AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

ニアミス後のクリアランス

氏名非公表(要望による)

著者注:暗視装置(NVG)を装着して場周経路に進入し、そのまま任務を終える。いつも通りの飛行になるはずだったものが、結果として搭乗員全員にとって極めて重要な教訓を得る事態となりました。

我々UH-60ブラックホークの搭乗員構成はバランスが取れていました。左席にはNVGでの飛行時間が1,100時間ある機長(PC)が座り、右席には昼夜間計650時間の飛行経験を持つPCである私が操縦士として座っていました。後部座席については、左側に練成訓練を終えたばかりの若手機付長、右側には飛行時間700時間以上のベテラン機付長という配置でした。この日の飛行は、昼間とNVGを使用した野外飛行訓練を組み合わせた任務の最終行程(レグ)でした。勤務時間もすでに12時間目に突入しており、我々搭乗員は皆、早く任務を終わらせたいと思っていました。PCが気象情報を確認し、タワー(管制塔)に帰投先の飛行場をイン・サイト(視認)したと報告しました。ここまでの飛行は平穏無事でしたが、事態は急転することになります。

私が操縦を交代し、南から飛行場に接近していました。タワーの周波数をモニターしていると、飛行場内には他に2機の航空機が活動していることが分かりました。いずれもCH-47チヌークで、飛行場の両端でそれぞれホバリング訓練を行っていました。タワーからは、使用滑走路の左ダウンウィンド・レグ中間点へ進入して報告するよう指示を受けました。私がダウンウィンドに入るための旋回を開始すると同時に、PCがタワーに進入報告を行いました。これに対しタワーは、「ダウンウィンドを延長せよ。計器着陸装置(ILS)アプローチのため8マイル(約13キロメートル)・ファイナルにいるC-130に続く、2番機としての着陸を許可する」と応答しました。私にとってこれは、ごく標準的な指示に思えました。PCからの指示で速度を100ノット(時速約185キロメートル)から80ノット(時速約148キロメートル)へ減速すると、2人とも前方のC-130を視認できたため、PCはタワーへ「トラフィック・イン・サイト」と報告しました。

滑走路から約1マイル(約1.6キロメートル)離れたダウンウィンドの中間点を過ぎ、滑走路末端標識の真横(アビーム)に差し掛かろうとしていた時のことです。右席のベテラン機付長が、3時の方向の同じ高度にチヌークがいると冷静に報告してきました。私が右を見ると、確かにそこにはチヌークの姿がありました。我々の少し後方、約0.5マイル(約800メートル)離れたところを同じ経路で平行に飛んでいました。私は機付長に他機を視認したと返し、再び前方のC-130に注意を向けました。チヌークは定められた経路を使って空域から退出していくように見えたため、それ以上は気に留めませんでした。

しかしその数秒後、機付長が再びチヌークについて報告してきました。その声は明らかに焦っており、普段の彼からは考えられないことでした。なんとチヌークは急旋回して我々を追い越したかと思うと、我々に向かって直接90度の旋回を始めたのです。機付長と私がパニックになりながら言葉を交わす中、時間が極端に遅く進んでいるように感じられました。チヌークはコースを変更する素振りを全く見せず、我々に向かって一直線に突っ込んできました。

私はPCに上昇する意図を伝え、直ちにコレクティブ・ピッチ・レバーを引き上げました。我々がチン・バブル(機首下部の窓)越しに見下ろす中、そのチヌークは変則的なベース・レグを描くように我々の機体の真下を通過していきました。結果的に大きな回避機動をとる必要は生じませんでしたが、もしあの時私が上昇を開始していなければ、このエピソードは『Risk Management』誌の記事ではなく、「事故速報(Preliminary Loss Report)」として報告される事態になっていたでしょう。

PCがタワーを呼び出し、あのチヌークの動向について問いただしました。タワーからの応答は耳を疑うものでした。彼らによれば、あのチヌークは「我々の『後方』を横切って着陸する」という前提で許可を与えていたというのです。つまりチヌークは、タワーの意図に反して勝手に我々を追い越し、前方に割り込んできたことになります。我々は2番機としてアプローチしており、先行するC-130はこの時点でもまだ4マイル(約6.4キロメートル)先にいたため、搭乗員全員がこのチヌークの異常な行動に首を傾げました。我々はそのままC-130の後方に続きましたが、ショート・ファイナルに入ったところで、タワーは我々の着陸許可を滑走路横の誘導路(タクシーウェイ)へと変更しました。

このニアミス事案により、右席の機付長も私もかなり肝を冷やしたため、着陸後は地上で少し時間を取って心を落ち着かせました。我々は「今夜のフライトはもう十分だ」と判断し、その旨をPCに伝えました。しかし、PCはなんと飛行の継続を選択したのです。私はこれに全く納得できませんでした。私は彼に「自分の飛行はこれで終わりにする」と再度伝えましたが、彼は「事案はもう終わった。何も問題はない。私が操縦を代わる」と言って取り合いませんでした。結局彼は、フライトログに丸6時間を記録し、NVGの訓練要件を達成するためだけに、場周経路をさらに3周も回ったのです。

駐機場に戻ってエンジンを停止した後、機付長は先ほどのニアミスに対して激しい怒りを露わにしました。同時に彼は、搭乗員の半数が駐機場に戻ってエンジンを切るよう求めたにもかかわらず、飛行を強行した機長の判断にも強い不満を抱いていました。この事案の顛末は指導操縦士(SP)の耳にも入り、結果として部隊の全員にとっての教訓となりました。

教訓

あなたが責任者(機長)の立場にあるなら、必ず搭乗員の意見に耳を傾けてください。チームの誰かが「これ以上は無理だ」と感じており、かつ飛行を継続すべき明確な理由がないのであれば、そこで飛行を打ち切るべきです。逆に、あなたが責任者ではなく、自分の意見がうまく伝わっていない状況であったとしても、決して引き下がらないでください。搭乗員は誰であれ、安全な飛行を全うするという切実な目的を共有しているのですから。

                               

出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2026年03月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

アクセス回数:44

コメント投稿フォーム

  入力したコメントを修正・削除したい場合やメールアドレスを通知したい場合は、<お問い合わせ>フォームからご連絡ください。