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陸軍航空の情報センター

陸軍、自律型ブラック・ホークを受領

マイケル・L・オスモン
デビッド(デーブ)・R・アーターバーン
カール・R・オット

カリフォルニア州フォート・アーウィンで実施されたプロジェクト・コンバージェンスに参加する自律型UH-60ブラック・ホーク(米陸軍写真:ザイオン・トーマス特技兵)

はじめに

2026年3月19日、シコルスキー社は、自律飛行能力強化の改修を完了した米陸軍H-60Mxブラック・ホークを陸軍に納入しました(航空能力プログラム・エグゼクティブ(Capability Program Executive Aviation), 2026年)。陸軍はこの有人無人両用機(Optionally Piloted Vehicle, OPV)の研究機を用いて、国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency, DARPA)の「コックピット内搭乗員業務自動化システム(Aircrew Labor In-cockpit Automation System, ALIAS)」プログラムの下で開発・実証されたシコルスキー社のMATRIX――特定機種に依存しない自律ミッション・マネージャー(Autonomy Mission Manager, AMM)およびその関連アーキテクチャ――の開発、統合、試験、運用実験および評価を陸軍自身の手で実施します。このH-60Mx OPV機の飛行試験は、多用途ヘリコプター・プロジェクト・オフィス(Utility Helicopter Project Office, UHPO)が「戦略的自律飛行実現システム(Strategic Autonomy Flight Enabler, SAFE)」プログラムで進めるMATRIXフライバイワイヤ(fly-by-wire, FBW)システムの量産仕様化・認定の取り組みと並行して実施され、陸軍の全回転翼機にわたる自律飛行の挙動と能力に関する理解を深め、その活用の可能性を拡大させるものです。

陸軍とシコルスキー社の合同飛行試験チームは、この世界に1機しかないH-60Mxについて、改修後の受領検査手順と初期飛行試験を完了しました。その後、陸軍のパイロットがコネチカット州ブリッジポートのシコルスキー社施設からバージニア州フォート・ユースティスまで本機を空輸しました。今後は、航空及びミサイル・センター(Aviation and Missile Center, AvMC技術開発部局の航空技術・システム統合実証部(Technology Development Directorate, Aviation Technology, Systems Integration & Demonstration, TDD-A/SID)に所属する実験機テスト・パイロットと飛行試験技術者が、搭載した各種センサーとソフトウェア機能(動的経路計画など)を用いてMATRIX AMMの任務機能に関する一連の官側の飛行試験および実証を実施し、SAFEプログラムによる認定が完了する前に、その後の開発に反映すべき知見を得ます。

多用途ヘリコプター・プロジェクト・オフィスは、マルチドメイン環境における戦闘員の任務遂行能力を高めるH-60近代化の取り組みの一環として本事業を主導しており、特定機種に依存しない自律化の要素技術を費用対効果を確保しつつ成熟させ、現用および将来の機体へ全軍規模で適用することを支援しています。

背景

DARPAのALIASプロジェクトは、既存のさまざまな有人航空機を乗員を削減または無人化(無人完全自動化)した状態で運用可能にする、構成を変更可能な自動化アーキテクチャおよびツール群を設計・開発・実証するため、2014年初めに開始されました(S. Green, personal communication, 2026年5月8日)。ロッキード・マーティン社傘下のシコルスキー・エアクラフト社はALIASプログラムの主契約企業となり、同プログラムで実証されたS-70 OPVにおいて、自社のMATRIXフル・オーソリティFBW技術とAMMを基盤アーキテクチャとして採用しました。この能力の鍵となる要素の一つが、MATRIX AMMアーキテクチャ上でサード・パーティ製ソフトウェアの使用を可能にするソフトウェア開発キット(Software Development Kit, SDK)です。

ALIASプログラムは、複数の任務セットにわたって軍事的有用性を示し、10年間で16種類の固定翼・回転翼プラットフォーム(10機種は実飛行、6機種はシミュレーション)にMATRIX AMMを統合・実証することに成功して、2024年に技術移行の段階に入りました(現在の対象は21を超えるプラットフォームに拡大しており、MATRIXの自律アルゴリズムはDARPAのEVADE〔初期VTOL機実証(Early VTOL Aircraft Demonstration)〕プログラムでも使用されています)(S. Green, personal communication, 2026年5月8日)。その潜在能力に関する多用途ヘリコプター・プロジェクト・オフィスの評価を踏まえ、航空能力プログラム・エグゼクティブ(Capability Program Executive Aviation。旧称は航空プログラム・エグゼクティブ・オフィス)は2024年にDARPAと技術移行協定を締結し、ALIASのデータ権利を共有して、陸軍によるMATRIX AMMの陸軍用途に向けた開発・評価の推進を可能にしました。これには、将来型垂直離着陸機(Future Vertical Lift)の各機体および陸軍航空の装備体系に残る既存機全体への統合・配備の可能性を見据えた、移行された技術の軍用認定も含まれます。

