空の殺傷能力:陸軍UAS訓練の変革

今日、現代戦の様相は紛れもなく変化しています。ウクライナや中東での紛争では、自律システムの普及、高度なセンサー、そして急速に進化する技術の広がりが明らかになりました。米国陸軍は変革を受け入れ、戦闘、訓練、組織、装備の方法において、より無駄なく、殺傷能力と適応力をより高め、戦場での優位性を維持しなければなりません。この喫緊の課題への対応は、国防長官、陸軍長官、陸軍参謀総長の指示に基づいたATI(Army Transformation Initiative、陸軍変革イニシアティブ)によって具体化されつつあります。
2025年4月30日に発表されたATIは、戦闘部隊を優先し、重要装備品の配分に関する権限をその指揮官に与えることを明示しています。そのうえで、重要な戦闘能力の提供、戦力構造の最適化、そして無駄の排除の3つを主要な取り組みとして重視しています。
米国陸軍航空は、この枠組みの中、AVCOE(Aviation Center of Excellence、航空教育研究センター)および訓練・教義部を中核とし、この新時代の要求、特にUAS(Unmanned Aircraft Systems、無人航空機システム)領域における要求に積極的に対応しています。
UAS訓練は、あまりにも長い間、旧式のシステムと技術進歩に対する受動的なアプローチによって制約されてきました。陸軍航空は今、それらの制約を積極的に取り除き、真に殺傷能力の高いUASオペレーターとその運用能力を生み出すための道を切り開こうとしています。単に新しい機種を導入するのではなく、兵士の訓練方法を根本的に変えようとしているのです。
訓練の近代化
この変革の礎となるのは、15W TUAS(Tactical Unmanned Aircraft Systems、戦術無人航空機システム)オペレーターと15E TUAS整備士のための教育訓練の近代化です。従来、これらの課程の学生たちは、RQ-7シャドウ(現在では陸軍から完全に退役した機種)で訓練を受けてきました。基礎的なスキルには共通したものもありますが、訓練の焦点は大きく変わります。
アリゾナ州フォート・ワチューカの第13航空連隊第2大隊では、次世代のTUASに備えるための訓練を進化させるとともに、急速に成長しているSUAS(Small Unmanned Aircraft Systems、小型無人航空機システム)の世界へと専門知識を拡大しようとしています。
現在の15Wと15Eの学生は、スカイディオRQ-28、レッド・キャット・ティール2、PDW C-100、パロット・アナフィのSUAS機に関する基礎的な実地訓練に加えて、SUASシミュレーション・ソフトウェアを搭載したコンピューターを活用した費用対効果の高い飛行訓練や任務予行を行っています。学生たちはまた、3DプリンターによるUAS構成部品の作成や改造の可能性を探り、Orqa FPV(First-Person View、一人称視点)ドローン・シミュレーターを活用した操縦スキルの開発にも取り組んでいます。

今後は、学生たちの訓練対象がアンデュリル・ゴーストXやネロス・アーチャーなど、より広範なSUAS機に拡大される予定です。さらに、より包括的なアプローチを可能にするため、15Wと15Eの両方の課程を13週間延長するIPOI(Initial Program of Instruction、教育課程案)が提出されました。
この拡張されたカリキュラムにより、卒業生は将来のTUASシステムの運用と保守、SUAS運用の習熟、迅速な機体の改修や改造のための3Dプリンティングの活用、そしてFPVドローン運用のスキルの研鑽といった能力を身につけることが可能になります。重要なことは、この新しいPOIが「将来を見越した」設計になっていることです。UASの状況は、常に流動的です。敵は間違いなく米陸軍のシステムへの対抗策を開発し、革新と適応の継続的なサイクルを引き起こします。このため、このカリキュラムはシステムに依存しない基盤の上に構築されており、新しい技術、戦術、能力が出現した際に迅速に修正して統合できる、適応性の高い教授計画を重視しています。我々は学生たちが特定のドローンを操作できるように訓練するのではなく、適応能力のあるUASの専門家になるように訓練しているのです。
