AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

至近距離、間一髪

上級准尉2 ジョシュア・シャープ
第16戦闘航空旅団 第2-158強襲ヘリコプター大隊
ワシントン州ジョイント・ベース・ルイス・マコード

今回の任務は、搭乗員の技量維持を図るため、H-60ブラック・ホークによる狭隘地への進入を複数回実施する、ごく普通の訓練として計画されていました。前方の操縦士2名、後方の機付長2名の搭乗員たちは、いずれも経験豊富でしたが、その習熟度にはばらつきがありました。雲一つない晴天、視界良好、風も穏やかという理想的な天候でした。あらゆる意味で、訓練には絶好の一日でした。

選定された訓練場所は、人里離れたところにある、樹木に囲まれた谷間にある着陸地点でした。資料上は問題ないように見え、着陸予定地点自体も障害物がないように見えましたが、そこへの進入・離脱経路の周囲には濃密な植生が広がっていました。搭乗員ブリーフィングでは、進入時の出力管理、降下率、障害物間隔の確保が重点的に説明されました。しかし、ホバリングに入った後の機体後方のテール・ローターの間隔確保については、重要な事項であるにも関わらず、十分な説明が行われませんでした。

事故の経過

最初の数回の進入は順調に行われました。各操縦士が交代で操縦を担当し、ほぼ完璧な着陸を重ねていきました。メイン・ローターは、安全と思われる間隔を保って樹木をかわしており、着陸を重ねるたびに、その降着地域(LZ)に対する搭乗員たちの自信は高まっていきました。しかし、4回目の進入で状況が一変しました。操縦を担当していた操縦士は、これまでよりやや異なる進入角度を取り、降着地域の前方寄りではなく中央に正確に機体を降ろそうとしました。

機体が降下する間、操縦担当の操縦士は機外(機首のすぐ外側)に注意を向け、もう一方の操縦士は降下率とトルクを監視していました。機付整備員たちは機体直下の地面に注意を向け、胴体下部や降着装置を損傷させるような障害物がないかを確認していました。そして、それは起きました。

機体がフレアをかけて沈み込み始めると、テール・ローターが後方の樹木の方へと流れていきました。薄れゆく夕方の光の中、背景に溶け込んだその危険を直接見ていた者は、誰もいませんでした。突如として、かすかだが紛れもない振動がテール・ブームを伝って走りました。操縦士はとっさに機体を安定させて着陸を完了させ、搭乗員たちは互いに不安げな視線を交わしました。地上での点検により、彼らの懸念は現実のものだと確認されました。テール・ローターが小さな木に接触していたのです。幸い、損傷は小さな擦り傷や欠けにとどまりましたが、あと数インチずれていたり、より太い枝であったりしたならば、テール・ローターが破壊され、搭乗員が機体を制御する能力が失われた可能性がありました。

事故の要因

この事故には、いくつかの相互に関連する要因が寄与していました。搭乗員の注意は機首とメイン・ローターの間隔確保にほぼ全て集中しており、テール・ローターは監視されないままでした。搭乗員は出力、降下率、およびメイン・ローターの間隔確保については入念にブリーフィングを行っていましたが、テール・ローターの監視については明確な担当を割り当てていませんでした。さらに視覚的な錯覚が事態を複雑にしました。機体後方の植生が前方の密集した樹木よりまばらだったため、間隔に十分な余裕があるという誤った印象を与えていたのです。さらに、それまでの成功の積み重ねによる慢心も影響しました。搭乗員の警戒心は、それまで3回の着陸を成功させたことで、4回目の進入時には低下していました。

同様に重要だったのが、人的要因です。搭乗員は自信を持ち、十分に休養も取れており、良好な条件下で任務にあたっていましたが、その自信そのものが危険要因となりました。訓練環境はしばしば「多少のミスは許される」と感じさせます。また、悪天候や疲労といったストレス要因がないことが、リスクへの警戒意識を低下させることがあります。機付長たちは後に、テール・ローターよりも胴体直下の地上の危険物に注意を向けており、テール・ローターについては操縦士が把握しているものと思い込んでいたことを認めています。一方、操縦士たちは、機付長たちがテール・ローターを視認できる位置におり、それを監視しているものと思い込んでいました。最終的に、この相互の思い込みが重大な死角を生み出し、あわや大惨事につながるところでした。

教訓

今回の事案は、同様の事故を防ぐため、テール・ローターの間隔確保について具体的にブリーフィングを行い、少なくとも1名の搭乗員を明確な担当に割り当て、その搭乗員が確実な目視確認を行う必要性を浮き彫りにしています。「レフト・クリア、ライト・クリア、テール・クリア」といった通り一遍の通報だけでは不十分です。連携のためには、危険物を見たはずだという思い込みではなく、積極的な意思疎通と明確な確認が求められます。さらに、搭乗員は降着地域選定の際、機体そのものだけでなくローター・システム全体の占有範囲を評価し、位置変更・ホバリング・離脱の各局面で間隔が確保されていることを確認しなければなりません。最後に、それまでに何回着陸に成功していたとしても、進入のたびに独立した事案として扱い、毎回改めて危険性を評価し直す必要があります。

総括

テール・ローターの接触事故は、陸軍航空において最も危険な事故の一つです。限定的ながら飛行制御が可能な場合もあるメイン・ローターの接触とは異なり、テール・ローターの接触は多くの場合、即座かつ回復不能な方向コントロールの喪失につながります。今回の事案では、ローター・システムが傷つき、搭乗員の自信が打ち砕かれただけで済みました。それは幸運なことでした。しかし、幸運はリスク低減策にはなり得ません。真の防御策は、規律ある意思疎通、明確な役割分担、そして「簡単」と感じる時にこそ慢心を戒めようとする意識にあります。次に狭隘地へ進入する際は、自らに問いかけてください。「テールのクリアを誰が確認しているのか」と。その答えが即座かつ確実なものでなければ、間一髪では済まない事態を自ら招くことになります。

訳者コメント:本稿は、4回連続の進入訓練中、3回の着陸成功が生んだ慢心と、「相手が見ているはず」という搭乗員間の思い込みが重なり、H-60ブラック・ホークのテール・ローターが樹木に接触した事例です。機体後方の植生が前方より薄く見えたことも、間隔に余裕があるという誤認を招きました。狭隘地進入は陸自でも日常的な訓練であり、役割分担の明確化と、着陸のたびに危険性を評価し直す姿勢が教訓として活きます。
                               

出典:Close Quarters, Close Call, Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2026年07月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

アクセス回数:55

コメント投稿フォーム

  入力したコメントを修正・削除したい場合やメールアドレスを通知したい場合は、<お問い合わせ>フォームからご連絡ください。