AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

航空事故発生状況 – AH-64E 昼間の機種転換訓練

写真:US Army https://www.army.mil/article/137579/ah_64e_apache_attack_helicopter
(訳者が添付したもの。原文に写真は掲載されていません。)

AH-64Eで昼間の機種転換訓練飛行を実施中、副操縦士が遮光カーテンを使用してパイロット席に搭乗し、教官操縦士がガナー席に搭乗している状況において、ヨー軸のバックアップ・コントロール・システム(BUCS)が不時作動した。

発生状況

当該機の任務は、学生である副操縦士の70日目の訓練であり、昼間の低高度でのトラフィック・パターン飛行などが行われることになっていた。森林の上端から約40〜50フィート上空を約10ノットの速度でベース・レグに向けて左旋回していたところ、機体が左スピンに入った。その後は、スピンの速度を増しながら森林の中に向けて墜落し、機首を下に向けた状態で停止した。

事故発生前の状況

事故発生の前日、搭乗員たちは翌日の1000に予定されている評価飛行の任務計画を立案した。危険見積ワークシート(RAW)に基づいたブリーフィングが実施され、当該任務は低リスクの訓練任務として承認された。機長は、有効な資格を有するAH-64E教官操縦士であり、教官業務に従事していた。副操縦士は、AH-64Eの機種転換訓練を完了しつつある学生操縦士だった。搭乗員たちは、事故当日の1000から1300までの間に任務前計画の最終確認、機体の飛行前点検、および搭乗員ブリーフィングを完了し、1310に離陸した。

事故発生時の状況

離陸した事故機は、近傍の訓練区域での訓練の実施を要求した。管制塔は事故機に訓練区域への直行を許可した。事故機は1317頃に訓練区域に着陸した。その後、1317から1323までの間、ホバリング訓練を実施した。1323に事故機の搭乗員は訓練および評価飛行を再開した。1326頃、事故機は訓練区域から北西方向に離陸し、左旋回を行って南側のトラフィック・パターンに入った。トラフィック・パターンを飛行中、バックアップ・コントロール・システムが不時作動し、訓練区域南東の森林地帯に墜落した。事故機は高い降下率でほぼ垂直に森林地帯の地面に墜落し、機首を下げた姿勢で停止した。墜落の衝撃ですべてのメイン・ローター・ブレードが破壊され、胴体にも大きな損傷が生じた。教官操縦士はガナー席に留まったままの状態で致命傷を負った。副操縦士は軽傷を負ったものの、自力で脱出することができた。

事故発生後の処置

事故機の副操縦士は個人の携帯電話を使用して911に通報した。当該訓練区域を管轄する公安局は直ちに救急隊を現場に派遣するとともに、航空事故救助隊に航空医療後送を要請した。事故の通報を受けた管制塔は、付近にいたAH-64Eに事故機の捜索、発生現場のグリッド座標の把握、および救急隊員の誘導を指示した。1355、当該訓練区域を管轄する消防署とフォート・ノボセル憲兵隊の初動対応チームが現場に到着した。

搭乗員の練度

機長の AH-64Eでの飛行時間は2,990時間、教官操縦士としての飛行時間は1,230.4時間であった。副操縦士のAH-64Eでの飛行時間は43.3時間、総飛行時間は115.5時間であった。

コメント

この航空事故は、過去4年間で3回目のAH-64の機種転換訓練中の事故となった。 これらの事故においては、いずれも、ガナー座に搭乗していた教官操縦士が、バックアップ・コントロール・システムの不時作動を把握するのが遅れ、機体の制御を失い、その損傷をもたらしている。これらの事故により、3名の負傷者と1名の死者が発生し、2機のAH-64Eヘリコプターが破壊され、その損失額は6000万ドルを超えている。

AH-64シリーズの搭乗員訓練マニュアルの夜間暗視システムの項には、以下の考慮事項が記載されている。「ホバリング・ターンを行う前に、操縦士は所望の機首方位に到達するまでフォース・トリムを一時的に解除すべきである。これは、アンチトルク・ペダルの操作によってフォース・トリムをオーバーライドした際に発生する可能性のある、望ましくないまたは予期せぬヨー・レートの発生を防止するためである。」AH-64Eの運用マニュアル(TM 1-1520-251-10-2)にも記載されているとおり、フォース・トリムの操作方法として推奨されるのは、フォース・トリム・リリース・ボタンを3秒間押し続けることである。 そうすることで安定性増大装置が再度センタリングされ、大気の乱れに対する安定性をより高く確保できるようになる。

                               

出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2024年12月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

アクセス回数:173

コメント投稿フォーム

  入力したコメントを修正・削除したい場合やメールアドレスを通知したい場合は、<お問い合わせ>フォームからご連絡ください。