在および将来の脅威状況を反映した教義の妥当性、任務指揮、そして対等もしくはほぼ対等な敵に対する抗堪性を高めるための分権的作戦の重要性を強調します。

指揮所の生存性の近代化(限界)

ある若い指揮官が経験豊富な先任下士官(1SG)に意気揚々と告げます。「先任、私たちは機動整備車両(Shop Equipment Contact Maintenance)をデルタ中隊の指揮所に改造するつもりです……」先任下士官はしばらく考えてから、淡々と切り返します。「隊長、少なくともAフレーム・テントを一張り設営すべきだと思います。」

これは、異なる可能性を探求せずに慣れ親しんだ解決策に固執するバイアス――アインシュテルング効果(Einstellung effect)の典型例です(The Decision Lab, n.d.)。新たな問題に対する解決策を経験への硬直した依存によって形成しようとするとき、そこに限界が生まれます。このことは、急速に変化する脅威状況および対等もしくはほぼ対等な敵の能力に対応する新たな発想を採用する妨げとなり得ます。部隊の兵站上の負担増加をもたらす大規模な指揮所を設営する「タージ・マハル」方式という対反乱の発想から脱却することへの抵抗が見受けられます。

この見解は、ドイツ・ホーヘンフェルス演習場のJMRCにおいて戦闘訓練センター(Combat Training Center, CTC)でローテーション訓練を実施した複数の訓練部隊の観察に基づくものです。JMRCにおけるCTCローテーション訓練中の部隊の訓練・作戦実施の方法には、対反乱の痕跡が明らかに見受けられます。

CTCの評価・指導・訓練担当官(Observer, Coach/Trainer, OC/T)は、部隊が現在および将来の脅威に対応した教義に基づく手法を採用するように指導しなければなりません。OC/Tが訓練中に部隊を観察した結果が、その部隊の能力や習熟度を評価するための判断材料となります。新規性があり、かつ教義に基づいた技術・手順を実施できるよう視野を拡大させるためには、徹底した指導が必要です。その責任を果たすためには、OC/Tが指導内容の根拠となる教義を熟知していることが求められます。

得られた教訓

戦術・作戦手順を高強度紛争への即応に適合させるには、各梯隊における訓練と実施が必要です。大規模戦闘作戦(Large-Scale Combat Operations, LSCO)の訓練に対反乱に最適化された戦術を適用する部隊は、戦略的リスクを負うことになります。こうした戦術は、最近の紛争の状況に照らすと時代遅れです。ロシア・ウクライナ戦争の戦術と課題から得られた教訓は、米陸軍の戦術作戦と安全保障態勢に変革を促しています。指揮所の生存性はこれらの教訓における共通のテーマであり、指揮所が指揮統制(Command and Control, C2)ノードであるがゆえに極めて重要です。

機動性

航空指揮所の生存性は、機動力、高度な偽装、そして迅速な展開能力に決定的に依存しています。指揮所は、部隊のシグネチャを最小化し、迅速に撤収して瞬時に移動できるよう、小規模でなければなりません。電磁スペクトル・シグネチャ探知、熱センサー、無人航空機システム(Unmanned Aircraft System, UAS)の集中運用といった探知能力の普及により、機動性と迅速な位置変換が不可欠となっています。

JMRCで訓練中の部隊は、戦術車両の荷台に指揮所を設置し、密林地帯での隠蔽を図っています。その車両には、M1079軽中型戦術車両(Light Medium Tactical Vehicle, LMTV)バンおよびM1087 MTV拡張バンなどのLMTV型車両が含まれます。これにより視覚的な探知は低減されますが、密な植生のために安定した通信信号の確立が困難になるという問題も生じます。

指揮所設計のモジュール化

陸軍は、指揮所近代化(CP Modernization, CPMod)と呼ばれる指揮所の機動性強化策に取り組んでいます。CPModの核心は、機動性、生存性、および適応性にあります。焦点は、部隊が任務と地形に応じてカスタマイズできるモジュール設計にあります。