これまでの陸軍の取り組み

多用途ヘリコプター・プロジェクト・オフィスは、2019年から、バージニア州フォート・ユースティスにおいて陸軍のH-60MxにMATRIX FBWキットのみ(自律化機能なし)を搭載する経費を負担しました。最初の90飛行時間の試験プログラム(2023年完了)では、視覚的な手がかりが減少した環境(すなわち模擬的な悪視程環境)において、FBWの飛行制御則が現用配備機を上回る安定性と機動性を確実かつ正確に達成できることが確認されました。これは、任務に即した環境でFBWシステムを実証するとともに、計画整備・臨時整備の削減に関する重要な情報をもたらしました。この削減は維持経費を引き下げ、即応性を高めるはずであり、将来のフリート近代化への足がかりとなりました。H-60Mx FBW機は2025年まで試験と実証を継続し、総飛行時間は140時間を超えています¹。

新たな改修

MATRIX FBWの成功を受け、多用途ヘリコプター・プロジェクト・オフィスは、MATRIX AMMとALIAS SDKで構成される完全なALIAS OPVキットをH-60Mxに搭載する経費を負担し、有人無人両用の実運用形態で全軍規模の自律化キットが直面する課題に対処し得るソフトウェアおよびハードウェアのソリューションをさらに評価することとしました。

初の自律飛行対応ブラック・ホークの引き渡しにより、米陸軍は航空の未来へ大きく飛躍する(写真提供:ロッキード・マーティン社傘下のシコルスキー社)

シコルスキー・イノベーションズ部門は、TDD-Aと協力し、DARPAの事務的支援を受けて、コネチカット州ブリッジポートの同社施設でALIAS OPVキットのシステム統合・搭載作業を実施しました。この作業には、シコルスキー社の技術図面の完成、システム構成品・組立品の製作、正式なソフトウェア試験、耐空性立証文書の作成のほか、改修期間中に実施する機体整備の計画立案が含まれました。

2026年には約150飛行時間の試験と実証が計画されています。これには、機外からの操縦を可能にする陸軍地上管制装置(ground control station)の機能の成熟化、センサー誘導による自律飛行を可能にする各種知覚センサーを備えた任務システム(ローンチド・エフェクト用の機外装備品を含む)の統合、飛行エンベロープの拡大、見通し外データリンク、および兵士が参加する試験場外での実験・実証が含まれます。

認定に向けたSAFEの道筋

ALIAS OPVキットは、さまざまなプラットフォームおよびユーザーのコミュニティが既存の機体へ容易に適用できる自律化の要素技術を早期に導入するための、重要な技術経路となります。これにより、性能の向上と訓練の削減が図られ、機上の簡素化されたデジタル・コックピットを介して、あるいはタブレット端末を用いる機外の操作員/パイロットによって、機体を操縦できるようになります。

ALIAS OPVキットを搭載したH-60Mxによるリスク低減の取り組みは、UH-60Mに有人無人両用の自律飛行能力を備えるために必要な開発・調達の期間を短縮します。SAFEの設計は、UH-60M向けに完全な認定を受けるMATRIX FBWキットの量産版であり、OPVキットが成熟した際にこれを迅速に搭載するための基盤となるデジタル・バックボーンとインターフェースを提供します。多用途ヘリコプター・プロジェクト・オフィスは、航空及びミサイル・センターのシステム即応部局の支援を受け、認定に至る道筋を具体化するため、この早い段階から耐空性要件の収集を進めています。

パイロットが操縦する状態でもしない状態でも飛行できるように大規模な改修を施された、画期的なH-60Mxブラック・ホーク。米陸軍が正式に受領した(写真提供:米陸軍)

シコルスキー社と進めるSAFE形態の設計・認定の取り組みは、新たに登場しつつある能力を既存のブラック・ホークに統合する多用途ヘリコプター・プロジェクト・オフィスの近代化努力の一環です。この協働作業は、堅牢で認定された自律型OPV能力の達成に残された課題、すなわち全機体システムの完全デジタル制御、複雑な空域での運用、それを支えるセキュアなネットワーク、そして人的要因への対応に取り組むものであり、これらはSAFEプログラムの主要な要素です。

ALIAS自律化技術のもう一つの重要な利害関係者(かつ協力パートナー)はテキサス州であり、同州は「テキサスA&M大学システムのブッシュ戦闘開発コンプレックスを通じた複数年にわたる自律化試験基盤の取り組み」を後援しています(航空能力プログラム・エグゼクティブ(Capability Program Executive Aviation), 2026年)。この取り組みでは、改修したUH-60Lを用いて、山林火災の消火およびそれに関連する州任務に対する自律型航空機の価値を見極めます。自律的に実施される中核的な任務タスクの戦術・技術・手順は、戦闘状況下の兵站や機動的な後方支援などの陸軍の多用途/強襲任務と方向性を同じくしています。

おわりに

陸軍航空は、搭乗員が機上・機外システムの一層の複雑化に対処していく中で、数十年に及ぶ自動化・自律化研究の蓄積の上に立ち、性能を最適化し人的過誤を減らす取り組みを続けています。陸軍回転翼機における自動化・自律化の進展は、任務の有効性を高め、兵士の殺傷性と生存性を向上させるとともに、作戦指揮官に柔軟性をもたらします。自律化は、経験の浅いパイロット、多忙なパイロット、疲労したパイロット、あるいは負傷したパイロットの戦闘任務遂行能力を向上させます。その向上を実現する上での鍵となるのは、知覚、制御、任務システムおよびユーザー・インターフェースを一体化した自律化スイートによって有人無人両用の運用を可能にする、H-60Mx OPVの取り組みなのです。

