マルチドメイン戦における航空展開地の生存性

本稿は、センター・フォー・アーミー・レッスンズ・ラーンド(CALL)2025年11月号に掲載された記事を許可を得て転載したものです。
はじめに
戦争は変容しつつあるにもかかわらず、陸軍航空部隊は依然として同じ露出した展開地(Tactical Assembly Area, TAA)を設定し続けています。ドイツの統合多国籍即応センター(Joint Multinational Readiness Center, JMRC)でファルコン・チーム(航空評価・指導・訓練担当官(Observer Coach Trainers, OCTs))が収集した観察結果によると、回転翼航空任務部隊(AV TF)はヨーロッパの大規模戦闘作戦(Large-Scale Combat Operations, LSCO)で想定されるマルチドメイン脅威を模擬した実力対抗演習において、同じ問題を繰り返しています。航空任務部隊は、航空機の偽装が皆無の露出した飛行列線や車両整備場を思わせる、大規模かつ静的な展開地を一貫して設定しています。こうした展開地はUASまたは衛星によって容易に識別され(Unmanned Aircraft System, UAS)、火力およびUASによって繰り返し破壊されています。
現代の戦場は、露出した高価値目標を容赦なく撃破します。航空任務部隊は「鉄の山(iron mountain)」の思考様式を引きずったまま運用を続け、開かつ地にヘリコプター・燃料弾薬再補給点(FARP)・整備資産を密集させています。乗員は、敵の統合防空システム(Integrated Air Defense Systems, IADS)を無力化するための戦術・技法・手続き(Tactics, Techniques, and Procedures, TTP)の訓練を強化し、新たな脅威への適応を進めています。しかし、航空任務部隊は最もぜい弱な状態、すなわち地上にある間の生存性を確保するための基本的な防護措置を講じていません。本稿は、敵の初撃を生き延びるために、展開地の計画・実施において生存性(survivability)を最優先にすることの緊要性を論じます。また、マルチドメイン脅威に対する作戦継続能力を維持するために、戦闘航空旅団が分散・偽装した展開地への移行と分権化された整備・兵站体制を実現するための枠組みを提示します。
「鉄の山」の根強い遺産
ローテーション訓練部隊(Rotational Training Units, RTU)の航空任務部隊は、第一線部隊の前縁(Forward Line of Own Troops, FLOT)から約50キロメートル後方の開かつ地に展開地を設定し、燃料弾薬再補給点に隣接する整然とした列に航空機を並べるという行動を繰り返しています。対抗部隊(OPFOR)のUASはその位置を継続的に識別し、砲兵の弾幕および自爆型攻撃UASで航空任務部隊の戦闘力を破壊しています。複数のローテーションを通じて、航空部隊はCOIN環境で行動しているかのような展開地を設定し続けています(COIN:Counter-Insurgency、対反乱作戦)。部隊は戦術上の必要性よりも利便性を優先する「鉄の山」の思考様式を根強く持ち続けており、燃料・航空機・要員を一箇所に集めることで、展開地を敵の標定にとって格好の標的に変えてしまっています。装備品を集中させることは、敵のキル・チェーンを単純化することにほかなりません。
露出した航空機:最も明白な標的
敵の索敵員は、飛行場または広大な開かつ地にUH-60が6機、CH-47が4機、AH-64が7機というように並んだ駐機列を容易に探知します。航空機のローター・ブレードと機体が発する特徴的な識別兆候は、UASと衛星画像の双方で容易に捉えられます。にもかかわらず、航空任務部隊は偽装されていない航空機を上空への遮蔽が一切ない状態で集積し、何日もその位置に居座り続けています。無人機と宇宙ベースの観測機器を装備した同等水準の敵は、必ずその展開地を発見し、標定するでしょう。ロシア・ウクライナ戦争における「スパイダーウェブ作戦」(2025年6月、ウクライナがトラックに偽装した発射台からFPVドローンを発射し、ロシア国内5か所の空軍基地に駐機中の戦略爆撃機40機以上を撃破した作戦)は、航空装備が一箇所に長期間留まることの危険性を如実に示しました。
ヘリコプターはその機動性において、ウクライナが標的とした爆撃機とは比較になりません。戦場を縦横に機動し、脅威にさらされた環境でも戦術的優位を発揮できます。地上装備品の防護は隠掩蔽によって確保しますが、ヘリコプターの生存性は隠掩蔽よりもむしろ頻繁な移動によって確保されます。指揮官は、敵が常に標定をやり直さなければならない状態に置くため、たとえわずか200〜400メートルであっても24時間ごとにヘリコプターを移動させるべきです。そのためには、入念な計画・リハーサル、そして部隊全体の意識改革が不可欠です。

