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陸軍航空の情報センター

2025会計年度を振り返って

2025会計年度において、陸軍航空は6件のクラスA事故を経験した。これは2024会計年度の15件よりも減少しており、事故率も過去5年平均の1.0を下回った。2025会計年度の有人クラスA飛行事故率は、10万飛行時間あたり0.66であった(図1)。これは、陸軍航空の記録史上、3番目に良好なクラスA飛行事故率である。

図1:2025会計年度終了時の状況

2023会計年度末から顕在化し2024会計年度まで続いた、予期せぬ右機首振れ/テールローター効力の喪失トレーニングにおける訓練の欠落を是正したことにより、クラスA飛行事故率は10万飛行時間あたり1.0未満に戻った。陸軍航空における組織的な訓練の欠落を早期に特定することは極めて重要である。部隊レベルで訓練の不備を特定し是正するための適切な中堅レベルの経験がなければ、組織的な訓練の欠落は過去数年よりもさらに顕在化する可能性がある(未熟者が未熟者を教えている状態)。

現在、10.33というクラスA~C飛行事故率の主な要因は、クラスC飛行事故である(図2)。懸念すべきなのは、これらのクラスC飛行事故の多くは、ほんの数インチ、数秒の差、あるいはたった一つの手順の見落としによってクラスA事故になり得るものであり、飛行時間が減少しているにもかかわらず過去3年間毎年増加していることである。

図2:2025会計年度のクラスC飛行事故率

米陸軍戦闘即応センター・事故調査および対策部局・航空部(U.S. Army Combat Readiness Center Directorate of Analysis and Prevention Aviation Division)は、有人航空機のクラスC事故率の上昇は、技量/パフォーマンスに基づくエラーや判断ミスとして現れる中堅パイロットの経験不足(図3)が複合したものであるとしている。

クラスAの不安全行動を検証した結果、上位3つは以下のとおりであった:(1)航空機の過剰操作/操作不足、(2)不適切なリアルタイムの危険見積(リスク・アセスメント)、(3)変化する環境の誤認(図4)。さらに、2025会計年度における主要なクラスCの不安全行動は、手順またはチェックリストの不履行であった。

これらの不安全行動は、陸軍のパイロットの経験不足によるものと考えられ、段階的(這う、歩く、走る)訓練をより適切に促進し、フライト・スケジュールの混乱を減らすための訓練管理の改善が必要であることを示唆している。

航空部の評価によると、正規の訓練および部隊の訓練管理プログラムにおける欠陥は、事故の傾向を助長する重大な前兆であり、正規の訓練の例としては、前述の予期せぬ右機首振れ/テールローター効力の喪失トレーニングの欠落が挙げられる。これに対処するため、指揮官は任務実行の前に、クルーの準備、計画、訓練のための十分な時間を確保する必要がある。

鍵となるのは訓練管理であり、リスク軽減プロセスにおいて最も軽視されているステップの一つが、ステップ1「当初任務承認」(次週の任務計画の承認)である。AR (Army Regulation, 陸軍規則) 95-1には次のように記載されている:

「当初任務承認権者は、指揮官の方針および手順に従い、以下の要因のいくつかを考慮して任務を承認する:部隊の練度段階区分表との整合性、航空機の所要および可動状況、必要な特殊任務装備の可用性、訓練された航空搭乗員の可用性、その他の訓練および任務への影響、戦術および脅威に関する考慮事項など。このステップは、特定の飛行運用に関する詳細な要因および危険見積(リスク・アセスメント)ではなく、むしろ任務を遂行するための部隊の能力評価である。」

このステップは当たり障りのないものに見えるが、シンクレティゼーション(融合)、タスク・デコンフリクション(競合解消)、およびリーダーシップによる監督を通じて、その週の適切な基調を定める上で重要な役割を果たす可能性がある。承認されたフライト・スケジュールによって、実行週の前に任務を事前に通知できれば、教官操縦士は訓練時間を最大化でき、整備員は作業により集中でき、クルーは任務をより良く計画できるようになり、フライト・スケジュールの混乱を減少させ、より安全な実行を可能にするのである。

図3-1:過去の回転翼機飛行時間の会計年度ごとの集計(現役陸軍全体のパイロットが保有する「総飛行時間(経験の総量)」の推移を示したもの)
図3-2:回転翼機飛行時間に基づくリスクレベル比較の会計年度ごとの集計(パイロットを「飛行時間の多寡(経験レベル)」によって分類し、その構成比率の変化を示したもの)
図4:2025会計年度の主要な人的要因による不安全行動

訳者注:米国の会計年度の開始は10月、終了は9月であり、終了時の年で呼ばれます。また、米国陸軍の航空事故区分の概要は、次のとおりです(AR 385-10、2023年改正)。
クラスA- 250万ドル以上の損害、航空機の破壊、遺失若しくは放棄、死亡、又は完全な身体障害に至る傷害若しくは公務上の疾病を伴う事故
クラスB- 60万ドル以上250万ドル未満の損害、部分的な身体障害に至る傷害若しくは公務上の疾病、又は3人以上の入院を伴う事故
クラスC- 6万ドル以上60万ドル未満の損害又は1日以上の休養を要する傷害若しくは公務上の疾病を伴う事故
クラスD- 2万5千ドル以上6万ドル未満の損害、又は職務に影響を及ぼす傷害若しくは疾病等を伴う事故
クラスE- 5千ドル以上2万5千ドル未満の損害を伴う事故

クラスF- 回避不可能なエンジン内外の異物によるエンジン(APUを除く)の損傷
クラスG- 生物学事故
クラスH- 化学事故

                               

出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2025年12月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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