自衛隊ヘリの識別方法
陸上航空に携わる我々にとって、自衛隊のヘリコプターと他のヘリコプターとを見分けるのは、簡単なことです。しかし、「自衛隊のヘリコプターって、他のヘリコプターとどうやって見分けるんですか?」という一般の方の質問に正確に答えるのは、案外難しいかもしれません。「日の丸がついていれば、自衛隊機だよ」という答えでは、十分とはいえません。
ヘリコプターが自衛隊機か、それとも他の公的機関や民間の機体なのかを確実に見分けるには、「日の丸」の有無だけでなく、その表示形態と登録記号を合わせて確認する必要があります。
国籍識別章(日の丸)の形態に注目する
「日の丸」の表示は、自衛隊機だけの特権ではありません。しかし、その形には違いがあります。
自衛隊のヘリコプター:円形の「日の丸の標識」 陸・海・空すべての自衛隊機は、「航空機の国籍識別章及び部隊マークの様式等に関する訓令」に基づき、円形の「日の丸」を国籍識別章として表示しています。これは他国の軍用機が用いる「ラウンデル」に相当するもので、原則として赤い円に白の縁取りが施されます。ただし、低視認性(ロー・ビジビリティ)塗装の場合は、黒丸の場合があります。この円形の日の丸こそが、自衛隊機であることを示す公式なマークです。

海上保安庁の航空機:長方形の「国旗」 自衛隊機以外で、日本の旗を恒常的に表示している代表例が海上保安庁です。海上保安庁の航空機は、胴体に長方形の国旗(日章旗)を表示しています。これは自衛隊の円形マークとは明確に異なります。

民間航空会社の航空機:海上保安庁以外にもアカギヘリコプターの一部の機体のように日章旗を表示しているヘリコプターがあります。また、日本航空(JAL)や全日本空輸(ANA)も、オリンピックなどの国家的イベントの際に、日の丸をモチーフとした特別塗装機を運航することがあります。ただし、いずれも自衛隊の円形マークとは異なります。
「JAナンバー」の有無で確定する
すべてのヘリコプターには、機体固有の番号が表示されています。しかし、その番号の体系は、準拠する法律によって異なります。
自衛隊以外のヘリコプター:海上保安庁、警察、消防、そして民間のヘリコプターは、すべて航空法の適用を受けます。同法および施行規則に基づき、これらの航空機は国籍を示す「JA」と4桁の英数字で構成される登録記号(通称:JAナンバー)を機体に表示することが義務付けられています。機体のどこかに「JAXXXX」という表記があれば、それは自衛隊機ではないと断定できます。

ちなみに、航空法施行規則は、自衛隊が使用する国籍識別章と「紛らわしいもの」の表示を禁止しています。このため、海上保安庁は円形ではない長方形の国旗を表示し、警察や消防は原則として国旗を表示していません。
自衛隊のヘリコプター:自衛隊が運用する航空機は自衛隊法に基づき、航空法の登録や表示に関する規定の適用が除外されています。そのため、自衛隊のヘリコプターには「JA」で始まる登録記号は表示されていません。

以上述べたところから、「円形の日の丸」と「JAナンバーの不在」という二つの特徴が揃えば、その機体が自衛隊機であると確定できるといえます。
自衛隊ヘリの陸・海・空を見分ける方法
陸・海・空のいずれの自衛隊に所属するのかは、各自衛隊が独自に定める機体番号(シリアルナンバー)の体系で判断できます。
陸上自衛隊:5桁の数字 陸上自衛隊のヘリコプターは、5桁の数字で構成される機体番号を持ちます。このうち、最初の1桁目は機体の任務区分を示しています。なお、機体には、この任務区分を省いた4桁の数字に「JG-」を加えた「JG-XXXX」という形式も表示されています。
海上自衛隊:4桁の数字と「8」の法則 海上自衛隊のヘリコプターは、4桁の数字で構成されます。また、ヘリコプター(回転翼機)の機体番号は必ず「8」から始まることになっています。
航空自衛隊:「XX-XXXX」形式と「4」の法則 航空自衛隊の航空機は、米空軍に準じた「XX-XXXX」というハイフンを含む6桁の形式を採用しています。この中でヘリコプターを識別する鍵は、ハイフン直後の数字にあります。ヘリコプター(回転翼機)の場合、この数字が必ず「4」になります。
所属 | 機体番号の体系 | 識別ポイント |
---|---|---|
陸上自衛隊 | 5桁の数字または「JG-」に続く4桁の数字 (例:43101/JG-3101) | 数字のみの5桁または「JG」 |
海上自衛隊 | 4桁の数字 (例:8403) | 最初の数字が「8」 |
航空自衛隊 | ハイフンを含む6桁 (例:58-4593) | ハイフン後の最初の数字が「4」 |
その他の手がかり
もちろん、「陸上自衛隊」、「海上自衛隊」または「航空自衛隊」などの表示が見つけられれば、それで判断することも可能です。さらに、機体の色や機種などからでも、判断できます。ヘリコプターに詳しい人にとっては、これで判断するのが通常ですが、似たような色や機種もありますので、一般の方にとっては、確実な方法ではないでしょう。
出典:Aviation Assets 2025年08月
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