航空事故発生状況(抜粋)
航空事故報告に基づく情報
ヘリコプター
HH-60
- バンビ・バケット(空中消火用の水のう)を懸吊した状態で着陸進入中、航空救難員がクレビス(バケットのスリング・ベルトを機体のカーゴ・フックに接続するための金具)の方向を保とうとして手で触れてしまった。機体が地面に近づいた際にバケットが横に揺れてクレビスが傾いたため、当該救難員の右手小指が押しつぶされ、裂傷を負った。(クラスC)
UH-60
- インレット・プラグ(駐機中に空気吸入口からの異物の侵入を防ぐためのキャップ)を取り付けたままでエンジンを始動しようとした。(クラスC)
- 地上試運転中にNo.2エンジンの始動に失敗した。再始動を試みている最中に、搭乗整備員のひとりがNo.2エンジンのインレット・プラグが取り付けられたままであることを発見し、操縦士に始動中断を指示した。(クラスC)
- 複数のフライト・コントロール・サーボ(パイロットの操舵をローターに伝える油圧装置)を切り離した状態で、フェーズ点検を実施していた。油圧を供給した際に後方プライマリ・サーボが最後方側に底着いた。スワッシュプレートが作動限界を越え、ユニボールに亀裂が生じた。(クラスC)
CH-47F
- NOE(nap of the earth, ほふく飛行)飛行で空中機動を実施中に、CH-47Fの前方ローター・ブレード(イエロー)のチップ・キャップ領域(先端部)に損傷が発生した。事案発生時、当該機は、広域FTX(field training exercise, 実動演習)に参加していた。当該機の搭乗員は、線路に沿った「クリアカット」(植生のない部分に生じたあい路)内を飛行していた。偽装/隠蔽のため、胴体は木の高さより下に保たれ、ローター・ディスクは木とほぼ同じ高さであった。前方を横断しているワイヤー障害物を回避するため、パイロットは機体を上昇させた。ワイヤーを超越した後、機体を前述のNOE状態に戻そうとして降下した際、ローター・ブレードが「クリア カット」の脇にある木の枝に接触した。(クラスC)
AH-64D
- 当該機は、機体右側のメイン・ローター・ブレードの折り畳みを行っていた。整備機の入場に備えて、駐機スペースを確保しなければならなかったからである。ブレードを折りたたもうとした際に、ブレードから手が滑って作業台を踏み外し、機体の機首方向に向かって落下した。落下した場所は、ヘルファイア・ミサイル・ランチャー (Hell Fire Missile Launcher, HML) と胴体の間であった。当該兵士は、ミサイルおよび地面に頭部を打ち、負傷した。(クラスC)
AH-6
- AH-6M用新型武装搭載システムの実弾射撃試験中、右側のGAU-19が機体から落下し、発射した弾丸が機体右前方の係留リングおよび外板に当たった。当該機は無事にFARP(Forward Arming and Refueling Point, 燃料弾薬再補給点)に着陸し、GAU-19はEOD(Explosive Ordnance Disposal, 弾薬回収班)によって射場から回収された。(クラスC)
MH-6
- NVGを使用した高高度離陸を実施中、トランジェント出力(訳者注:一時的に許容される高エンジン出力状態)でセットリングに入り、急激に降下を始めた。副操縦士から操縦を交代した機長が回避操作を行った際に、許容最大トルクを超過した。(クラスC)
固定翼機
RC-12W
- 上空28,000フィートを飛行中、左席の機長が、No.1エンジンの油温上昇および油圧低下に気づいた。No.1側のトルクを減少させると、油温および油圧が正常に復帰した。約10分後、同じ状態が再現したため、今度は高度19,000フィートまで降下を開始するとともに、航空管制官に離陸飛行場への帰投を要求した。離陸飛行場に直線経路で帰投を開始すると、油温および油圧は再び正常に戻った。ただし、この間にNo.1エンジンのトルクおよびタービン入口温度は、瞬間的に制限値を超えていた。このため、当該エンジンの停止を決心し、飛行中のエンジン停止手順を行った。搭乗員は、緊急事態を宣言し、代替飛行場に無事に着陸した。(クラスB)
無人航空機システム
RQ-7 (シャドウ)
- 当該無人機は、着陸シーケンス中、アレスティング・ギアおよび回収ネットに到達する前に滑走路を逸脱した。(クラスB)
- 着陸手順を20回試みたが、TALS(tactical automatic landing system, 戦術自動着陸システム )が機体にリンクしなかった。TALSオムニ・アンテナの故障により、機体と自動着陸システムのリンクが確立できなかったものと推定される。操作員は、機体を不時着させた。(クラスC)
RQ-11B (レイヴン)
- 当該無人機は、リンク喪失状態となり、ROZ(Restricted Operating Zone, 運用制限地域)を逸脱し、最終的には機体の回収が可能なアンテナ到達領域を超過した。機体は墜落し、全損したと推定される。(クラスC)
クラスA- 200万ドル以上の損害、航空機の破壊、遺失若しくは放棄、死亡、又は完全な身体障害に至る傷害若しくは公務上の疾病を伴う事故
クラスB- 50万ドル以上200万ドル未満の損害、部分的な身体障害に至る傷害若しくは公務上の疾病、又は3人以上の入院を伴う事故
クラスC- 5万ドル以上50万ドル未満の損害又は1日以上の休養を要する傷害若しくは公務上の疾病を伴う事故
クラスD- 2万ドル以上5万ドル未満の損害、又は職務に影響を及ぼす傷害若しくは疾病等を伴う事故
クラスE- 5千ドル以上2万ドル未満の損害を伴う事故
クラスF- 回避不可能なエンジン内外の異物によるエンジン(APUを除く)の損傷
出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2023年01月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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1件のコメント
ある方から、「アメリカ陸軍では、無人機は航空科なの?」という質問を受けました。
私もよく分からないのですが、今回の記事で分かるとおり、航空安全に関する部内雑誌であるFlightfaxでは、無人機も扱っています。
無人機の装備・開発に関しても、有人機と一緒にPEO AVN(program executive office aviation, 航空計画管理室)が担任しているようです。航空計画管理室の所掌業務
無人機の操縦や整備に関しては、有人機とは別の特技が定められているようです。操縦特技・整備特技