CPModによって、部隊が必要に応じて指揮所の構成を自由に変えられるようになり、それによって航空部隊が必要とする整備・兵站支援をパッケージ化して提供できるようになります。このモジュール式パッケージには、統合型の秘匿通信能力を備えた機動整備シェルターと、回転翼機の行動半径を延伸するための部品や燃料などが含まれるべきです。機動モジュール式パッケージを航空機とともに強化された格納施設内に集中配置することで、整備の継続性と生存性が高まり、陸軍航空がこれまで慣行としてきた露天での航空機駐機という問題に対処することができます。こうした強化型整備モジュールには、前方整備地帯として活用できる転用工業用建物、トンネル、または地下格納庫が利用できます。

JMRCでの訓練中に戦術車両の荷台に指揮所を設置する部隊。米陸軍写真:著者提供。

指揮所の分散

「将来の指揮所は、より小型で機動的であり、分散モードでの運用能力、できれば移動中の運用能力も備えたものでなければならない。また将来の指揮所は、高度なシグネチャ修正、電波管制、および最先端のサイバーセキュリティを採用しなければならない」(グール、2023年)。

陸軍技術刊行物(Army Techniques Publication)6-0.5『指揮所の編成と運用(Command Post Organization and Operations)』によれば、「生存性はしばしば有効性の代償として得られる」とされています(Department of the Army, 2017, p. 17)。このため、戦闘力の保持に十分配慮しなければなりません。任務指揮はこれまで、作戦活動の同期を可能にするために集中配置に依存してきました。意図的な訓練と実行を伴わない場合、分散はその同期を乱し、結果として指揮統制を劣化させ、戦闘力を欠いた指揮所の生存性だけが残るという結果をもたらし得ます。

ウクライナの指揮所は、多くの場合、地理的な分散、自律性、および冗長性によって特徴づけられます。指揮官は、隷下の指揮官が懲罰を恐れることなく、規律ある独断専行を発揮し、指揮官の指針の範囲内で決断を下せるよう権限を与えなければなりません。陸軍教義刊行物(Army Doctrine Publication)6-0『任務指揮(Mission Command)』は、任務指揮にあたる指揮官に任務命令を発出することを求めています。任務命令とは、「達成すべき結果を強調する指令であり、その達成方法を示すものではない」とされています(Department of the Army, 2019, p. Glossary-3)。

陸軍航空は、主要指揮所から地理的に分散した、機動的・分権的・自律的に運用される分散整備ノードによって、作戦上の抗堪性を高めることができます。整備ノードは、兵站と整備計画を運用に統合する必要があります。自律的に運用されることから、補給所要を連絡する手段が必要となります。この自律性は、大規模戦闘作戦における兵站の俊敏性と、敵の妨害によりセンサーが飽和した環境における航空機の即応性を高めます。

電波管制(EMCON)

「指揮統制(C2)ノードは、敵の教義が標的とする高価値目標(High-Value-Target, HVT)の典型例である……機動型シグナル・インテリジェンス(信号情報)収集器が指揮ノードを位置標定し、UASが目標位置を確認し、各梯隊の砲兵が味方の指揮官が反応する前に集中射撃を実施する」(ドーラン、2025年)。

ドイツ・ホーヘンフェルス演習場で実施された演習「セイバー・ジャンクション25」において、想定の撃墜機回収チーム(Downed Aircraft Recovery Team, DART)訓練でスリング懸吊の準備をする米陸軍兵士。米陸軍写真:少尉コートニー・ロリック撮影。

ロシア・ウクライナ戦争の教訓は、通信機器および発電機が発する大きな熱的・音響的・電磁的シグネチャが作戦保全を脅かすことを明らかにしています。部隊は、電波管制の標準作業手順(Standard Operating Procedures, SOP)の下で通信が劣化した状況に対応できるように計画・訓練しなければなりません。JMRCのファルコン・チームによる電波管制指導は、通信が劣化した際に備えてデジタルとアナログを併用することによる冗長性を重視しています。ある北大西洋条約機構(NATO)の航空部隊が、JMRC訓練中に電波管制技術の運用に成功しました。同部隊は、指揮所間にアナログ電話線を敷設して通信を確保するとともに、発電機の排気ホースを地中に埋設し、使用時間を制限することで熱的シグネチャを低減しました。

