2013年度航空事故速報
この数字が大きく印刷されているのはなぜでしょうか?それには、2つの理由があります。
文字は大きく印刷されていますが、飛行事故におけるクラスAの事故率としては、大きな数字ではありません。0.72とは、米陸軍の固定および回転翼機における10万飛行時間当たりのクラスA飛行事故の発生件数を表しています。この数字は、過去2番目に低い数字であり、過去40年以上の間において、4回だけ1.0を下回った年のうちの1つなのです(グラフ参照)。
これは、非常に良いニュースです。2013年度は、陸軍航空の記録上、最も安全な年のうちのひとつでした。次ベージ以降に示すデータを見るとわかるように、2013年度に報告された事故は、2012年度の半分でした。それでは、今年の航空安全における成功の要因は、リーダーシップの基本に立ち返ったことと、基準や規律を厳守したことによるものでしょうか?そこまでは言えないでしょう。しかし、今年得られた改善は、過去数年間にわたり航空安全への取り組みに関与した航空職種のすべての人々の努力と献身を反映していると言ってよいでしょう。
一方、良好であるということは、新しい挑戦をもたらすことでもあります。航空安全において、発生件数や発生率が十分に低いということは決してなく、常に記録を向上するために邁進しなければなりません。発生件数や発生率を低くするためには、ハードルをより高く設定する必要があります。リスク管理のプロセスを精査し、リーダーとしての安全活動を継続し、確立された基準に従って任務を遂行することが、航空事故を発生させるリスクを最小限にするために大きな役割を果たします。航空安全の確保は、個人の努力により勝利を獲得するチーム競技なのです。より多くの個人が努力をすれば、より強いチームが生まれるのです。
先に、最初の数字が大きく記されているのには、2つの理由があると言いました。1つは、それがグッド・ニュースだからです。もう1つは、皆さんが実行すると宣言していた航空安全確保のための施策を記入できる余白を作るためです。・・・既に各部隊の訓練予定表には記載されているはずです。さて、本当に記載していましたか?
有人機
有人機カテゴリにおいて、2013年度は61件のクラスのAからCの航空事故が陸軍航空で発生した。2012年度中に発生した124件のクラスのAからCの航空事故発生件数と比べると大幅に減少しており、クラスAの件数も減少している。
クラスA及びB事故の概要:
15件のクラスA及びBの事故が発生し、そのうちの4件が夜間に発生している。15件の事故のうち、人的要因によるものは、13件(87%)であった。一方、器材が原因又は原因と考えられるものは、15件中2件(13%)であった。
2013年度の飛行中のクラスA事故発生率(回転翼機及び固定翼機)は、0.72であった(飛行時間10万時間あたりの飛行中のクラスA事故発生件数)。2012年度の同事故発生率は、1.53であった。
要因別の発生状況:
人的要因:ダスト・ランディングは、1件のクラスA、1件のクラスB、及び2件のクラスC事故の原因となった。1件のNVG使用中のクラスA事故(死亡者5名)は、低照度及びコントラストの不足による地形の誤認が要因と推定される空間識失調が原因であった。エンジン出力の管理が要因で1件のクラスA、1件のクラスB、1件のクラスC事故が発生した。これら以外のクラスA事故は、UH-60のグランドタクシー中の事故が2件、NVGを使用した斜面への着陸時におけるブレードの接触が1件であった。
器材上の要因:器材の不具合による事故には、1件のエンジン故障と1件のメイン・ロータ・システムの致命的な不具合があった。
有人機クラスA主要事故の概要(*は、夜間飛行を示す。):
– CH-47D:当該機は、2番機として長機に続行していたが、ダスト環境下において2回の着陸復行を行った後、3回目の着陸においてタワーに接触した。前方メイン・ロータ・ブレードが、搭載していたMK19 40mmランチャー・システムに接触し、実弾が数発発射された。
– UH-60A:当該機は、格納庫にタクシー中、突然左ヨー旋回に入り、機体が浮揚して格納庫に接触した。
* UH-60M:当該機は、演習場内の人工的に作ったピナクル(狭隘な山頂部)の付近にあった土及び砂利の道路に着陸進入中、メイン・ロータ・ブレードがピナクルの斜面に接触した。操縦士は、機体を前進させながら道路に着陸した。
* UH-60L:低照度/低コントラスト条件下でNVGを使用した複数機による訓練飛行を実施中、操縦士が空間識失調となり、回復不能な姿勢のまま着陸した。当該機は、地面に激突、横転し、5人の搭乗員が死亡した。
– OH-58D:昼間の複数機による訓練を実施中、飛行中にエンジン・コントロール・ユニットの不具合が発生した。当該機は、地面に激突し、1名が死亡した。機体は大破した。
– AH-64D:当該機は、メイン・ロータ・システムに致命的な不具合が発生した後墜落した。2名が死亡した。
– UH-60L:空中機動任務を実施中、メイン・ローターがドループ(回転低下)した。当該機はハードランディングした。クラスAに該当する被害が報告された。
– UH-60M:当該機は、タクシー中にメイン・ロータ・ブレードがコンクリートの障壁に接触した。クラスAに該当する被害が報告された。
無人航空機システム(UAS)
無人航空機システム(UAS)においては、8件のクラスA、8件のクラスB、及び20件のクラスCの合計36件のクラスAからCの事故が発生した。クラスAの事故は、2件の気球、5件のMQ-1S、及び1件のMQ-5Bにおいて発生した。RQ-7BSは、28件のクラスB及びCの事故のうち14件を占め、エンジンの故障、着陸失敗及びリンクの途絶が原因であった。
UASクラスA主要事故の概要:
– MQ-1C:エンジンが温度超過とFADECの故障を表示した後に停止した。機体は、滑走路の近傍に墜落した。
– MQ-1C:エンジンが燃料の手動移送中に停止した。
– MQ-5B:エンジンが回転数の変動が発生した後停止した。
– MQ-5B:離陸中、機体が滑走路外に変針し、コンクリート製の排水溝に落下して破損した。
– MQ-1C:エンジンが燃料圧力の低下により停止した。
– 軽航空機:つなぎ綱が係留中に強風で切断された。
– MQ-1B:飛行中にシステムとのリンクが途絶した。
– MQ-1C:マニホールド・プレッシャーが低下したのち、エンジンが停止した。
訳者注:米国の会計年度の開始は10月、終了は9月です。また、本事故速報発簡時(2013年12月改正前)の米国陸軍の航空事故の区分は、概ね次のとおりです。
クラスA- 200万ドル以上の損害、航空機の破壊、遺失若しくは放棄、死亡、又は完全な身体障害に至る傷害若しくは疾病を伴う事故
クラスB- 50万ドル以上200万ドル未満の損害、部分的な身体障害に至る傷害若しくは疾病、又は3人以上の入院を伴う事故
クラスC- 5万ドル以上50万ドル未満の損害又は1日以上の休養を要する傷害若しくは疾病を伴う事故
クラスD- 2千ドル以上5万ドル未満の損害、又は職務に影響を及ぼす傷害若しくは疾病を伴う事故
クラスE aviation accident- 2千ドル未満の損害を伴う事故
クラスF aviation incideent-エンジンの損傷を伴う航空インシデント
コメント:Flightfaxは、2007年2月号をもって地上安全を含めた雑誌であるKnowledgeに統合され発行を停止していましたが、2011年5月からオンライン版として復活しています。
出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2013年10月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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