グローバルホーク墜落:無人機の事故調査は有人機と何が違うのか

令和8(2026)年9月15日、航空自衛隊三沢基地(青森県)の無人偵察機RQ-4Bグローバルホーク1機が、鳥取県沖の日本海に墜落しました。当該機は10時20分ごろに三沢基地を離陸した後、12時55分以降に「通信装置との接続不良」が発生、12時58分ごろに鳥取県沖北約50kmの洋上でレーダーから航跡が消失しました。同日夜までに、洋上で発見された浮遊物の写真から、当該機は墜落したと断定されました。
航空自衛隊は事故の当日、航空事故調査委員会による調査を開始しました。その後、鳥取県の海岸に漂着した機体の一部が回収され、9月24日には機体の一部と思われる物体が海上自衛隊の艦艇により海中で発見されました。10月2日からは、航空自衛隊が契約した民間の企業が、水深200〜300mの海域で引き揚げ作業を開始しました。当該機と同型の2機は、任務のための飛行を除いて飛行を見合わせています。10月2日の時点では、原因も、墜落した地点も明らかになっていません。
航空幕僚長は9月29日の記者会見で、「パイロットが乗っていない大型の航空機の事故というのは、今回初めてであります」と述べ、「日本だけで事故調査をすることはなかなか難しい」との認識も示しました。操縦者の乗っていない航空機の事故は、誰が、どのように調査するのか。米国から購入した機体の事故を、日本はどこまで自ら調査できるのか。この記事では、この二つの問題を解説します。
グローバルホークはどのように運用されているのか

グローバルホークは、米国のノースロップ・グラマン社が製造する大型の無人偵察機です。民間機と競合しない5万フィート以上の高度を最大36時間にわたって飛行できます。2022年3月に1機目が航空自衛隊に納入され、2023年6月に3機体制となりました。現在は、警戒航空団の第502飛行隊が三沢基地で運用しています。
この機体は、事前にプログラムした経路を自律的に飛行します。操縦者とセンサー操作員の2人1組が基地の中の操縦席に着き、必要なときは、操縦かんではなくマウスとキーボードで機体に指令を送信します。
地上と機体は、通信衛星を経由する通信と、見通しの利く範囲で直接つながる無線通信で結ばれています。通信が途絶したときには、あらかじめ機体に組み込まれた動作を行うようになっています。米空軍のRQ-4では、機体を制御するための通信がすべて途絶した状態が一定の時間続くと、事前に計画した経路で基地に帰投し、自動で着陸するよう設計されています(米国防総省の試験評価報告書、米空軍の事故調査報告書)。今回の機体がこうした動作をしたのかどうかは、公表されていません。
航空自衛隊は、米国企業の支援を受けて、この機体を運用しています。三沢基地には米国企業の役務員約40名(2023年時点)が駐在し、操縦やセンサーの操作に関する教育、機体や地上機材の整備、衛星通信やセンサーの整備などに当たっています。米国本土のノースロップ・グラマン社も部品の生産管理やソフトウェアの更新などを担っており、三沢基地での運用には同社の社員も加わっています。
無人機の事故は珍しくない
自衛隊の無人機が墜落したのは、今回が初めてではありません。2016年6月21日には、陸上自衛隊中部方面情報隊の無人偵察機隊(今津駐屯地、滋賀県)のヘリコプター型無人偵察機が、福井県美浜町沖で飛行訓練中に行方不明になりました。所属部隊から、無人偵察機システム(FFRS)とみられます。機体は美浜町沖約33km、水深約150mの海中にほぼ完全な状態で沈んでいるのが発見され、7月9日に回収されました。陸上自衛隊は、原因が判明するまで、すべての無人偵察機の飛行訓練を停止しました。
自衛隊の無人機の事故は、表1のように繰り返し発生しています。航空幕僚長が今回の事故を「初めて」としたのは、航空自衛隊の無人機、大型の無人機としての事故という意味です。
表1:自衛隊の無人機の主な事故
| 発生 | 機種(部隊) | 場所 | 概要 |
|---|---|---|---|
