AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

地形を制する者たち:統合防空システムとの戦いにおいて陸軍航空が本来備える生存性

中佐 ダニエル・ボール

特集:訓練

現代の戦場は、陸軍航空に対し、高度に発達した統合防空システム(Integrated Air Defense Systems, IADS)という手ごわい難問を突きつけている。こうした複雑なセンサーや火器システムの網を突破するには、電子戦(electronic warfare, EW)専用機や、他職種・軍種による大規模なシード(Suppression of Enemy Air Defense, SEAD)といった外部からの支援に全面的に頼らざるを得ないという考え方が、航空科職種の内外を問わず広く信じられている。私はイーグル・チームに在職した2年間を通じて、(攻撃であれ輸送であれ)支援戦力なしでは航空部隊を投入しないと明言する師団長の声を聞き、それにより過大な手続き上の摩擦が生じていると嘆く参謀たちの声に耳を傾け、シードをリスク低減策の有無を問わずに「実施可否(Go/No-Go)」の判定基準として扱う航空部隊指揮官の発言に接してきた。しかし、カリフォルニア州チャイナレイク海軍エア・ウエポン・ステーションで最近実施された第1歩兵師団戦闘航空旅団(愛称「デーモンズ」)の訓練は、これを真っ向から否定する有力な事実を示した。すなわち、陸軍航空は、前方展開線(Forward Line of Own Troops, FLOT)を越えて進出する際に、必ずしも外部の支援戦力を必要とするわけではないということである。教範TC 3-04.9『指揮官の航空任務生存性プログラム(Commander’s Aviation Mission Survivability Program)』によれば、陸軍航空は「脅威の理解、融合された任務計画、そして戦術」があれば、係争下の空域で生き残るだけでなく、優位を占めることさえできる。

統合防空システムの環境下で行動を成功させる鍵は、敵のキル・チェーンを理解し、これを体系的に解体することにある。TC 3-04.9『指揮官の航空任務生存性プログラム』が示すとおり、この過程は、発見・捕捉・追尾・目標指定・交戦・評価(Find, Fix, Track, Target, Engage and Assess, F2T2EA)という順序をたどる。チャイナレイクにおける第1歩兵師団戦闘航空旅団の経験は、航空旅団が固有に保有する能力だけを用いてこの連鎖を各段階で断ち切る方法を示す、説得力のある事例研究となっている。

状況判断(Military Decision Making Process, MDMP)の第1段階には、「参謀その他の主要な関係者に準備を下令する」および「ツールを準備する」という細部の手順が含まれている。ここでいう「ツール」は通常、地図、作戦規定(SOP)、継続見積その他の成果物を指すが、見落とされがちな戦術、技術および手順(Tactic, Techniques and Procedures, TTP)として、これらの関係者とツールを融合させ、旅団(およびそれに準じて大隊)のレベルに専従の統合任務計画チームを編成する、という方法がある。このチームは、戦略・戦術・分析チーム(Strategy, Tactics, and Analysis Team, STAT)という形をとることができる。TC 3-04.9に示されているとおり、戦略・戦術・分析チームは、S2(情報)参謀部、サイバー電磁活動(Cyber Electromagnetic Activities, CEMA)参謀部、マスター・ガナー、および航空任務生存性士官(Aviation Mission Survivability Officers, AMSO)で構成され、与えられたツールを活用して多領域における効果を分析し、敵が航空部隊に影響を及ぼし得る様々な方法を把握することを明確な目的としている。第160特殊作戦航空連隊(空挺)(160th Special Operations Aviation Regiment (Airborne), SOAR(A))は、最近になって、航空拒否地域計画チーム(Aviation Denied Area Planning Team, ADAPT)という、これをさらに一歩進めた、より一層きめ細かな分析を行うことのできる専門家集団を採用している。これらのチームに関する詳細な議論は本稿の範囲を超えるが、読者諸氏には、身近なK4(航空任務生存性士官の付加特技識別記号, ASI K4)保有者に問い合わせ、より詳しい情報を得ることを勧めたい。

