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陸軍航空の情報センター

航空事故発生状況-AH-64Eバード・ストライク

軍属 ダナ・R・ブリューワー
アメリカ陸軍戦闘即応センター分析・防止部局航空部

対地高度1,000フィートで訓練飛行を行っていたAH-64Eがバード・ストライクを受け、機体の制御が困難となり、テール・ローターが飛散してハード・ランディングした。

発生状況

搭乗員訓練マニュアル(Aircrew Training Manual, 搭乗員訓練マニュアル)に基づいたタスクを実施中、当該AH-64Eは鳥と衝突した。鳥はテール・ローターに衝突し、そのローター・バランスに狂いが生じた。3秒後、テール・ローターが機体から飛散した。機体はピッチを下げ、左にロールし、右にヨーイングした。

搭乗員は、機体を開かつ地に向けて飛行させ、緊急着陸を試みた。着陸に際しては、エンジン・パワー・コントロール・レバーを操作することで右ヨーを修正した。機体はノーズダウンの姿勢のまま、後方に180度スピンして着陸した。搭乗員2名に負傷はなかった。

事故発生前の状況

事故機であるAH-64Eは、基本操縦および戦闘機動飛行訓練を行っていた。具体的には、空気力学的現象およびそれの教官操縦士としての利用方法を把握させようとしていた。

危険見積ワークシートの作成、任務担当士官によるブリーフィング、任務最終承認権者による承認は、適切に実施されていた。本任務は、航空旅団SOP(作戦規定)に従い、低リスクの任務であると総合的に判断された。パフォーマンス・プラニング・データが作成され、その日の計画された訓練には出力上の制限や制約がないことが確認された。

訓練に重大な影響を及ぼす天候およびNOTAMS(Notice to Air Missions, 航空情報)はなかった。

搭乗員は、技量評価操縦士および外国人学生(教官操縦士要員)の2名で構成されていた。任務は、基本操縦および戦闘機動飛行訓練の実施であった。

事故発生時の状況

事故機は、戦闘機動飛行訓練を実施するため、訓練場に向かった。訓練場に鳥が飛んでいるのを発見した技量評価操縦士は、それをアナウンスした。技量評価操縦士は、訓練を開始するため副操縦士に操縦を交代した。副操縦士は、サイクリック・クライムからプッシュオーバー・ブレイク(a cyclic climb to a pushover break)と飛ばれる敵火力からの回避機動を演練することになっていた。

操縦を交代してから11秒後、技量評価操縦士は「アッ、左から来た!」と声をあげた。その直後、鳥が機体に衝突し、機体が激しく揺れ始めた。

その振動は、テール・ローターが機体から飛散するまで1.5秒間続いた。直ちに操縦を交代した技量評価操縦士は、機体の制御が可能かどうかを確認した。テール・ローターは機能していないが、メイン・ローターは機能していると判断された。

機体のヨーイングおよび前方への重心移動に対処するため、対気速度を上げようとした。しかし、サイドスリップが大きすぎて、対気速度をあげても機首方位をコントロールできなかった。技量評価操縦士は、さらに増速しながら着陸することにした。被教育者である副操縦士に対し、「パワー・コントロール・レバーの操作を準備」と指示した。技量評価操縦士がコレクティブを引いた際に、副操縦士がパワー・コントロール・レバーを絞れるようにしたのである。

技量評価操縦士は開かつ地を発見すると、できる限りそこに近づくように操縦し、速度を落としながら降下を開始するとともに、被教育者である副操縦士にパワー・コントロール・レバーの操作を指示した。

そしてコレクティブとパワー・コントロール・レバーの操作量を調整しながら、着陸(墜落)した。その後、機体が接地し、停止した。クルーは負傷者がないことを確認した後、バッテリーをOFFにしてから機外に脱出した。

事故発生後の処置

事故機がバード・ストライクにより予防着陸したことを把握した中隊の航空機は、訓練を中止し、事故機の位置の特定を開始するとともに、その状況を報告した。数分後には、事故機を発見した。事故現場に到着すると、事故機のパイロット2名が機体から脱出し、機外に立っているのが確認された。事故現場に着陸した中隊の航空機は、事故発生地点をレスキュー部隊に通報した。

患者後送機が到着し、2名の搭乗員の状態を確認して、現地の病院に搬送したが、特段の治療が必要な状態ではなかった。

搭乗員の練度

機長(技量評価操縦士)の総飛行時間は3,298時間、そのうち機長としての飛行は873時間、副操縦士としては645時間、教官操縦士としては1,427時間、AH-64には2,200時間、AH-64Eには1,021時間、夜間暗視眼鏡では460時間、夜間暗視システムでは1,082時間の飛行時間を有していた。

副操縦士の部隊装備機での総飛行時間は500時間であった。

結論

バード・ストライクを完全に回避することはできないが、複数の対策(発見された障害物を回避するための簡潔な用語を使用したクルー・コーディネーション、飛行経路に障害物がないことを確認するための継続的な空域監視、機動のための操縦技術)を組み合わせることにより、事故のリスクを大幅に減らすことができる。それは、陸軍航空におけるバード・ストライクによる被害を減少させるために不可欠なのである。

                               

出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2024年09月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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