情報は航空作戦をどう支えるか

「楽しげな小さい赤い『死の円』を描くのは、もうやめよう。」情報要員は、指揮官の意思決定を可能にし、任務を達成するために存在する。教義もこのことを明確に裏付けており、陸軍ドクトリン刊行物(Army Doctrine Publication, ADP)2-0『情報』は、情報を作戦環境の理解をもたらす成果物と定義している[1]。しかし陸軍航空部隊では、その理解が十分にもたらされていないことが多い。
情報分析は、あまりにも多くの場合、テンプレートに当てはめただけの脅威の図示に終始する。多くの操縦士が冗談めかして「赤い死の円」と呼んでいるものである。こうした図は、通常、脅威システムの最大交戦距離を表したものであるが、分析の出発点としてではなく、決定的な制約として扱われている。その結果、脅威の姿は静的なものとなり、しばしば誤解を招くものとなる。この問題の根は、努力の不足ではなく、事前の教育の欠落にある。
欠落:航空の文脈を欠いた情報教育
陸軍の情報教育は、脅威の教義、とりわけ地上機動と大規模戦闘作戦に関するものを、当然のこととして重視している。この教育を受けた情報分析担当者は、敵の部隊編成、砲兵の射程、「教義テンプレート」(doctrinal template、敵が自らの教義どおりに行動した場合の部隊の配置や行動の型を図に表したもの)には精通している。しかしこの教育では、他の戦闘機能、とりわけ航空がどのように戦闘に統合されるのかが、十分に扱われていないことが多い。
戦闘航空旅団(Combat Aviation Brigade, CAB)において、通常AH-64Eアパッチを装備する攻撃大隊は、地上部隊の機動計画を可能にするために存在する。その成否は、脅威を回避することだけでなく、それらの脅威が時間・空間・条件に応じてどのように機能するかを理解することにかかっている。
陸軍航空部隊に着任する情報要員は、地対空脅威の運用、レーダーによる捕捉・追随の限界、兵器交戦範囲(weapons engagement zone, WEZ)と最大射程の違い、地形の影響、自己防護装置の能力についての知識が浅い。その結果、分析は「敵はどこを射撃できるか」には答えるものの、「敵はいつ、どのように、どの程度の確率で任務に影響を及ぼし得るか」には答えられないものとなる。教義も、ここから一歩踏み出す必要性を強調している。陸軍ドクトリン刊行物3-0『作戦』は、領域横断的な能力の「収束」(convergence、複数領域の能力を同じ時機・場所に重ねて効果を生じさせること)を重視している[2]。航空部隊の機動、生存性およびタイミングを考慮しない情報は、その収束に有効に寄与することはできない。
脅威の図示から脅威の理解へ
核心にある問題は、敵のシステムに関する知識の不足ではない。その知識を作戦に役立つ見積へと変換できていないことである。赤い円が示しているのは、脅威システムの最大能力にすぎない。航空部隊に必要なのは、最大射程と、実際に交戦できる範囲との違いを深く理解することである。計画立案に当たって操縦士が知る必要があるのは、探知から交戦までの所要時間、遮蔽、スタンドオフ(敵の交戦範囲外にとどまったまま攻撃すること)、機動の可能性、そして敵の操作員がその運用技法にどの程度習熟しているかである。
この転換は、教範(Field Manual, FM)3-04『陸軍航空』に記述されている情報の戦闘機能とも合致する。同教範は、航空部隊が脅威システムに対処するには、地形の活用、タイミング、他の戦闘機能との統合が欠かせないことを強調している[3]。要するに、航空部隊の情報は、脅威の存在を図示するだけでなく、「意思決定上の優位」(decision advantage、敵より速く的確に判断し行動できる状態)をもたらすものでなければならない。
解決策:大隊レベルへの投資
この欠落は解決可能であるが、意図的な投資を要する。佐官級の指揮官は、平素の管理業務上の要求よりも、情報部門の育成を優先しなければならない。航空部隊における情報の練度は、管理業務の能力だけでは達成できない。実際的な方法は、脅威の理解、航空との統合および任務分析に60%、管理業務上の要求に40%の比重を置く「60対40」の配分である。情報分析担当者の仕事は、指揮官のために脅威を描き出し、操縦士を生かして帰すことである。
現在、全軍で利用できる機会
生存性・脅威統合に関する課程:
- 統合航空機生存性プログラム(Joint Aircraft Survivability Program, JASP)の3日間の「航空機戦闘生存性短期課程」[4]
