航空事故発生状況:AH-64D整備エラー


概要
当該AH-64Dは援護任務を実施中であった。任務開始から11分後、激しい振動とともに、急激な降下を伴う左への機首振れおよび機首下げ状態が発生した。搭乗員は水平姿勢を確立し、降下を制御しながら滑走着陸することができた。ハード・ランディングにより機体は大きく損傷したが、搭乗員に負傷はなかった。
飛行の経緯
事故機の搭乗員は、0900に朝のブリーフィングを実施し、続いて敵情および気象に関する最新情報の確認、機体の準備、搭乗員ブリーフィングを行った。1233、2機のAH-64Dで構成される攻撃チームは、割り当てられた援護任務を遂行するため、前方運用基地(Forward Operating Base, FOB)を離陸した。1244、事故機が真対気速度約85ノット(時速157キロメートル)、平均海面高度11,300フィート(約3,444メートル)/対地高度3,000フィート(約914メートル)で飛行中、突然激しい振動が発生し、続いて左への機首振れと機首下げが生じた。搭乗員は、機体を制御しながら不整地への不時着に成功し、機体は大きく損傷したものの負傷者は発生しなかった。
この激しい振動は、ピッチ・コントロール・リンク(pitch control link, PC link)の下部ロッド・エンド・ベアリングの破損によって生じたものであることが判明した。このベアリングのアウターリングのかしめ(ステーキング)が外れたことでベアリングとロッドエンドとの固定が失われたため、ロッドエンドがスワッシュプレート(回転側)に接触しながら作動する状態になった。ロッドエンドとスワッシュプレートとの異常接触による摩耗(かじり)が進んだ結果、下部ベアリングは可動性を失って固着した。上部ベアリングにはそのねじれ(トーション)荷重を逃がせるだけの可動域がなかったため、ピッチ・コントロール・リンクはねじれにより破断した。
搭乗員の飛行経験
後席に搭乗していた機長(Pilot in Command, PC)は、総飛行時間900時間以上、うち戦闘飛行時間500時間以上、戦場での飛行時間16時間を有していた。副操縦士は飛行時間960時間、うち戦闘飛行時間580時間、戦場での飛行時間38時間を有していた。
考察
調査の結果、整備手順の誤りにより、使用不能の疑いがある部品が機体に取り付けられていたことが判明した。問題となったピッチ・コントロール・リンクは、事故の1年以上前に他の機体から取り外されており、DA Form 2410(陸軍様式2410)には故障コード710(ベアリングまたはブッシュの故障)が記載されていた。整備を担当する航空野整備(Aviation Intermediate Maintenance, AVIM)部隊において、当該ピッチ・コントロール・リンクは修理工場に運ばれた。
しかし、修理工場での作業において、この故障部品に対する実質的な修理が行われず、または不十分にとどまったと考えられる。それにもかかわらず、技術検査員(Technical Inspector, TI)が黄色タグ(使用可)を押印し、当該部品は「修理完了・使用可」と見做される状態となった。一方、修理実施を示すDA Form 2410には記録されなかった。結果的にこの部品は、「修理済み」と表示される一方で、実際には故障状態のままテクニカル・サプライ(Tech Supply)システムに還元されたと考えられる。
その後、当該ピッチ・コントロール・リンクが事故機に取り付けられ、取り付けから144時間後にベアリングが破損した。品質管理(Quality Control, QC)担当者は、機体への取り付け前に当該部品の使用可否を適切に確認していなかった。必要な整備および点検が期限内かつ適切な基準で確実に完了していることを保証するためには、すべての整備記録を正確に維持することが極めて重要である。本件においては、修理工場での不十分な修理対応と記録更新の怠慢により、故障状態の部品が機体に取り付けられ、重大な事故につながる結果となった。
本稿で示される見解は、特に断りのない限り執筆者個人のものであり、陸軍省の公式見解を示すものではありません。
出典:AH-64D Maintenance Error, FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2011年08月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
アクセス回数:66