航空事故回顧-UH-60におけるテールローター推力の喪失
任務遂行中のUH-60のテールローターに剥離が生じ、強い振動が発生した。このため、テールローター・ギアボックスがテール・パイロン上の取付部から分離した。当該機は、オートローテーションを行ったが、旋転に入って樹木に接触した後、地面に墜落した。搭乗員1名が死亡し、機体は完全に破壊した。
飛行の経過
当該機は、3機のUH-60で構成された編隊の3番機として、VMCの昼間飛行を行っていたところ、離陸直後に異常振動が発生した。その振動により、4枚のテールローター・ブレードのうち3枚が失われ、テールローター・ギアボックスも取り付け部から分離した。異常発生時の高度は約1,500フィート、飛行速度は140ノットであった。異常振動が発生したため、当該機は、オートローテーションで降下を開始した。対地高度約250フィートを降下中、機体が水平方向に旋転し始めた。メインローターが太い樹木に接触した後、機体下部を下にした状態で垂直に墜落した。搭乗員1名が死亡した。
搭乗員の練度
機長の総飛行時間は560時間であり、そのうち連続した飛行時間は429時間であった。副操縦士の総飛行時間は826時間であり、そのうち連続した飛行時間は375時間であった。
考 察
非常に厳しい環境下で運用される陸軍航空の航空機には、訓練および戦闘任務を通じて、大きな負荷が加わっている。このため、パイロットは、不具合発生時に緊急操作手順を実施できるよう、常に備なえなければならない。システムや構成品には不具合が発生する可能性がある。速やかにその不具合を特定し、分析し、それに対応できるかどうかが、安全に着陸できるか悲劇的な結末を迎えるかの差を生み出すのである。パイロットは、操縦する機体の取扱書に示された緊急操作手順に従って対応しなければならない。取扱書に下線付きで表示されているような、直ちに対応が必要な不具合が発生した場合に備え、その手順を無意識に行えるくらいに完全に体得していなければならない。
部隊長は、所属隊員がシミュレータが最大限に活用され、緊急事態に直ちに対応できることを重視した訓練が十分に行われていることを確認しなければならない。パイロットは、戦闘任務および訓練のいずれにおいても、適切な緊急操作が実施できるように、常に腹案を保持しておかなければならない。緊急事態に遭遇した場合に、緊急操作手順を適切に実施し、その損害を最小限にするために最も重要なことは、平素からの訓練に他ならないのである。
出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness/Safety Center 2018年05月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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1件のコメント
本事故の発生時期は、当方では特定できませんでした。
「飛行中の不具合により、テールローター推力が喪失し、死亡事故が発生した」という事案の発生を踏まえ、(「同種不具合発生の防止」ではなく)「緊急操作の適切な実施」について注意喚起するというところが、(いろんな意味で)すごいと思います。