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ロングボウ・パイロットがアフガニスタンにおける勇敢な行動によりフライング・クロス賞を受賞

編集者注:以下の記事は、ラーン准尉に対するフライング・クロス賞の推薦状からの抜粋である。本資料を提供してくれた第159航空連隊第3大隊長フォーリン中佐に謝意を表する。

12月11日、上級准尉フィリップ・ラーンは、2005年12月4日のアフガニスタン山中での交戦における自らの危険を顧みない勇敢な行為により、フライング・クロス賞を授与された。
 ラーン准尉は、第6騎兵連隊第2飛行大隊C隊所属のAH-64Dロングボウ・アタック・ヘリコプター(コードネーム:ファントム32)の機長として飛行任務を遂行していた。
 彼の任務は、2機編隊のCH-47Dチヌーク・ヘリコプター(コードネーム:ムスタング11及びムスタング12)の2番機であるムスタング12を同行掩護し、じ後、LZまで誘導することであった。編隊は、シュルナルツ渓谷の北側に沿って推進し、最初にLZホテル(H)に着陸し、次にLZジュリエット(J)に着陸する予定であった。
 LZホテルへの着陸を無事に完了し、LZジュリエットへ向けて飛行していたところ、突然、ムスタング11がRPG及び小火器の攻撃を受けて炎上した。このため、ラーン准尉は、LZジュリエットへの推進中止をムスタング12に指示した。
 炎に包まれたムスタング11は、谷底に緊急着陸したが、そこは敵が占領している高地に囲まれた場所であったため、あらゆる方向から攻撃を受け始めた。ムスタング11に搭乗していた34名の兵士は、機外に飛び出したものの、敵の攻撃により身動きできない状態に陥った。
 空中部隊指揮官の「SAM発見!」という無線により、編隊はブレークしたが、敵は、錯雑した地形を利用した陣地から、大量のRPGを執拗に発射し続けていた。
 この時、ラーン准尉は、ムスタング11がわずか75mしか離れていない対岸から敵民兵の攻撃を受けていることを発見した。ラーン准尉は、自分自身で状況判断を実施し、自らもRPGの攻撃を受けているにもかかわらず、攻撃中の敵を制圧・撃退することを決心した。
 ラーン准尉は、まず、ほんの数秒の間に5名の敵を倒した、その後、左方向に旋回して、再攻撃の態勢をとった。機体の下方を2発のRPGが通過したが、攻撃を続行し、さらに3名の敵を倒した。それでも敵の射撃がやまなかったため、さらにもう一度攻撃を加えた。これら3回の攻撃により、ムスタング11の搭乗員及びヘリボン部隊は全滅を免れた。
 さらに2発のRPGの発射を確認したラーン准尉は、その陣地に向かって注意深く接近し、30mmチェーン・ガンで3名の敵を倒した。
 その時、聞き覚えのある声が救難無線機から聞こえてきた。 それは、ムスタング11のパイロットの声であった。この時、ムスタング11の搭乗員達は、カナダ軍特殊作戦部隊と合流して西側稜線上に位置していた。
 一方、ムスタング11に搭乗していたヘリボン部隊(コードネーム:ストーン16A)は、同じく西側稜線上の敵に対する攻撃を開始していた。ラーン准尉は、ストーン16Aに対し、友軍が同じ稜線上に位置しているという情報を提供した。 このラーン准尉の適切な処置により、相互に通信を確保できていない地上部隊同士の友軍相撃という、最悪の事態が回避されたのである。ラーン准尉は、その後も危険を覚悟の上で低高度・低速での偵察飛行を続行し、敵情の把握と友軍相撃の発生防止に努めた。
 ストーン16Aから西側稜線上の敵民兵の位置について情報を得たラーン准尉は、その位置に向けて2発のロケットを発射し、左に旋回した。 着弾を確認したストーン16Aが、「引き50、左へ50。」と修正を指示した。その直後、ストーン16Aが叫んだ。 「ファントム、こちらストーン16A、6時方向の建物からRPG!」ラーン准尉は、直ちに機体をその方向に向け、ロケット攻撃により敵を鎮圧した。

その後も、ラーン准尉は、反対側の東側の稜線に対し2回の攻撃を実施し、敵民兵の動きを封じた。この援護射撃のもと、カナダ軍特殊作戦部隊が高地を奪取することに成功した。
 ラーン准尉のこれら一連の行動は、極めて困難な状況のもと、命を懸けた大胆不敵な攻撃により主動性を奪回し、カナダ軍特殊作戦部隊及びムスタング11の生命を救ったものであり、全戦士に対する模範的行動であったと認められる。

准尉は、現在、第12戦闘航空旅団第159航空連隊第3大隊(戦闘-偵察)B中隊において、インストラクター・パイロットとして勤務している。

           

出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2006年12月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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