| 2016年6月 | ヘリコプター型無人偵察機(陸自中部方面情報隊。FFRSとみられる) | 福井県美浜町沖 | 飛行訓練中に行方不明。水深約150mの海中から回収 |
| 2018年8月 | FFRS(陸自) | 東富士演習場(静岡県) | 離陸直後に落下し破損。整備でのローター・ブレードの取付け角の調整が不適切 |
| 2021年11月 | スキャンイーグル(陸自情報教導隊) | 鹿児島県種子島沖 | 統合演習中に通信が途絶し行方不明。機体は未回収 |
| 2024年7月 | スキャンイーグル2(陸自第5旅団) | 北海道の然別演習場外 | 通信が途絶し、演習場外の牧草地で発見。部隊は公表せず、後に報道 |
| 2024年8月 | スカイレンジャー(陸自第2水陸機動連隊) | 北海道の上富良野演習場 | 行方不明になり、翌日に演習場外の国有林で発見 |
| 2025年9月 | 災害用ドローンII型(陸自第1師団) | 東富士演習場 | 行方不明になり、2日後に演習場内で発見 |
| 2026年9月 | RQ-4B(空自第502飛行隊) | 鳥取県沖 | 通信装置との接続不良の後、航跡が消失。墜落と断定 |
※出典:防衛省・自衛隊の発表、Jウイング、Jディフェンスニュース、産経新聞、共同通信の報道。部隊が公表しなかった事例もあり、すべての事故を網羅したものではない。
国内では、自衛隊以外の大型の無人機も事故を起こしています。海上保安庁のMQ-9B(シーガーディアン)は2025年11月、北九州空港への着陸の際に機体を損傷し、運輸安全委員会が調査を行っています。海外に目を向けると、米国のRQ-4の系列の機体は、公表資料や報道で確認できるだけで、2021年までに少なくとも8機が事故で全損しています。
米空軍全体では、1998〜2021年度の24年間に、無人機の重大事故(クラスA)が201件発生し、165機が全損しています。10万飛行時間あたりの発生率は、無人機の3.97に対して有人機(8機種)は2.06で、無人機はおよそ2倍です。事故が多発した初期の無人機MQ-1を除いても、無人機の発生率は有人機より15%高くなっています(米議会調査局)。
無人機の事故も自衛隊が自ら調査する
民間の航空機の事故は、国の運輸安全委員会が調査します。しかし、自衛隊が使用する航空機の事故には、運輸安全委員会の調査の規定が適用されず(自衛隊法第107条第8項)、自衛隊が自ら調査します。これは無人機でも同じです。自衛隊が使用する無人機の事故を国土交通大臣に報告する義務も、自衛隊以外の航空機などとの間で発生した事故に限られています(自衛隊法施行令第149条)。
自衛隊の航空事故の調査は、「航空事故調査及び報告等に関する訓令」に基づいて、陸・海・空の各自衛隊に置かれた航空事故調査委員会が行います。航空自衛隊では、航空幕僚監部の監理監察官が委員長を務め、事故の発生から90日以内に航空幕僚長に報告書を提出します(航空事故の調査及び報告に関する達)。
航空事故調査の目的は、事故の再発防止にあります。同訓令は、調査報告書の目的を航空事故の防止とし、隊員の責任の究明は目的としないと定めています(第8条)。航空自衛隊の達は、報告書を隊員の懲戒処分の証拠などに使用することも禁じています。責任の追及と原因の究明を切り離すこの考え方は、民間航空の国際的な事故調査の原則と同じです。
調査の結果は、報告書の全文ではなく概要が公表されます。全文を公表すると自衛隊の能力などが明らかになるためです。概要が公表されるのは、死亡や機体の破壊を伴う大事故と、民間に被害が出るなど社会的影響の大きい事故です。最近の例を見ると、事故の発生から公表までの期間は、18日から1年余りまでの幅があります(表2)。
表2:自衛隊機の事故調査結果の公表例
| 事故 | 発生 | 公表 | 発生から公表まで |
|---|---|---|---|
| 空自F-35A戦闘機(青森県沖) | 2019年4月9日 | 2019年6月10日 | 約2か月 |
| 陸自スキャンイーグル(種子島沖) | 2021年11月23日 | 2022年8月5日 | 約8か月半 |
| 陸自UH-60JA多用途ヘリ(宮古島沖) | 2023年4月6日 | 2024年3月14日 | 約11か月 |
