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陸軍航空の情報センター


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砂塵/雪煙環境下での離着陸テクニック

軍属 ビル・トンプキンス
AH-64D/E訓練担当操縦士及び教官操縦士、UH-72訓練担当操縦士及び教官操縦士
評価標準化局無人航空機標準化特命技術者

雪煙および砂塵環境下での着陸について考える場合に、まず、最初にお勧めするのは、それらの環境下における考慮事項について、搭乗員訓練マニュアルに記載されているタスクを確認することです。そこには、それに関連する実績のあるテクニックも記載されていますが、他の書物と同じく、すべての状況を完全に網羅したものとはなっていません。これから、40年間にわたって、複数の機種で砂塵や雪煙の中を飛行してきた私が、生き残るために身に着けてきたテクニックのうちのいくつかを簡単に紹介します。離着陸を成功させるための手法は、ブラウンアウトでも、ホワイトアウトでも、基本的には同じです。いずれの場合でも、地表面の視覚的補助目標を失った状態での着陸が、最も困難であるということに異を唱える人はいないでしょう。

着陸の最中に地面を見失うというのは、実に恐ろしいことです。ただし、他の試練と同じですが、雪煙や砂塵環境下での着陸も、何度も成功を繰り返すうちに、その恐怖が薄らいでゆくものです。この恐怖を克服するためには、実践あるのみです。
DVE(Degraded Visual Environment, 悪視程環境)における墜落事故が多く発生するのは、着陸しようとしている時ではありません。事故の発生状況を正しく把握・考察すれば、着陸しようとしたものの、怖くなってしまい、着陸復行しようとした際に発生する場合が多いことがわかります。ですから、私の最初のアドバイスは、「LZ(landing zone, 降着地域)を戦術的状況が許す限り詳細に偵察できたならば、地面へのアプローチを断行する」ということです。ここで強調したいのは、「地面へ!」ということです。

根本的な問題点

DVEでの着陸失敗に関する根本的な問題点は、「地面へのアプローチを断行できないことだ」と私は思っています。この問題の源は、アメリカ陸軍航空教育研究センター(United States Army Aviation Center of Excellence, USAACE)での教育にあります。初級から上級資格までのすべての教育において、学生パイロットたちは、アプローチをホバリングで終了しているのです。誰かが彼らにそうするように教えているようなのですが、私はそれをやめてもらいたいと思っています。ホバリングでアプローチを終了する方が簡単だとは思いますが、「簡単」な方法ではスキルを向上させることができないのです。私が推奨するのは、「すべてのアプローチにおいて、やむを得ない理由がない限り、地面まで(LZの地面上のあるポイントまで)アプローチする」ということです。地面が見える時であっても、DVEアプローチとタッチダウンのテクニックを磨くべきなのです。私は、これを「習慣の積極的変換(positive habit transfer)」と呼んでいます。搭乗員訓練マニュアルに砂塵や雪煙環境での考慮事項として記載されているとおり、パイロットは、スムーズに着陸することではなく、安全に地面に着陸することに集中すべきなのです。

問題点

経験の浅いパイロットと一緒にDVE着陸を行ったときに見られる問題点は、彼らが遅すぎたり、早すぎたりする傾向があることです。それは対地速度と降下率の点においてです。対地高度約30フィートでホバリングに移行してしまうと、雪煙や砂塵の雲に飲み込まれしまいます。有効転移揚力が得られる最低高度にあたるこの高度は、毎分300〜500フィートの降下率で通過すべきです。また、それと同時にパワー・チェックを行う必要があります。そのパワーが5フィート・ホバリングに必要なパワー以上である場合、どうすべきでしょうか? そのまま地面に向かうわけにはいかないでしょう。

機体が地面に到達するまでの間、ウイング・レベルを維持する必要があります。一方、前進速度がある状態で着陸することが予想され、滑走着陸することが適切でない場合には、減速することをためらってはなりません。戦術的状況が許せば、ゴー・アラウンドを計画的に実施して、アプローチを予行することもひとつの方法です。高高度山岳環境訓練(High Altitude Mountain Environmental Training, HAMET)課程で教わるのと同じ要領で、安全が確保できる限り、できるだけ低い高度まで、できるだけ低い速度で所望の接地ポイントに向かって予行アプローチを行います。そうすることにより、雪煙/砂塵の雲の濃度や、地表の風がそれに及ぼす影響などをより正確に把握できるのです。

私がDVE着陸の訓練を行う場合には、常にゴー・アラウンドを反復した後に行うようにしています。ゴー・アラウンド訓練においては、低高度まで低速でアプローチ(対地高度約5フィート以上を推奨)し、雲に完全に巻き込まれてから、ゴー・アラウンドします。先ほど言ったことを思い出してください。事故が発生するのは、このゴー・アラウンドの時です。このため、制御され、予想された状況の中でそれを訓練するのが効果的なのです。雪煙の中を着陸する際には、雪が岩、木の切り株、丸太、溝などを覆い隠す場合があることも考慮事項に加える必要があります。

