航空事故回顧-CH-47の地上滑走中の事故
飛行の経過
当該機(CH-47)は、所属駐屯地に帰投するため、ある港からある地方空港までの機体搬送を実施中であった。その飛行中には、限定的な整備確認飛行も実施された。当該地方空港に着陸すると、一時駐機場まで地上滑走するように指示された。指示に従い一時駐機場まで移動したが、そこには地上誘導員が配置されていなかった。機長は、駐機中の別なCH-47と格納庫の間を通過してから、格納庫の付近で180度向きを変えることにした。キャビン・ドア(貨物室前方側の搭乗口)に位置していた機付長は、格納庫が近いことをパイロットに注意喚起した。機長は旋回を続け、他の搭乗員は180度の旋回がクリアー(支障となる障害物がない)であることを報告した。旋回の途中で後方ローターが格納庫に衝突した。後方ローターの3枚のブレード、格納庫の角部および格納庫内の2機の航空機が損傷した。
搭乗員の練度
機長の総飛行時間は1,806時間であり、そのうち連続した飛行時間は1,647時間であった。副操縦士の総飛行時間は133時間であり、そのうち連続した飛行時間は49時間であった。
考 察
航空機の地上滑走中の運用は、飛行中の運用と同レベルの危険を伴うものである。狭隘(きょうあい)かつ輻輳(ふくそう)している地点における地上運用の安全な実施のためには、搭乗員の目視による正確な監視および搭乗員間の適切な意思疎通の実施が必要である。また、機体搬送や展開地推進に関する計画の立案には、指揮官、航空安全担当将校(aviation safety officers, ASO)および各級指揮官の関与が不可欠である。さらに、指揮所は、航空機が燃料再補給または宿営を行う中継基地について、偵察が確行され、事故防止計画が確立されていることを確認する必要がある。特に、民間飛行場において陸軍機を運用する場合には、航空安全担当将校が一時駐機および燃料再補給を行う地点の安全点検を実施し、詳細な事故防止計画を作成し、運航上の問題点を明らかにすることが、さらに重要となる。
任務を終了後に駐屯地に帰投するための機体搬送任務を行う場合には、搭乗員が自信過剰になっていないかを確認する必要がある。搭乗員は、その搭乗員としての任務の遂行や状況判断の実施に関し、決して気を抜くようなことがあってはならない。正常だと確信を持てないことには、必ず異常が存在するものである。搭乗員は、そのことに関し相互に意思疎通を行い、機長は、その危険性を評価し、それを低減するか回避できるまで機体の移動を停止すべきである。現在の高い国外展開頻度(OPTEMPO, Operational Tempo)においては、事故発生のリスクを軽減するため、各級指揮官による適切な統制の実施が不可欠である。自信過剰によるエラーを防止するために各級指揮官が実施すべきことには、同一搭乗員による飛行の繰り返しを避けること、中継基地の駐機および給油地域における地上誘導を実施するため(適切に訓練された)陸軍兵士を配置すること、航空安全担当将校による計画された中継基地の現地安全確認および中継基地ごとの事故防止計画の作成が完了していることを確認すること、などがある。
出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness/Safety Center 2018年06月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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「A CH-47 was on a redeployment ferry mission from a port to a regional airport for staging to redeploy to its home station.」の「ferry mission」に対応する陸自航空用語について、ツイッターとフェイスブックでアンケートを行いました。早速、頂いた回答に基づき、「機体搬送」にしています。