分散:集中標定への解薬
航空戦力を集中させることは、それを失う確実な方法です。同等水準の敵に対して生き残るためには、分散が不可欠です。「分散は最善の被害局限措置です。部隊と装備品を適切に分散させることで目標密度が低下し、その部隊に指向される弾薬の致死効果を低減できます。」¹ JMRCでローテーション訓練を行う飛行中隊が政府支給または個人所有のスターリンク/スターシールド・システム(SpaceXが運用する低軌道衛星通信網。スターリンクは民間向け、スターシールドは暗号化・耐妨害機能を付加した軍・政府向け版)を活用して指揮統制能力を向上させたことで、分散運用の実現性は格段に高まっています。航空任務部隊は、戦闘力と支援チームを各分拠点に分散させ、広大な地域にわたって航空展開地を設定しなければなりません。
指揮官は、航空機・第III種/第V種補給品の再補給・整備チーム・指揮統制要素について、それぞれの分散配置を入念に計画しなければなりません。各分拠点は半自律的でなければならず、指揮統制が低下または分権化された状況でも単独で行動できなければなりません。そのためには、訓練・SOP(標準作業手順)の改善、そして野外における自己完結能力の抜本的な見直しが必要です。
最近のローテーションで、ある航空任務部隊が攻撃ヘリコプター(AH)中隊を主展開地から分離し、優れた分散を実証しました。その攻撃中隊は大隊戦闘指揮所(TAC)の指揮の下、整備員および燃料補給班の支援を受け、攻撃能力と部隊の生存を確保しながら3日間で3回の攻撃任務を成功裏に遂行しました。このアプローチでは、指揮官が整備面のリスクを管理することが求められます。具体的には、分散した位置では50時間点検のみ実施し、125時間および250時間点検が必要な航空機の後送を入念に計画することが必要です。
衛星情報・監視・偵察(ISR)とUAS
JMRCで最も継続的な脅威となっているのはUASです。対抗部隊は日常的に無人機で展開地を特定し、射撃要請を行っています。発見された航空機・支援装備品・指揮所は、演習における模擬の砲兵射撃または自爆型攻撃UASによって標定・撃破されます。
航空部隊は対UAS計画を策定し、運用に組み込まなければなりません。「指揮官、リーダー、および計画担当者は、UAS脅威に対する多層防衛戦略の一環として、パッシブおよびアクティブ対策の同時適用を作戦計画・運用に盛り込まなければなりません。」² その対UAS計画・運用には、早期警戒システム・多層防衛(小火器、妨害装置、利用可能であれば動的撃破システム)、そして何より重要な予防的偽装と分散を含めなければなりません。また、航空任務部隊は敵に発見・攻撃された際に航空機を迅速に分散・退避させるスキャター計画(scatter plan)も策定・訓練しなければなりませんが、JMRCではこれを実施できている部隊がほとんどありません。
衛星は24時間休みなく監視活動を続けています。「計画担当者は、有人・無人を問わず飛行の大半が視覚・音響・電子的手段など9つの接触形態のいずれかによって敵に観測されること、また飛行パターンや経路から重要拠点の位置・部隊境界・火力調整線などが敵に推定されることを前提として計画しなければなりません。」³ 同等水準の敵は国家・商業双方の衛星コンステレーション(多数の衛星が連携して地球をカバーする衛星網)を利用でき、上空カバレッジを途切れなく確保できます。機械学習の活用により、敵が衛星画像を処理する能力は日々高まっています。露出した部隊は、探知され、撃破されます。

生存性マインドセットの育成
生存性の確保は、困難があっても利便性よりも戦術上の必要性を優先するという意識から始まります。指揮官は、偽装・欺瞞・分散を中核的な戦闘技能として部隊に徹底させなければなりません。JMRCで最高の生存性を示す部隊は、優れた装備品に頼るのではなく、計画・SOP・指揮官の率先によってこれらを規律として定着させています。
陸軍の教義は、同等水準の敵が持つ情報・監視・偵察(ISR)および火力能力の現実を反映すべく、教範を改訂しながら進化しなければなりません。自隊訓練では、識別兆候の低減・機動性の向上・対偵察戦術を重点的に鍛えなければなりません。航空部隊の指揮官は、分散による防護を得るために、複雑さや不便さを伴うリスクを敢えて受け入れる姿勢が求められます。「鉄の山」は、もはや航空部隊のあるべき姿ではありません。

結論
航空部隊は今日の戦場に適応しなければなりません。現代の敵は、大規模で露出した静的な展開地に対して、探知から攻撃までのキル・チェーンを致死的な精度で完結させます。有効な展開地は、小規模で分散し、移動可能で、敵に探知されにくいものでなければなりません。航空リーダーは、長距離UASおよび火力システムの運用を可能にする持続的な衛星およびUAS搭載のISR機器の脅威を直視しなければなりません。隊員は、COIN時代の「鉄の山」思考から脱却し、大規模戦闘作戦(LSCO)を生き抜く部隊へと変わらなければなりません。陸軍航空が将来の戦闘に勝利できるかどうかは、まず第一に戦闘を生き延びられるかどうかにかかっているのです。
¹ ATP 3-01.81, Counter-Unmanned Aircraft System Techniques 2025年5月23日
² 同上
出典:AVIATION DIGEST, Army Aviation Center of Excellence 2026年03月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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