高高度山岳環境訓練では教育されるが搭乗員訓練マニュアルには記載されていない、最後のテクニックは、「タッチダウン・ポイントを選択するときに、ダウンウォッシュで吹き飛ばされない物体を見つけ、着陸するための視覚的補助目標として使う」ということです。可能であれば、ローター圏内に位置する岩または茂みを見つけだし、安全上問題のない限り、できるだけそれに近い場所に着陸します。その物体をローター圏内に保つことにより、雲が生じた後でも見えなくなる可能性を低くすることができるのです。小さな木を利用する場合は、ローターをフラットピッチにしても、ローター・ディスクの下に収まる高さであることを必ず確認してください。私が掩護していた航空機が、この確認をしていなかったために失敗してしまったことがありました。

次に、簡単な部分に移りましょう。離陸です。私が最初に勧めることは、「自分の前を見る」ということです。そこに何があるのかを確認してください。そして、それを覚えてください。頭の中で写真を撮り、離陸ルートと緊急時対応計画を検討します。次に、搭乗員訓練マニュアルに従って、パワーを増加します。雪上から離陸する場合は、最初はゆっくりとパワーを増加させるようにして、ホイールやスキッドが地面に凍り付いたり、見えない物体に引っかかっていたりしないことを確認すべきです。着陸時に突き破った凍結層に引っかかり、予期せぬロール姿勢の変化が引き起こされる可能性があります。地面から離れたことを確認したら、地面効果外(OGE)または最大利用可能トルク出力を維持します。前方に障害物がない場合は、地面から離れたら、高度を確保するよりも、迅速に速度に転移させることを推奨します。クルー・コーディネーションを適切にして、昇降計が正しい(上昇)方向を示してことを確認することも重要です。着陸とおなじく、効果的な反復訓練が成功への鍵です。

終わりに

最後に、搭乗員訓練マニュアルで雪/砂/ほこりに関する考慮事項を確認することを再度お勧めします。深い雪は、一旦溶けてから再度凍結することを繰り返しているため、接地時にホイールまたはスキッドが複数の硬い層を突き破らなければなりません。その際、すべての層を一度に突き破ることができず、着陸後に機体が突然大きく傾く可能性があります。雪上に着陸するときは、タッチダウン・ポイントの偵察を徹底的に行うことが推奨されます。ホバリングにより雪を吹き飛ばすテクニックは、非常に有効ですが、凍結した層により隠された物体がまだ存在する可能性があることに注意してください。

こういったテクニックには、機種によって効果に差があるかもしれませんが、ここで私が紹介したものは、過去40年間、UH-1HからAH-64Eまでのすべての機種でうまく機能してきたものです。そして、何より重要なのは訓練です! 訓練しない限り、雪煙や砂塵環境下での着陸が上手くなることはありません。効果的な訓練のためには、実際のホワイトアウトやブラウンアウト状態で訓練を行うことが必要です。そうでなければ、DVEでの作戦遂行能力の向上は望めません。過去に2、3か所の場所で、罪のない操縦教官たちが、ブラウンアウトやホワイトアウトの訓練を「展示」してくれるのを見たことがありますが、ローターディスクの下の地面はもちろん、地平線の視覚的補助目標までもが見える状態で行われていました。

指揮官は、即応性の維持のために重要な役割を担っています。その役割のひとつに、「搭乗員が練度を獲得・維持するために必要な時間や器材の確保」があります。一般のパイロットに対する訓練を始める前に、教官操縦士と訓練担当操縦士のスキルを磨かなければなりません。他の多くのタスクも同じように、砂塵や雪煙環境下での着陸についても、教官操縦士と訓練担当操縦士にそのスキルを研ぎ澄ます時間を与え、自信をつけさせる必要があります。教官などに実飛行訓練を行う機会を与えないまま、高いスキルレベルの維持を期待する指揮官が多く見られます。その結果、戦術的方法論と兵器に関しては高度なスキルを備えているものの、航空機を飛ばす能力は平均以下という教官たちが生まれてしまっているのです。最後に、これらの技術をもって戦場で航空機を「飛ばす」だけでなく、他の人にそれを「教える」ことも重要なのですが、その話は、別の記事のために取っておくことにしましょう。Fly Safe!(ご安全に!)

                               

出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2020年11月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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3件のコメント

  1. 管理人 より:

    操縦に関しては素人の私ですが、DVEでの着陸を地上から見ていて思ったのは、この記事の「根本的問題点」に書かれている事項でした。

  2. 管理人 より:

    特に操縦関連の訳語については、不適切なものがあるかもしれません。
    ご指摘いただけると助かります。

  3. 管理人 より:

    こちらも、併せてお読みいただければと思います。
    ブラウンアウト・ランディングの習得