航空事故回顧-DVE(悪視程環境)下でのAH-64のワイヤーストライク
NVGを使用し、訓練場の間を移動していたAH-64Dが高圧線に接触した。機体は、墜落・大破し、2名の搭乗員が死亡した。
飛行の経過
現地時間1656、事故機の搭乗員は、APART操縦技量評価の一部を実施するため離陸した。訓練場に向かう前に、飛行場上空を1周した。それから、整備試験飛行地域まで飛行し、戦場機動要領の訓練を行った。その後、予定していた最初の訓練地域まで移動し、低空飛行訓練を実施した。技量評価を開始した時、天候が悪化し始めた。1818、その最初の訓練地域を離脱し、次の訓練地域に向かった。現地時間1821、当該機は、次の訓練地域に向かう途中にあった高圧線に衝突し、墜落・炎上した。
搭乗員の練度
機長の総飛行時間は3,213時間であり、そのうちAH-64での飛行時間は3,122時間であった。副操縦士の総飛行時間は1,8163時間であり、そのうちAH-64での飛行時間は1,733時間であった。双方の操縦士は、教官操縦士としての資格を有していた。
考 察
訓練や任務の実施においては、環境条件が変化し、飛行を継続するか、中止して飛行場に帰投するかを判断しなければならない場合がある。天候の悪化に遭遇した場合には、このことを念頭に置き、クルー・コーディネーションの訓練成果を活用しつつ、運用の安全を踏まえた判断を行わなければならない。その判断を適切に行うためには、訓練担当者と連絡を取り、追加の指示を受けたり、事前に説明を受けた範囲を逸脱する変化事項があった場合には指示の変更を求めたりすることが必要となる場合もある。予想外の事態や天候に対応するためには、新たな状況に応じた任務計画の修正を操縦しながら行えることが重要である。予想外の状況に遭遇した場合には、クルー・コーディネーションを適切にし、任務計画の修正を能動的に行い、部隊が定めるSOPを遵守し、必要に応じ、訓練担当者に助言を求め、飛行の安全を確保しなければならない。
指揮官や搭乗員が任務を継続するか、中止するかの判断を行うにあたっては、AR 95-1 FLIGHT REGULATIONSの次の記述が参考となる。
2-14 b (3)項
ステップ3-任務の最終承認適切な最終承認権者は、リスクの軽減を図るため、任務の妥当性、計画、リスク軽減について検討するとともに、指揮官の指針に則しつつ、飛行または任務の承認を実施するものとする。任務の承認手続きにおいては、口頭による承認を行った後、DA Form 5484またはRAWを使用して文書化および署名し、記録として残すことを妨げない。訓練担当者および最終承認権者は、必要に応じ、口頭での承認を行うことができる。搭乗者の交代や任務遂行上の条件に変化が生じ、リスクが増大した場合には、機長または指揮官は、必要に応じ、再度指示を受け、任務の再承認を受けるものとする。
出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness/Safety Center 2017年11月
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
アクセス回数:3,173
コメント投稿フォーム
1件のコメント
REFERENCEにAR 95-1 FLIGHT REGULATIONSを掲載しましたので、併せてご確認ください。