- ミサイル・宇宙情報センター(Missile and Space Intelligence Center, MSIC)の地対空ミサイル大学(Surface-to-Air Missile University, SAMU)による、外国が運用する地対空ミサイル(surface-to-air missile, SAM)システムに関する4日間の課程[5]
- ミサイル・宇宙情報センターが主催する、外国が運用する地対空ミサイルおよび対空砲・防空砲兵(anti-aircraft / air defense artillery, AA/ADA)に関する4日間の上級技術課程「低高度地対空ミサイル脅威(Low Altitude SAM Threats, LAST)」[6]
航空に重点を置いた情報教育課程:
- 航空情報支援課程(Intelligence Support to Aviation Course, ISTAC):陸軍の情報要員向け訓練制度「ファウンドリー」(Foundry)の経費で受講できる3週間の課程であり、アメリカ陸軍特殊作戦航空コマンドが実施する、情報に重点を置いた「航空作戦に対する脅威」課程の最高峰[7]
- 航空情報支援セミナー:アラバマ州フォート・ラッカーの米陸軍航空教育研究センターG2(情報)参謀部が年2回主催し、航空の各種任務を支援する情報要員に教育を提供する[8]
- アメリカ陸軍航空協会(AAAA)の陸軍航空ミッション・ソリューション・サミット、航空生存性シンポジウム等の専門家の会合[9]
これらの場は、情報要員に航空機の生存性、センサーの統合、脅威システムの運用の実際に触れる機会を与え、理論と実践の隔たりを埋める。
航空訓練への情報の組み込み
情報部門は、傍観者としてではなく貢献者として、航空訓練のあらゆる場面に組み込まれなければならない。これには、シミュレーター訓練の各回の脅威想定の作成、中隊単位で行う状況付与訓練(training lanes)の支援、計画立案と予行への参加、大隊・旅団の演習間、状況の進展に応じて情報を絶えず更新することが含まれる。情報部門が中心となって脅威を実戦さながらに再現するとき、訓練は戦闘への準備となる。
決定的な強み:准尉の専門知識
この過程で最も活用されていない資源は、航空の准尉たちである。操縦士を務める准尉は、航空機の能力と限界について深い理解をもたらす。射撃担当士官(Master Gunner)を務める准尉は、現実的な訓練を通じて戦術的運用を洗練させ、敵の脅威とどのように効果的に交戦し、撃破するかを助言する。航空任務生存担当士官(Aviation Mission Survivability Officer, AMSO)を務める准尉は、脅威システムを生存のための戦術に置き換え、情報班の相談相手となる。これらの専門家は、情報を検証するだけにとどまらない。情報に異議を唱えるのである。
これらの准尉たちは分析担当者に、テンプレートどおりの見積から一歩踏み出し、航空機用自己防護装置(Aircraft Survivability Equipment, ASE)の有効性、地形の活用、脅威システムの限界をきめ細かく理解するよう促す。状況判断(Military Decision-Making Process, MDMP)、とりわけ図戦(war-gaming)での状況判断において、彼らは「この脅威は実際に任務に影響するのか、それとも撃破できるのか」という問いに答えるうえで欠かせない存在である。この協働により、S2(情報)参謀部は報告するだけの組織から、部隊の戦闘力を倍加させる存在へと変わる。脅威の分析が戦術や能力に合わないときに、それを「無効」(mark it zero)と判定する手助けをするのもこれらの准尉たちである。
航空任務生存担当士官の視点
生存性の概念は、時代とともに大きく変化してきた。1970年代、米陸軍は、多用途戦術輸送機システム(Utility Tactical Transport Aircraft System, UTTAS)と新型攻撃ヘリコプター(Advanced Attack Helicopter, AAH)の要求事項において、それぞれ7.62mm弾、12.7mm弾の被弾後も少なくとも30分間は安全に飛行できることを義務付けていた[10]。これは、脆弱性の低減、すなわち被弾に耐える能力に重点が置かれていたことを示している。
