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陸軍航空の情報センター

「自分が何をしているかを分かっていなければならない。」— 特技兵スミスの言葉

ジョン・ディッキンソン
航空局

それは、技量評価操縦士(standardization pilot, SP)の壁に貼られた、ニーボード大の紙に書かれた言葉でした。その技量評価操縦士と機付長をよく知っていたし、多少の好奇心もあったことから、私はその何気ない言葉の由来と、なぜその言葉が目立つ場所に掲げられているのかを尋ねました。話の内容は、それほど大したものではありませんでした。

その技量評価操縦士とある機付長は、複数機で車両をスリング回収する任務に就いていたようです。地上部隊が搭載地域(Pickup Zone, PZ)の管理をうまく行えなかったことから、長機は編隊を適切に配置できずにいました。また、懸吊物の準備にも不備があり、搭乗員たちは苛立ちを募らせる状況となりました。

そのような状況では誰もがそうなるように、搭乗員たちは機内で、何がうまくいっていないか、そして長機や航空任務指揮官(Aviation Mission Commander, AMC)、あるいは地上部隊が問題を解決するために何をすべきかについて話し合っていました。いわば、後部座席からの口出しです。そのやり取りの中で、機付長が外部の状況について「自分が何をしているかを分かっていなければならない」(You’ve got to know what you’re doing.)と言いました。技量評価操縦士はすかさず「素晴らしい!」と言い、声を張り上げてその言葉を繰り返しました。「これほど深い言葉はない、書き留めて残りの人生の指針にする」といった趣旨のことを言ったようですが、その人物の性格からして、かなりの皮肉が混じっていたことは間違いないでしょう。実際にはもっとおどけた雰囲気だったかもしれませんが、そのようにしてあの一文が生まれました。

では、なぜこれほど長い前置きを設けて、一見当たり前のことを述べているのでしょうか。約3か月の間に、陸軍は戦闘機動飛行(Combat Maneuvering Flight, CMF)の訓練中にUH-60を2機失い、4名の搭乗員が命を落としました。いずれの事故も、樹木に激突する前に機体を立て直せない高度で過度な機動を行ったことが原因でした。端的に言えば、当時の飛行条件に対して、機動を行う高度が低すぎたということです。

ここでパワー・マネジメントと積極的な機動飛行に関する講義を行うつもりはありません。なぜなら、私の空気力学の知識は主として「コレクティブを上げると家が小さく見え、コレクティブを下げると家が大きく見える」という概念に集約されているからです。しかし、大きなバンク角による飛行状態に入る前に、いくつかの基本事項を理解しておく必要があります。ここで私が「戦闘機動飛行」ではなく「大バンク角の飛行状態」と表現したことに注目してください。これが私の第1の要点です。搭乗員訓練マニュアル(Aircrew Training Manual, ATM)に記載されたタスク番号と、それに対応する旋回・上昇・降下の種類だけに限定して考えてはいけません。あらゆる機動飛行に共通の原理であり、それが戦闘機動飛行であれ、その訓練であれ、あるいは演習空域内での針路反転のための急旋回であれ、同じ原則が適用されます。

搭乗員訓練マニュアルには戦闘機動飛行についての適切な説明が記載されており、本号の記事に記載されている注意事項も含まれています。注意事項以外にも、各記述の中には有益な情報が盛り込まれています。たとえば「機長(Pilot in Command, PC)は、環境条件が飛行性能に与える影響を搭乗員が認識していることを確認しなければならない」、「搭乗員はこれらの機動を実施する前に、マッシング、トランジェント・トルク、ブレード失速などの空気力学的要因に精通していなければならない」といった記述です。また、機動を訓練する際の推奨対気速度および高度に関する注記もあります。これらは戦闘機動飛行に特有の新しい情報ではありませんが、あらゆる飛行任務において考慮しなければならない事項です。

タスク説明で欠けていると思われるのは、計算の基準となる具体的な参照点です。もちろん、自分が飛行している領域に関連する空気力学的要因を知り、機体にどのような原因と結果が生じるかを理解することは重要です。教範(FM)3-04.203の第1章第VI節「機動飛行」には、「大バンク角旋回(High Bank Angle Turns)」と題したサブセクションがあります。その抜粋を次のページに掲載します。


大バンク角旋回(FM 3-04.203『飛行の基礎』)

バンク角が増大するにつれて、垂直荷重に対する揚力が減少する(図170)。十分な余剰エンジン出力が利用可能であれば、コレクティブ・ピッチを増加させることで対気速度と高度を維持しながら飛行を継続できる。十分な余剰出力が得られない場合には、高度を維持するために対気速度を減少させる(後方サイクリック)か、対気速度を維持するために高度を失うかのいずれかを選択しない限り、高度損失が生じる。

ある対気速度とバンク角の組み合わせでは、十分な余剰出力が得られなくなり、パイロットは高度を維持するために後方サイクリックを入力しなければならない(表1-3)。表に示されたパーセンテージは、トルクそのものの数値ではなく、水平定常飛行を維持するための機体トルクを基準としたトルク増加率である。例えば、指示巡航トルクが48パーセントの状態で60度の旋回を開始した場合、対気速度と高度を維持するには48パーセントのトルク増加(指示トルク96パーセント)が必要となる。


