AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

UH-1トランスミッション・クレビスの亀裂

米陸軍安全センター

以下の事案は、最近の野外演習中に発生したものです。この情報を読者に提供してくださった、フォート・ライリー第701整備大隊の品質管理担当官、リチャード・A・ギャラップ上級准尉2に感謝します。

UH-1Hの点検中、トランスミッション・ケースのリフト・リンク取付クレビスの右側の耳部に、クラックが見つかりました。クラックはボルト穴から後方へ水平に4インチ(約10センチメートル)延び、前方へはクレビスの縁まで達していました。リフト・リンク・ボルトを抜き取るためにトランスミッションを吊り上げて荷重を抜いた際には、クラックが口を開くほどまで進展していました。

リフト・リンク・ボルトを抜き取ると、ボルトに部品番号(Part Number, P/N)204-040-118-1のブッシングが取り付けられていなかったことが判明しました。この状態は、トランスミッション・ケースのリフト・リンク取付クレビスに、2通りの形で応力を生じさせていました。まず、ブッシングがないため、ボルトの頭部がクレビス左側の取付耳部に直接当たり、左右の耳部がリフト・リンクのベアリングに向かって引き寄せられて、クレビスの両側に横方向の応力がかかりました。また、ブッシングがないと、ボルト頭部側(クレビスの左側)でボルトの周囲に約8分の1インチ(約3ミリメートル)の隙間が生じます。このため飛行中にボルトの頭部が上下に動き、クレビス右側の耳部に曲げ応力がかかって、クラックに至りました。

航空機の記録を調べたところ、次のことが判明しました。トランスミッションは16か月前に交換されており、それ以降の飛行時間は147時間でした。クラックが見つかるまで、この状態をうかがわせる兆候は何も報告されていませんでした。当該機はトランスミッション交換から79飛行時間後に定期整備(phase 3-1)を受けていましたが、不具合は記録されておらず、定期整備後の試験飛行でもパイロン・マウントの点検結果は良好とされていました。

問題は、いったんボルトを取り付けてしまうと、ブッシングが取り付けられているかどうかを目視点検では確認できないことです。整備実施規定(Technical Manual, TM)55-1520-210-23-1の第6-40項dには、ブッシングがボルトに接着されていない場合の処置が極めて明確に示されています。ボルトを取り付けた者が規定どおりに作業しなかったことは明らかであり、技術検査員(Technical Inspector, TI)も経験が浅く、取付状態を検査する際に的確な質問をすることができなかったのです。

指揮官、操縦士、監督者および技術検査員は、規定どおりの整備の重要性を整備員に深く認識させる処置を講じるとともに、整備員が規定を読み、それに従ったかどうかを確かめるための的確な質問の仕方を身につけることが肝要です。

もう一人の目

(『Flightfax』第17巻第21号、1989年8月9日)

入念な飛行前点検は、皆さんの安全にとってどれほど重要なのでしょうか。まさに「百聞は一見に如かず」という事例を紹介します。

飛行前点検で見つかったAH-1のトランスミッション・ケースのクラック

写真のAH-1のトランスミッション・ケースの、リフト・リンク取付部にあるクラックは、比較的経験の浅いコブラ操縦士、スコット・メリアス4等准尉が、射撃任務に向けて飛行前点検を行っていた際に発見したものです。当該機はすでに飛行後点検と日々点検を終えていましたが、致命的な事態を招くおそれのあったこの不具合は、どういうわけか見逃されていました。

自分の航空機を入念に点検することの重要性を、決して軽く見てはなりません。もう一人の目が、いつあなたの命を救うことになるか分からないのです。

―情報提供:第2機甲師団(前方展開)第2-1騎兵大隊D中隊 ルイス・E・カルモナ中尉(宛先:陸軍郵便局(Army Post Office, APO)ニューヨーク09355)

訳者コメント:
2本の記事でクラックが見つかったのは、いずれもトランスミッション・ケースのうち、リフト・リンクを取り付ける部分です。UH-1の双発型であるベル212の操縦士訓練資料によれば、飛行中の機体の荷重は、胴体の主構造材(メイン・ビーム)から横方向のリフト・ビーム、リフト・リンク、トランスミッション・ケース、マストを経て、メイン・ローターへと伝わります。トランスミッションは別に防振マウントでも支えられていますが、こちらはローターからの振動とトルクを遮断するためのものです。リフト・リンクの取付部は、機体をローターに吊り下げる経路の一部に当たり、2本目の記事が「致命的な事態を招くおそれがあった」としているのはこのためです。
AH-1は、UH-1のエンジン、トランスミッション、ローター系統を引き継いで開発された機体です。9年を隔てた2本の記事は、同じ系列の機体の同じ箇所に生じたクラックが、性格の異なる複数の点検をすり抜けていた事例ということになります。1本目では、トランスミッション交換から147飛行時間の間に行われた定期整備も、その後の試験飛行でのパイロン・マウントの点検も、異常を捉えていませんでした。記事によれば、ブッシングの取付漏れは、ボルトを取り付けた後では目視で確かめられません。2本目では、飛行後点検と日々点検を終えた機体で、次の飛行前点検に当たった操縦士がクラックを見つけています。陸上自衛隊のUH-1JとAH-1Sも同じ系列の機体であり、同じリフト・リンク取付部を持っています。
1本目の記事は、取付作業を検査した技術検査員の経験不足を指摘しています。現行の教範 ATP 3-04.7『陸軍航空整備』(2020年)によれば、技術検査員は、部隊長が技能・資格・経験に基づいて命令により指名し、品質管理の責任者を通じて整備の品質保証に責任を負います(5-4項)。定期整備の作業班にも専任の技術検査員が加わり、実施した点検・作業が整備実施規定等に合致していることを確かめます(1-33項)。同教範は、技術検査員の重要性は過小評価できず、積極的に管理しなければならないとしています(5-8項)。同教範は本サイトの参考資料「ATP 3-04.7 Army Aviation Maintenance」に掲載しています。
1本目の記事の「phase 3-1」は、当時のUH-1の定期整備の区分を指すものと考えられますが、その内容を確認できなかったため、訳文では「定期整備(phase 3-1)」として原語を残しました。
本記事は、同じ箇所のクラックを扱った1980年と1989年の2本の記事を、1本にまとめて掲載しています。冒頭の写真は1本目の記事の誌面に掲載されていたものですが、原文にキャプションがなく、写っている機体や作業が記事の事案のものかどうかは分かりません。
                               

出典:The continuing case for by-the-book maintenance / Another set of eyes, FLIGHTFAX, U.S. Army Safety Center 1980年3月12日

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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