航空事故回願-AH-64D地上運転中の事故
地上滑走に移行するための準備を行っていたAH-64Dが、左方向135度への制御不能の旋回(テールの右方向への振れ)に陥り、洗機場の縁石に衝突した後、駐機中の他機と接触した。
飛行の経過
当該機の任務は、訓練演習を支援する搭乗員が到着する前に、飛行前点検、地上試運転およびエンジン性能の確認(HITチェック)を実施し、支援準備を完了することであった。天候:スキャッタード(千切れ雲)1,800フィート、穏やかな風、気温摂氏30℃、気圧高度29.81インチであった。当該任務の実施は、口頭により中隊長の承認を受けていた。リスク評価ワークシートは記載されておらず、ブリーフィングも実施されていなかった。
当日の勤務は、現地時間0330に開始され、訓練演習を支援するための飛行準備を開始した。現地時間0900、当該機の搭乗員が実施予定だった任務が中止になった。現地時間0950、当該機の搭乗員は、別の搭乗員が使用する航空機に向かい、その飛行準備を開始した。
地上試運転中、機付長がテール・ホイールがアンロック状態で、真っすぐになっていないことを報告した。機長(Pilot in Command, PC)は、機体を一旦後退させた後、前進させながらテール・ホイールのロックを試みる、と答えた。現地時間1006、機体を後退させようとしてPCがサイクリックを引いたところ、機体が左方向に旋回し始めた。機体は、左方向135度への制御不能の旋回に陥り、洗機場の縁石に衝突した後、駐機中の他機と接触した。当該機は大破し、他の9機の機体が損傷した。また、1名の人員が軽症を負った。
搭乗員の練度
後方座席に搭乗していたPCは、総飛行時間628時間、AH-64Dで537時間、機長として196時間の経験を有していた。前席に搭乗していたPI(Co-Pilot, 副操縦士)は、総飛行時間287時間、AH-64Dで203時間の経験を有していた。
考 察
機体の機首方位(ヘディング)をペダルでコントロールする場合、操縦しているパイロットは、旋回速度(ヨー)を適切に維持できるようにペダルを操作(ペダル・インプット)しなければならない。機体を旋回させる際には、必要に応じ、横方向にサイクリックを操作して胴体の水平姿勢を維持しつつ、左または右のペダルを使用しなければならない。旋回速度の調整は、アンチ・トルク・ペダルへの圧力を加減することにより行う。テール・ホイールがアンロック状態にある場合には、ペダルで機体のヘディングを制御しつつ、サイクリックで機体を水平に維持しなければならない。注意:テール・ホイールがアンロック状態のまま、後退した場合、テール・ホイールのトレーディング・アームが180°旋回し、瞬間的にヘデングが不安定になる可能性がある。テール・ホイール・カムに過大な負荷が加わるため、ホイールが急激に旋回しないように注意すること。
なお、駐機スポットおよび洗機場や整備区画などは、UFC(Unified Facilities Codes, 統一施設規格)に準拠して設置するしなければならない。UFCの規格によりがたい場合は、正規の手続に従い、危険見積および対策を含む文書を作成することが必要である。
出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness/Safety Center 2017年03月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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1件のコメント
本事故は、テール・ホイールがアンロック状態で駐機されていたということも要因のひとつだと思うのですが...それに言及しないのが、米国らしいところですね。