| 海自SH-60K哨戒ヘリ2機(伊豆諸島沖) | 2024年4月20日 | 2024年7月9日 | 約2か月半 |
| 陸自V-22輸送機(与那国駐屯地) | 2024年10月27日 | 2024年11月14日 | 18日 |
| 空自F-2A戦闘機(茨城県沖) | 2025年8月7日 | 2026年4月24日 | 約8か月半 |
| 空自T-4練習機(愛知県犬山市) | 2025年5月14日 | 2026年7月31日 | 約1年2か月半 |
※出典:航空幕僚監部、陸上幕僚監部、海上幕僚監部の発表。F-35Aは「墜落事故の要因と再発防止策」としての公表。
有人機の事故調査と何が違うのか
筆者が現役だったころ、陸上自衛隊の無人機は、事故の調査や整備の管理のうえで、航空機とは別に扱われていました。その後、2022年12月に事故調査の訓令が改正され、無人航空機の事故も、この調査の枠組みに加えられました。
ただし、無人航空機の事故の定め方は、有人機とは異なります。有人機では、墜落や衝突などで機体が損壊すれば、それだけで航空事故に当たります。これに対し、無人航空機が単独で墜落しても、人の死傷、物の損壊、ほかの航空機との衝突・接触がなければ、航空事故に当たりません。事故の重さを大事故・中事故などに区分する際も、有人機では機体が破壊されれば大事故に当たりますが、無人航空機では機体の損壊の程度を考慮しません(訓令第2条、第2条の4)。
今回の墜落では、人の死傷や物の損壊は報告されていないにもかかわらず、航空事故調査委員会による調査が行われています。航空自衛隊の達は、航空事故に至らない場合でも、任務の遂行に大きな影響や、大きな社会的影響が予想される「事案」については、航空幕僚長の判断で委員会に調査させることができると定めています(第15条)。今回の調査は、この規定によるものとみられます。
調査の方法にも、違いがあります。有人機の重大な事故では、乗員が殉職することが少なくありません。2025年5月に愛知県で墜落したT-4練習機の事故では、搭乗員2名が殉職し、機体に飛行記録装置が搭載されていなかったこともあって、墜落の直接的な原因は特定できませんでした。これに対し、無人機の事故では、操縦者は地上で無事であるのが通常であり、何を見て、どう判断し、どう操作したかを本人から聴取できます。
また、無人機の調査では、地上の操縦席と通信の記録が重要な手がかりとなります。米軍の事故では、通信が途絶したときに機体が自動で行う動作と、操縦者の操作が食い違って墜落した例が報告されています。2023年8月、海上自衛隊鹿屋航空基地(鹿児島県)に展開していた米空軍のMQ-9は、着陸直後に通信が途絶したため、自動で再び離陸しました。直後に通信が回復すると、地上のスロットル(エンジンの出力レバー)が着陸時の位置のままだったため、失速して滑走路に激突しました(米空軍の事故調査報告書)。2021年に陸上自衛隊のスキャンイーグルを喪失した事故でも、通信が途絶した後の自動的な帰投の際に機体を傾ける角度がプログラムの設定上不足しており、強風の影響もあって予定の航路に復帰しきれなかった可能性が高いとされています。
表3:有人機と無人機の事故調査の比較(自衛隊)
| 項目 | 有人機 | 無人機 |
|---|---|---|
| 調査する組織 | 各自衛隊の航空事故調査委員会(運輸安全委員会は調査しない) | 同じ |
| 調査の目的 | 再発防止。隊員の責任の究明は目的としない | 同じ |
| 事故の定め方 | 機体の損壊だけで航空事故。機体が破壊されれば大事故 | 人の死傷、物の損壊、ほかの航空機との衝突・接触があれば航空事故。機体の損壊だけでは航空事故に当たらず、事故の重さの判断でも考慮しない |
| 事故の当事者の証言 | 重大な事故では乗員を失うことが多い | 操縦者は地上におり、証言が得られる |
| 調査の主な手がかり | 機体の飛行記録装置、交信記録、レーダーの航跡 | 地上の操縦席と通信の記録、通信途絶時などに機体が自動で行う動作のプログラム |
