不安全報告 – LUH-72のサイクリック操作制限

LUH-72 ラコタがナイト・ビジョン・ゴーグル(NVG)使用下での通常の夜間訓練任務中、操縦装置の操作制限による航空不安全が発生した。
低高度ホバリング中、操縦を行っていた副操縦士はサイクリックを右に動かすことができなくなった。自分の操縦装置だけの問題かどうかを確認するため、機長に操縦装置の作動を確認するよう伝えた。それを行おうとしていた最中に機体が左側にドリフトし始め、修正が困難になった。危険が差し迫ったことを認識した機長は、前進飛行への移行を決断し、機体の制御を取り戻した。搭乗員が点検したところ、iPadがサイクリックとセンター・コンソールの間に挟まって、操縦装置の操作を妨げていたことが判明した。
不安全の概要
本不安全は、低照度条件下での夜間の練成訓練中に発生した。LUH-72が低高度ホバリングを行っていると、突然、サイクリック・コントロールの操作が制限され、特に右への操作ができなくなった。このため、地面近くで制御不能な左側へのドリフトが発生し、地面に接触してダイナミック・ロールオーバーが発生するという重大なリスクが生じた。状況が深刻であると判断した機長は、直ちに対応し、機体を前進飛行へ移行させ、空気力学的な力によって制御を回復した。
機体が安定すると、搭乗員はサイクリックの操作が制限されている原因を特定するため、トラブル・シューティングを開始した。懐中電灯でコックピットを照らすと、機長のニー・ボードからずれ落ちたiPadがサイクリックとセンター・コンソールの間に挟まっているのが発見された。障害物を取り除くと、サイクリックは完全に操作できるようになり、無事に基地に帰還することができた。
人員の負傷や機材の損傷はなかったが、この不安全はコックピットの整理整頓、状況把握、および航空運用における人的要因に関し、重要な安全上の問題を浮き彫りにした。航空搭乗員の迅速な判断と決断力のある行動により、壊滅的な事故の発生は回避された。
防止対策
同様の事案が再発するリスクを軽減するためには、コックピットの整理整頓や飛行安全手順を見直し、改善する必要がある。主要な予防措置は以下のとおりである。
- コックピット内の規律維持および装備品の固定:
- 離陸前には、電子機器、チェック・リストなどの任務に必要な装備品が適切に収納されていることを確認する必要がある。
- 個人用電子機器は、指定された収納場所に固定し、飛行中に移動するのを防止しなければならない。
- 離陸前および飛行中の異物(FOD)チェックの励行:
- 離陸前点検時には、異物を特定・除去するため、コックピットの徹底的な検査を行う必要がある。
- 飛行中にNVG対応照明を使って定期的に点検することは、問題が発生する前に潜在的な障害物を発見するのに有効である。
- 標準化された機器取付け手順の遵守:
- iPadなどの電子機器は、重要な操縦制御部に不意に移動するのを防止するため、認可された取付け要領で固定しなければならない。
- 緊急時の状況判断能力の強化:
- ホバリングで問題を修正しようとせずに、前進飛行に移行した機長の決断は、着陸が安全な選択肢ではなかった本状況において事故を回避する上で極めて重要であった。
- 航空搭乗員の緊急事態における迅速な状況判断能力を向上させるため、定期的な訓練が実施されるべきである。
- 安全ブリーフィングおよびクルー訓練の実施:
- すべての航空搭乗員は、コックピットの規律とFOD防止に関する定期的な安全ブリーフィングに参加すべきである。
- 訓練においては、学んだ教訓を強化し、リスク軽減戦略を向上させるため、実際の不安全事例に基づく想定を使用すべきである。
結論
この不安全事例は、コックピットの規律を維持すること、離陸前点検を徹底すること、そして効果的なFOD防止措置を講じることがいかに重要であるかを浮き彫りにした。壊滅的な事故の発生を防いだのは、航空搭乗員の迅速な判断と決断力のある行動であった。航空機の運航における安全性を向上させるため、この不安全から得られた教訓は、飛行訓練プログラムおよび運航リスク管理(ORM)にも反映されるべきである。
出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2025年05月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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1件のコメント
「我々は機内でiPodなんて使わないから問題ない」と思ったあなた。
それはそれで別な問題があるような気がします。