通信システム、発電機、および固定式の生活支援器材の充実は、技術的に劣勢な敵に対する対反乱作戦においては重要な役割を果たしていました。中国のようにマルチドメイン作戦に対応できる対等もしくはほぼ対等な敵は、電波発信に基づく精密目標指定を可能にする探知・妨害能力を有しています。これを制御する技術としては、発電機の地中埋設または土塁による遮蔽、騒音抑制の活用、偽装網の使用、および稼働時間の制限が挙げられます。上記のNATO航空部隊はまた、個人用電子機器の使用を制限し、特に中欧以外のSIM(加入者識別モジュール)カードを搭載した携帯電話の使用を禁止しました。現地の経済圏と一体化していない携帯電話には、機動型シグナル・インテリジェンス収集器に探知されやすいという脆弱性があります。JMRCのローテーション訓練部隊は、部隊のシグネチャを最小化するため「携帯電話不使用・制限方針」を採用するようになっています。

結論

指揮所の生存性は、技術的な課題であるだけでなく、文化的な課題でもあります。指揮官は旧来の思考様式に挑戦し、規律ある独断専行を奨励し、劣化した条件下での運用訓練を実施しなければなりません。直面する脅威の分析結果を、複数のドメインにおける攻撃と防御の具体的な行動に反映させなければなりません。戦略と戦術は急速に進化しており、対等もしくはほぼ対等なマルチドメインの敵による猛攻から生き残るためには、航空部隊もそれに従わなければなりません。軍事態勢の目標は、生存性を確保しつつ、戦闘能力を最大限に発揮することです。将来技術への投資を含む米陸軍の作戦・編成における最近の変革は、従来の手法がパラダイム・シフトを求めているという事実を示しているのです。

著者略歴

1等軍曹サミュエル・カロキは、米陸軍部隊コマンド、米陸軍中央コマンド、陸軍変革・訓練コマンド(旧訓練・教義コマンド)、およびNATO同盟軍において15年以上の経験を有し、航空の卓越性を形成してきた陸軍航空下士官です。現在はJMRCのファルコン・チームでOC/Tを務めており、撃墜機回収、戦闘損傷評価・修理(Battle Damage Assessment and Repair, BDAR)、および生存性を含む任務上重要な行動について航空部隊を評価しています。

参考文献

Department of the Army. (2017). Command post organization and operations (Army Techniques Publication 6-0.5). https://armypubs.army.mil/epubs/DR_pubs/DR_a/pdf/web/ATP%206-0_5%20(final).pdf

Department of the Army. (2019). Mission command (Army Doctrine Publication 6-0). https://armypubs.army.mil/epubs/DR_pubs/DR_a/ARN34403-ADP_6-0-000-WEB-3.pdf

Dolan, P. (2025, July). Like moths to a false flame: Lethality and protection through deception operations. U.S. Army. https://www.army.mil/article/286861/like_moths_to_a_false_flame_lethality_and_protection_through_deception_operations

Goure, D. (2023, September 5). Lessons from Ukraine: Command posts must be more agile. 1945. https://www.19fortyfive.com/2023/09/lessons-from-ukraine-command-posts-must-be-more-agile/

The Decision Lab. (n.d.). Why do our past experiences prevent us from reaching the best possible outcome? https://thedecisionlab.com/biases/einstellung-effect

訳者コメント:本稿は、ドイツ・ホーヘンフェルスのJMRCでOC/Tを務める現役の陸軍航空下士官が執筆したものです。対反乱作戦で定着した大型・静止型の指揮所設営様式が、ロシア・ウクライナ戦争で明らかになった脅威環境に対応できないことを、実際のCTCローテーション訓練の観察に基づいて論じています。特にEMCONの実践例として紹介されているNATO部隊の取り組み(アナログ電話線の敷設、発電機排気ホースの地中埋設、SIMカード管理)は、陸上自衛隊の野外指揮所運営においても参考となる具体的な対策です。また、指揮所の分散が指揮統制の同期を損なうリスクについて、任務指揮・規律ある独断専行との関係で整理している点は、指揮所設計と任務指揮の両立という観点から実務上の示唆に富む内容です。
                               

出典:Targeted and Exposed: Why Command Post Survivability Demands a Paradigm Shift, AVIATION DIGEST, Army Aviation Center of Excellence 2026年03月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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