生き残るために最も効果的な方法は、そもそも見つからないことである。搭乗員たちは、AH-64、CH-47およびUH-60で構成される空中機動作戦を3回にわたって実施し、そのことを実証した。駐屯地にいる段階から徹底して行った統合任務計画により、SA-8および2S6のシステムにまったく視認されずに統合防空システムを通り抜けられる進入・離脱経路をあらかじめ見つけ出していたのである。敵のキル・チェーンの連鎖を破綻させるうえで鍵となる要素は、航空機がさらされる時間を最小化することである。当該部隊はほふく飛行(Nap-of-the-Earth, NOE)に習熟しており、その結果、脆弱性が高まる決定的な時間帯には空中機動の梯隊全体を対地高度30フィート(約9メートル)未満に維持することができたため、主要な防空システムは、輸送ヘリコプターが降着地域(landing zone, LZ)に到達するまで、それを発見することさえできなかった。

たとえ探知されたとしても、陸軍航空は決して無防備ではない。訓練中、敵のシステムが友軍機の追尾と目標指定に成功した場面は何度かあった。しかしこのときも、事前の任務計画が撃墜を防いだ。AH-64部隊は射撃陣地を選定するにあたり、教範ATP 3-04.1『航空部隊の戦術的運用』が示す「兵器の射程の最後の3分の1」という指針と、地形が与えてくれる遮蔽との釣り合いを取ろうと努めた。陣地が決まると、S2と航空任務生存性士官は、個々の敵システムが航空機を捕捉し、交戦し、命中させるまでに要する時間を割り出すことができた。敵はアパッチに対して複数のミサイルを発射したが、搭乗員が自機の最大の遮蔽解除時間を把握していたため、飛来したミサイルはいずれも、アパッチが再遮蔽した地形に着弾する結果となった。検討会の場で、ある上級搭乗員はこう述べている。「再遮蔽までに、目標を発見して撃破できる時間がどれだけ残されているかを知っていたことが決定的でした。ただし、別の戦闘陣地へより効果的に機動できるよう、他の距離に対応する時間もニーボードに書き留めておくべきでした」

同様に、ある空中機動部隊は、ダウン・ウォッシュが巻き上げた砂塵により所在を暴かれ、敵に捕捉された。しかし、計画を厳格に守ったことによって敵の兵器交戦範囲(weapon engagement zone, WEZ)の外にとどまり続け、ロックオンを受けたにもかかわらず、脅威を無力化できた。

これらの事例が浮き彫りにする決定的に重要な点は、生存性とは単に探知を避けることにとどまらない、ということである。同じくらい重要なのは、脅威の能力と限界を理解し、その知識を自らの機動と計画に反映させることである。兵器交戦範囲の外にとどまるか、地形を使ってロックオンを外させることにより、搭乗員はキル・チェーンの「追尾」および「目標指定」の段階を打ち破ることができる

キル・チェーンの最後の部分である「交戦」と「評価」は、操縦者の訓練練度と航空機の性能とが試される場面である。最終回の空中機動において、当該部隊は、進入してくる空中機動部隊を覆い隠すための欺騙行動としてAH-64を用いるという、斬新な計画を考え出した。その地域の脅威が交戦するまでの時間・距離の計画基準を用いて、1機のアパッチが、空中機動の梯隊が着陸の段階に入る直前に遮蔽を解いた。遮蔽を解いたアパッチは上昇してチャフを放出し、これによって当該作戦地域(AO)にあるすべての防空プラットフォームのセンサーを引きつけた。AH-64は直ちに再遮蔽したが、このときにはすでに空中機動の梯隊は着陸して部隊を降ろしており、防空戦力はセンサーを空中機動部隊に向け直す機会をまったく得られず、これらの航空機は発見されないまま当該地域を離脱した。いずれの回においても、敵側の操作員と評価・指導・訓練担当官の双方が共通して観察したのは、地形の効果的な活用こそが最も有効な生存性対策であり、その結果として敵の複数のミサイルを無効化できた、ということであった。

第1歩兵師団戦闘航空旅団によるチャイナレイクでの訓練から得られた教訓は明確である。すなわち、陸軍航空は、現代の統合防空システムを前にしても成功を収めるためのツールと戦術、技術および手順を、固有の能力として保有している、ということである。地形を活用し、兆候を管理し、欺騙行動を実行し、航空任務生存性(AMS)のための機動を用いる能力があれば、搭乗員は敵のキル・チェーンをあらゆる部分で断ち切ることができる。外部の支援戦力による支援は常に歓迎すべきものだが、それに依存したり、旧態依然とした航空任務指令(Air Tasking Order, ATO)のサイクルに縛られたりすることが決してあってはならない。中核となる能力を磨き続け、すべての搭乗員が超低空飛行(とりわけほふく飛行)の技を体得するようにすることによって、陸軍航空は、いつでも、どこでも、いかなる環境においても、飛び、戦い、勝つ用意があると、自信をもって言い切ることができる。