この表が私の第2の要点です。60度のバンク角(2G)では、旋回中に対気速度と高度を維持するために100パーセントのパワー増加が必要であることに注目してください。これはコックピット内で計算できる単純な掛け算です。単純でないのは、2倍のパワーが利用できない場合に高度を維持するため、ピッチ姿勢と対気速度のトレードオフをどの程度行えばよいかを算出するための、より複雑な計算です。それは、機動の繰り返しによる実践的な経験を通じて身につけるしかありません。さらに、環境要因やブレード失速などの諸条件を考慮に入れる場合には、望む結果を得るためにどのような操作が必要かを大まかに見積もるしかなくなります。超低空飛行の高度は、そのような当てずっぽうを試す場所ではありません。この表についてもう一点:60度を超えた場合のG荷重の急激な増加は表に示されていません。非操縦パイロットにとって、バンク角が超過されないよう監視することは非常に重要です。

パフォーマンス・プランニング・カード(Performance Planning Card, PPC)に関するもう一つの重要な項目として、最大バンク角(MAX ANGLE)があります。この値は、航空機操縦士用手引書第5章の「ブレード失速開始対気速度図表」から導き出されます。これは制限値ではありませんが、対気速度、総重量、気圧高度(PA)および温度の関数として、水平飛行中にブレード失速が発生し始めるバンク角を示しています。バンク角を選択する際には、この点を念頭に置いてください。

機会があれば、2005年3月付の『陸軍航空士の機動飛行とパワー・マネジメントのハンドブック(The Army Aviator’s Handbook for Maneuvering Flight and Power Management)』を参照してください。知っておくべき事項とその適用方法について、優れた記述があります。また、次のページに掲載する機動飛行に関する常識的な経験則も記載されており、「自分が何をしているかを分かっていなければならない」という言葉よりも、より実践的なガイダンスとなるでしょう。


『陸軍航空士の機動飛行とパワー・マネジメントのハンドブック』

第III節 機動飛行の経験則

  1. トリム、トルク、ローターを維持できる速さを超えてサイクリックを動かしてはならない。機動に入った際に、トリム、ローター、またはトルクが予想よりも速く反応した場合、自らの限界を超えている。この状況を続ければ、航空機の制限値を超える可能性が高い。機体のあらゆる挙動を制御できるようになるまで、機動を和らげてゆっくりと実施すること。
  2. 搭載物や環境条件による航空機性能の変化を予測すること。海面標準状態(SLS)でローター回転数を調整するための通常のコレクティブ増加量では、気圧高度4,000フィート・気温華氏95度(約35℃)の条件(4K95)では不十分となる。
  3. 機動飛行中は以下の特性を予測し、トリムとトルクを維持するために必要に応じてコレクティブを調整または先行入力すること。
    • 積極的な左旋回中、トルクは増加する。
    • 積極的な右旋回中、トルクは減少する。
    • 後方サイクリックを積極的に入力すると、トルクは減少しローターが上昇する。
    • 前方サイクリックを積極的に入力すると(特に後方サイクリック入力の直後)、トルクは増加しローター回転数は低下する。
  4. 常に逃げ道を確保しておくこと。いかなる脅威があっても、地面との正面衝突では地面が必ず勝つ。
  5. 風の状況を把握すること。
  6. エンジンの不具合のほとんどは、出力変化時に発生する。
  7. しばらく戦闘機動を実施していない場合は、ゆっくりと始めること。暗視装置(NVD)飛行と同様に、クロスチェックが遅くなり、長期間実施していない作業の練度を回復させるには時間がかかる。
  8. クルー・コーディネーションは不可欠である。全員が状況を完全に把握し、各搭乗員はそれぞれの任務を担う。
  9. 急旋回では機首が下がる。ほとんどの場合、必要な余剰エンジン出力が得られないため、高度を維持するにはエネルギー(対気速度)とのトレードオフが必要である(例えば、2G・60度旋回で対気速度を維持するには、ローター推力・エンジン出力を100パーセント増加させる必要がある)。低高度でこれを予測し損ねると、自身・搭乗員・同乗者を危険にさらす。ピッチ変化率は総重量と密度高度(DA)に比例する。
  10. 機動飛行中のオーバートルクの多くは、航空機がGを解放する際に発生する。これは、G荷重の増加時にトルクとローターを一定に保つためにコレクティブを増加させた後、G荷重解放時にコレクティブを十分に減少させないことが原因である(例:急降下からの回復、右方向への高G旋回からの回復)。
このコラム欄にユーモアやお気楽な内容を期待しないでください。前述のとおり、この欄は航空事故防止というFlightfax本来の目的に沿った内容のみを掲載することとします。
訳者コメント:本記事は、米陸軍の航空安全誌『Flightfax』に掲載されたコラムです。戦闘機動飛行(CMF)訓練中にUH-60が2機喪失した事故を受け、大バンク角旋回時のパワー管理に関する基礎的知識の重要性を説いています。FM 3-04.203のバンク角対トルク増加率の表(60度バンクで100パーセント増加)は、コックピット内での即時判断に直結する実用的なデータです。また、『陸軍航空士の機動飛行とパワー・マネジメントのハンドブック』(2005年3月)に示された経験則は、機動飛行に携わるすべての操縦士に参照価値のある実践的指針です。これらの基本原則は、UH-60に限らず回転翼機全般に共通するものであり、機種を問わず有用な内容です。
                               

出典:You’ve got to know what you’re doing, FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2016年07月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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