| 機体の回収の目的 | 原因の究明と情報保全 | 同じ |
| 製造企業の関与 | 米国から調達した機体などでは、運用・整備・事故調査に製造企業や米側の協力を要する | 同じ |
※出典:「航空事故調査及び報告等に関する訓令」「航空事故の調査及び報告に関する達」、航空幕僚長の記者会見などから筆者作成。
米国製の無人機の事故を、日本はどこまで調査できるのか
グローバルホークは、米国政府から装備を購入する「有償援助調達(FMS)」で調達した機体です。航空幕僚長は、日本だけでの調査が難しい理由として、「グローバルホークは米国製で、情報保全を行わなければいけない箇所が数多くございます」と述べ、「米国政府のみならず、製造元の企業の方についても、しっかりと協力を依頼している」ことを明らかにしました。
FMSでは、設計や製造に関わる技術情報の開示が制限されており、提供された情報も、米国政府の同意なく第三者に渡すことはできません。このため、機体の内部に原因がある場合、その解明は米側に頼らざるを得ません。調査で得られた情報をどこまで公表できるかも、米側との調整に左右される可能性があります。
ただし、米国製の機体だからといって、原因が分からないとは限りません。2019年のF-35Aの事故では、飛行記録装置の記録媒体は発見されませんでしたが、日本はデータリンクの記録やレーダーの航跡などから、操縦者の空間識失調(機体の姿勢や位置の感覚を失う状態)を原因と推定しました。2024年10月に与那国駐屯地で陸上自衛隊のV-22輸送機が損傷した事故では、18日後に、人的な要因による事故であったと公表されています。
なお、グローバルホークの調達には、技術書や技術データの提供に加え、米国政府と契約企業による技術支援・後方支援の役務が含まれています(米議会への売却通知)。三沢基地に駐在する米国企業の役務員も、その一部とみられます。今回の事故調査への米側の協力も、この技術支援の範ちゅうで行われるものと考えられます。
無人機の喪失をどう受け止めるか
訓令が、無人機が単独で墜落しただけでは航空事故としていない趣旨を、無視してはならないと筆者は考えます。人が乗っていない無人機は、機体を失うことも、その特性上あってしかるべきものです。任務を遂行するためには、機体の喪失をことさらに避けるべきではありません。無人機の喪失を有人機の場合と同じように扱えば、運用が消極的になり、その効果を損なうことにもなりかねません。
今回は、大型の無人機として初めての事故であり、残る2機の今後の任務に調査が及ぼす効果が、その負担を上回った、特別な場合と認識すべきでしょう。自衛隊はこれから、海上自衛隊のMQ-9Bシーガーディアンをはじめ、多くの無人機を導入していきます。今回の調査をきっかけとして、無人機の事故調査を無条件に必要なものと考えることは、避けるべきではないでしょうか。
本記事の略語
| 略語 | 英語 | 意味 |
|---|---|---|
| FMS | Foreign Military Sales | 有償援助調達(米国政府が外国に有償で装備を提供する制度) |
| FFRS | Flying Forward Reconnaissance System | 無人偵察機システム(陸上自衛隊のヘリコプター型無人偵察機) |
※この記事は、2026年10月3日時点で公表されていた資料に基づいて執筆したものです。
関連リンク
航空自衛隊|三沢基地所属RQ-4B(グローバルホーク)の墜落について(第7報)
航空自衛隊|空幕長記者会見について(2026年9月29日)
Jディフェンスニュース|空自 偵察用無人機RQ-4Bグローバルホークが鳥取県沖で墜落 機体の捜索・回収を継続(9月25日 第7報まで掲載)
Jディフェンスニュース|森田空幕長が記者会見 グローバルホーク回収、F-15事故、GCAPに言及(9月29日)
防衛省|航空事故調査及び報告等に関する訓令
発行:Aviation Assets 2026年10月3日
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