脚注

¹これらの飛行時間データは、プロジェクト・チームの陸軍飛行記録と筆者らの直接の知見に基づくものである。

参考文献

Capability Program Executive Aviation. (2026, March 19). U.S. Army takes major leap into future of aviation with delivery of first autonomous-ready Black Hawk. https://www.dvidshub.net/news/printable/560996


マイケル・オスモン氏は、士官、パイロット、技術教育者として25年間陸軍に勤務した。航空宇宙工学の修士号を持ち、米国海軍テスト・パイロット学校で学んだ。主として搭乗した機種はOH-58D/F、UH-72A、UH-60L/M、C-12およびセスナT206H。現在は航空能力プログラム・エグゼクティブに技術支援を提供している。

デーブ・アーターバーン氏は、陸軍航空で28年以上勤務し、陸軍操縦士徽章の最上級である特級陸軍操縦士(Master Army Aviator)の資格を有して退役した。航空宇宙工学とシステム工学の両分野で修士号を持ち、米国海軍テスト・パイロット学校で学んだ。固定翼・回転翼52機種で2,100時間を超える飛行時間を有し、数十の専門誌に寄稿している。

カール・オット氏は、バージニア州フォート・ユースティスの米陸軍戦闘能力開発コマンド航空及びミサイル・センター技術開発部局に所属する実験機テスト・パイロットである。専門分野は先進飛行制御、自律化および航空機の操縦性能。

訳者コメント:本稿はH-60Mxの受領を報じる記事ですが、その前史にあたるS-70 OPVの実証について原文はほとんど触れていません。補っておくと、MATRIXを搭載したUH-60A(機体番号N60-OPV、機体にDARPAのロゴを掲げる)は2022年2月5日、ケンタッキー州フォート・キャンベルで、誰も搭乗しない状態での初飛行に成功しています。操縦士がコックピットのOPVスイッチを「2」から「0」に切り替えて機外へ出ると、機体は自ら発航前点検を終えてエンジンを始動し、ローターを回して離陸しました。飛行時間は約30分、模擬した市街地を通常の速度と高度で航法し、想定した建物を避けながら経路を実時間で再計画しています。2日後にも同様の飛行が行われました。

同年10月には、アリゾナ州ユマ試験場で行われたプロジェクト・コンバージェンス2022において、12日・14日・18日の3回にわたり実任務に近い飛行が実施されました。内容は、実物と模擬を合わせた血液400単位(約500ポンド)を積んで83マイルを往復する戦場補給、負傷者後送、そして40フィートのスリングに2,600ポンドの外部搭載物を吊り下げて100ノットで30分間飛行するスリング・ロードの3種です。本稿が「自律的に実施される中核的な任務タスクは戦闘状況下の兵站や機動的な後方支援を含む多用途/強襲任務と方向性を同じくする」と述べる根拠は、この実績にあります。冒頭写真のフォート・アーウィンでのプロジェクト・コンバージェンスは、これより後の年次のものです。

対比として押さえておきたいのは、防衛省が本稿の路線を採っていないことです。有人機を改造して有人・無人を選べるようにするOPVという発想は、防衛省の文書では「将来無人装備に関する研究開発ビジョン」(平成28年)に一度現れるだけで、そこでも訳語を立てず「OPV」のまま、「有人機をもとに改造し、用途により有人/無人の運用を選択できる航空機」と説明されているにすぎません。令和7年版防衛白書にも防衛力整備計画にもこの概念は登場せず、防衛省が進めているのは最初から無人の機体、すなわち「無人機(UAV)」であり、航空装備研究所が飛行試験を行った「遠隔操作型支援機」も無人実験機と有人ヘリコプターを組ませる有人機・無人機連携です。訳語として本稿で用いた「有人無人両用機」も定訳ではなく、特許庁登録の明細書に見える表記を採りました。

この違いは、陸上自衛隊の航空科にとって他人事ではありません。防衛力整備計画は、対戦車・戦闘ヘリコプター(AH)と観測ヘリコプター(OH)の機能を多用途/攻撃用UAVおよび偵察用UAVに移管し、用途廃止を進めるとしています。移管の受け皿を新造の無人機に求めるか、既存の有人機に自律化キットを後付けする道を残すかは、装備体系の設計そのものにかかわる選択です。本稿が示すのは後者の解であり、しかも米陸軍は2019年から2023年までFBWのみを90飛行時間かけて先に検証し、自律化はその後に載せるという段階を踏んでいます。この順序、そして認定の道筋を定めるために早い段階から耐空性要件の収集に着手しているという記述は、新型機の受け入れを構想する立場にとって参考になるはずです。
                               

出典:Army Receives Autonomous Black Hawk, AVIATION DIGEST, Army Aviation Center of Excellence 2026年08月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

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