これに対し、ロバート・E・ボール博士などの専門家の研究に大きな影響を受けた現代の生存性分析は、被弾性(susceptibility:被弾する可能性)と脆弱性(vulnerability)の両方を統合している。計画立案の重要な柱の一つは、脅威環境を理解し、どこなら安全に飛行できるかを見極めることである。脅威を恐れるあまり、計画が脅威を避けることに縛られて目標を達成できなくなれば、それは敵に任務を阻止されたのと同じであり、「任務阻止キル」(mission denial kill)、原典の表現では「Cキル」(C-Kill)とみなすことができる。任務阻止キルは、交戦を受けるおそれがあるだけで任務の効果が失われてしまうという点で、より広い概念である「ミッション・キル」(mission kill)に似ている。
筆者たちの言葉
「結局のところ、真の生存性とは、航空機が物理的にどのような状態にあるかだけではなく、敵の脅威下で任務を首尾よく完遂できるかどうかで決まります。そのためには、計画立案、脅威の見積、そして『航空機を撃破する』とはどういうことかについてのきめ細かい理解を含む、総合的な取組が必要です」と、マイケル・A・クラーク上級准尉4は述べている。
「現代の戦場で回転翼機を運用するうえでの問題は、生存性が低いことではありません。敵に対する被弾性を見積もる訓練が欠けていることなのです。米陸軍航空は、重要な情報資産を慢性的に活用しきれておらず、操縦士は戦闘で優位に立つために必要な重要情報を持たないまま飛んでいます。知識は、力の差を埋める偉大な武器です」と、チャド・S・ブラウンシュワイグ上級准尉3は述べている。
結論
航空作戦には、一般的な脅威の図示以上のものが求められる。必要なのは、タイミング、機動、生存性および他の戦闘機能との統合を理解した情報である。求められる転換は単純だが重要である。第1に射程の円から交戦範囲への転換、第2に脅威の存在から任務に対する脅威の影響への転換、そして第3に、情報を把握しているだけの状態から、意思決定上の優位を得ている状態への転換である。
情報要員が航空部隊の中で教育を受け、組み込まれ、異論にさらされながら鍛えられるとき、彼らは赤い円を描くのをやめ、作戦を可能にし始める。
参考文献
1. 陸軍ドクトリン刊行物2-0『情報』 https://armypubs.army.mil/epubs/DR_pubs/DR_a/ARN18009-ADP_2-0-000-WEB-2.pdf
2. 陸軍ドクトリン刊行物3-0『作戦』 https://armypubs.army.mil/epubs/DR_pubs/DR_a/ARN43323-ADP_3-0-000-WEB-1.pdf
3. 教範3-04『陸軍航空』 https://armypubs.army.mil/epubs/DR_pubs/DR_a/ARN43343-FM_3-04-000-WEB-1.pdf
4. 統合航空機生存性プログラム「航空機戦闘生存性短期課程」 https://www.jasp-online.org/event/aircraft-combat-survivability-short-course/
5. 地対空ミサイル大学(インテリペディア) https://intellipedia.intelink.gov/wiki/SAM_University
6. 低高度地対空ミサイル脅威課程 https://intelshare.intelink.gov/sites/SAMU/LAST/SitePages/Home.aspx
7. 航空情報支援課程(インテリペディア) https://intellipedia.intelink.gov/wiki/Intelligence_support_to_aviation_course
8. 航空情報支援セミナー(インテリペディア) https://intellipedia.intelink.gov/wiki/Intellipedia:Intelligence_Support_to_Aviation_Seminar
9. アメリカ陸軍航空協会 https://quad-a.org/
10. ロバート・E・ボール『航空機戦闘生存性の分析と設計の基礎』アメリカ航空宇宙学会、2003年
ジョナサン・C・ボディン大尉は、ドイツ、マインツ=カステルの欧州マルチドメイン・コマンドでG39(情報作戦)のシグナル・インテリジェンス(signals intelligence, SIGINT)目標選定担当士官を務めている。マイケル・A・クラーク上級准尉4は、アラバマ州ハンツビルの航空将来能力総局で航空任務生存担当士官を務めている。チャド・S・ブラウンシュワイグ上級准尉3は、現在、コロラド州フォート・カーソンの第4-4攻撃大隊で上級航空任務生存担当士官を務めている。
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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