ダニエル・ボール中佐は、カリフォルニア州フォート・アーウィンのナショナル・トレーニング・センターにおいて、運用グループのイーグル・チームで航空S3(作戦)訓練官を務めている。

表6-1.キル・チェーンに関する検討事項

探知の段階(F2T2EA)検討事項
発見(FIND)・当該システムは、どのようにして航空機を捜索するか。
・当該システムは能動型か、受動型か。
・当該システムは、他のシステム・センサーから指示を受けているか。
・当該システムは、他のシステムに指示を与えているか。
・当該システムは、搭載型または機外の電子システム(例:航空機用自己防護装置、APR-48A)によって探知できるか。
・探知できる場合、当該システムはどのように表示されるか。
・探知できない場合、当該捜索システムを統合優先目標リスト(JIPTL)に追加する必要があるか。
・飛行が敵にさらされる度合いを最小化するために、任務計画上どのような考慮を払えるか。
・さらされる度合いを最小化するために、どのような戦術を用いることができるか。
捕捉(FIX)・当該システムは、どのようにして航空機を探知するか。
・探知を排除または低減できる、部隊内または外部の戦力はあるか。
・飛行が敵にさらされる度合いを最小化するために、任務計画上どのような考慮を払えるか。
追尾(TRACK)・当該システムは、どのようにして航空機を追尾するか。
・ロックオンを外させるために、どのような戦術を用いることができるか。
・ロックオンを排除または解除できる、部隊内または外部の戦力はあるか。
・航空機用自己防護装置の対抗手段は有効か。
・追尾を打ち破るために、どのような戦術・回避機動を用いることができるか。
目標指定(TARGET)・当該システムは、どのようにして航空機を目標として指定するか。
・ロックオンを外させるために、どのような戦術を用いることができるか。
・ロックオンを排除または解除できる、部隊内または外部の戦力はあるか。
・航空機用自己防護装置の対抗手段は有効か。
・目標指定を打ち破るために、どのような戦術・回避機動を用いることができるか。
交戦(ENGAGE)・当該システムは、どのようにして航空機と交戦するか。
・交戦には電子的手段が必要か、それともセンサーまたは照準線によって交戦できるか。
・航空機用自己防護装置の対抗手段は有効か。
・交戦を生き延びるために、どのような戦術・回避機動を用いることができるか。
評価(ASSESS)・撃破はハード・キルか、ソフト・キルか。
・ソフト・キルの場合、当該航空機はどのような行動をとるか(例:任務の続行、基地への帰投、予防着陸の実施)。
・ハード・キルの場合、撃墜された航空機に対する敵の最も可能性の高い行動方針(MLCOA)および最も危険な行動方針(MDCOA)は何か。
・当該接敵の深刻度はどの程度か。
・任務に対する影響はどのようなものか。

F2T2EA(Find, Fix, Track, Target, Engage, Assess):発見、捕捉、追尾、目標指定、交戦、評価
ASE(Aircraft Survivability Equipment):航空機用自己防護装置
JIPTL(Joint Integrated Prioritized Target List):統合優先目標リスト
MDCOA(Most Deadly Course of Action):最も危険な行動方針
MLCOA(Most Likely Course of Action):最も可能性の高い行動方針

訳者コメント:本稿はArmy Aviation誌2026年7月31日号掲載の記事の翻訳です。著者はカリフォルニア州フォート・アーウィンのナショナル・トレーニング・センターで航空部隊の訓練評価にあたる幹部で、第1歩兵師団戦闘航空旅団がチャイナレイクで行った訓練を事例に、外部の支援戦力に頼らずとも敵のキル・チェーンを断ち切れると論じています。本文中の「ロックオンされたが兵器交戦範囲の外にとどまった」という事例は、防空システムのセンサーの追尾可能距離が兵器の射程を上回るために生じるもので、警報が鳴っても直ちに撃たれる位置にいるとは限らないことを示しています。表6-1は原文では画像として掲載されているものを訳出し、冒頭の写真は原文にないため同誌の関連記事から採録しました。
                               

出典:Masters of the Terrain: Army Aviation’s Inherent Survivability in the IADS Fight, ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2026年07月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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