現実的かつ厳しい環境でのSUAS運用の要求に備えるため、第13航空連隊第2大隊は、迷彩、掩蔽、隠蔽といった基本的な生存スキルを強調しています。訓練には、兵士が「ハイド・サイト(潜伏場所)」を構築し、空中からのSUASの視点で自身の視認性を確認・評価する実践的な演習が含まれます。この文化的転換は、教育の最終段階で行われる野外訓練演習「Operation Watchdog’s Revenge(番犬の復讐作戦)」でさらに強化されます。この演習では、学生が捜索のためにSUASを利用する一方で、同じ技術を用いる敵対勢力にも直面し、現代の戦場における課題をシミュレートします。
心構えの育成
しかし、単に既存の訓練を拡大するだけでは不十分です。我々は、これらの機種の潜在能力を最大限に活用できる、高度に熟練し、攻撃的な思考のできるUASオペレーターの基幹要員を育成する必要があります。
このため、AVCOEは火力・機動教育研究センターと協力した、画期的なUAS殺傷能力課程(UAS Lethality Course)を開設しようとしています。この3週間の課程は、すでにBUQ(Basic Unmanned Aircraft Systems Qualification、基本無人航空機システム特技)を保有している兵士を対象としており、その兵士の主MOS(Military Occupational Specialty、特技)とは無関係に、陸軍で最も熟練したUASオペレーターを選抜し、訓練することを目的としています。
この課程では、トランスフォーメーション・イン・コンタクト(接敵変革)旅団や第75レンジャー連隊における検討結果、およびウクライナ・ロシア紛争から得られた最善のテクニックに戦術的洞察を加えることにより、学んだ教訓を実用化し、UASの運用教義とオペレーターの習熟度を向上させます。
そのカリキュラムは、次のような高度な攻撃技術に焦点を当てることになります:
- 精密な攻撃: UASを使用して、敵の人員や装備に対して炸裂弾薬を投下する。
- 強化された偵察: UASを活用して、リアルタイムの情報収集、目標識別、建物のクリア、および射撃要求を支援する。
- PBAS(Purpose Built Attritable System、特定目的消耗型システム)の運用: 重要な敵資産に直接的に交戦するFPVドローンの運用に習熟する。
最初のUAS殺傷能力課程は、2025年8月にフォート・ラッカーで開講される予定です。この教育課程は生きたものであり、繰り返すごとに継続的に洗練され、改善されていきます。その展開は段階的に行われる予定であり、地域ごとにUAS殺傷能力課程が開講されます。このアプローチにより、部隊が訓練のために兵士を国内または国外に派遣する必要がなくなり、アクセスの容易性が確保されます。
さらに今後を見据え、アクセス性をさらに向上させるために2つの主要な方法を模索しています。第一に、MTU(Mobile Training Unit、移動訓練部隊)を創設し、教官が部隊を巡回し、その駐屯地で課程教育を提供できるようにしたいと考えています。第二に、TSP(Training Support Package、訓練支援パッケージ)の発行です。これは、課程教育をリモートで実施するための正確な方法を詳述した正式文書です。これにより、資格を有する兵士が独立して訓練を実施できるようになり、この重要な能力の到達範囲の拡大が図られます。
我々の目前には、大きな課題が立ちはだかっています。技術の進歩に遅れないためには、絶え間なく警戒し、それに適応し続けなければなりません。しかし、陸軍航空はこの課題に正面から取り組むことを約束します。革新を受け入れ、殺傷能力を重視し、兵士の訓練に投資することで、陸軍航空が現代戦の最前線にあり続け、我が国が要求する決定的な優位性を提供できることを保証します。そのために必要なのは、単に新しい技術を導入することではなく、空を支配し、紛争の未来を形作ることのできる新世代のUAS専門家を育成することなのです。
ショーン・キーフ大佐はAVCOEのDOTD(Directorate of Training and Doctrine、訓練・教義部)部長であり、フィリップ・フルーク大尉はアビエーション・ダイジェストの研究顧問兼編集長です。両者ともアラバマ州ラッカー駐屯地に配属されています。
出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2025年07月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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1件のコメント
これからのUASは消耗品です。
UASに関する航空科職種の主要な役割は教育訓練なのかもしれません。