ルーティンからリスクへ

2024年10月のある夜、2機のAH-64Dアパッチからなる編隊が、通常の訓練任務を終えてイラクのエルビル基地に帰投しました。両機の搭乗員は、駐機パッドへのストレート・イン・アプローチの許可を受けましたが、これは昼夜を問わず幾度となく実施してきた飛行要領でした。イラクへの派遣がその段階まで進んだ時点では、このアプローチは毎日の通勤と同じくらい慣れ親しんだ、何でもない日常的な操作(ルーティン)でした。
主要な物理的障害物は、各駐機パッドを区切るTウォールと、駐機エリアの端に設置された高さ20フィート(約6メートル)の擁壁であり、進入時にこれを越える必要がありました。1番機の操縦担当操縦士は、対気速度と高度を監視しながら、HUDのフライト・パス・ベクターを計画した接地点に合わせ、通常どおり進入を開始しました。ところが、この夜は勝手が違いました。操縦士が降下しすぎたため、尾輪が20フィートの擁壁の頂部に接触してしまいました。2番機は直ちに無線で「1番機、テール・ホイールが当たったぞ」と送信しました。1番機の操縦士は了解を送り、駐機位置まで短距離の地上滑走を完了しました。
飛行後点検において、空対空・対地(AAG)アンテナが折れ曲がって損傷し、取付部からほぼ引き剥がされていたことが判明しました。衝撃によりテール・ブームも損傷し、結果としてクラスD事故に至りました。その後の検討の中で、操縦士たちは、この事故には複数の要因が関与していたものの、根本原因は過信であったと結論付けました。
自信は任務成功に不可欠なものです。自信のない操縦士とともに飛行したいと思う者はいません。飛行任務ブリーフィング(air mission brief)を実施する編隊長であれ、任務を遂行する機長(PC)であれ、躊躇なく行動して搭乗員が任務を効果的に実行できるようにするためには、自信が不可欠です。失敗への恐れが生じると、本来の実力を発揮できず、訓練も身につかないという悪循環を招く可能性があります。
自信を育むことは重要ですが、過信に対して警戒することも同様に重要です。過信は航空事故や死亡事故などの重大な結果をもたらす可能性があります。操縦士が過信に陥ると、自らの能力を超えた飛行要領を試みたり、悪い習慣に対して寛容になったりする可能性があります。誤った操作を行っても悪影響がなければ、自らの技量を過大評価し始めるおそれがあります。以前よりも少ない飛行時間で機長となる操縦士が増えている現在の状況においては、この過大評価が特に危険であり、自らの練度について自分自身に正直であることが不可欠です。
操縦士は、自身のためだけでなく、搭乗員や支援する地上部隊のためにも、自らの技術を継続的に磨き続けなければなりません。過信した操縦士は技量向上に取り組む可能性が低くなり、複雑な任務や訓練シナリオへの対応が困難になります。この態度はさらに深刻な問題、すなわち慢心を生み出すことにもなります。
慢心は過信の直接的な結果です。操作があまりにも日常的になり、苦労なくできると感じるようになると、私たちはその操作に注意を払わなくなる傾向があります。航空のような動的な環境において、集中力の欠如は許容されません。そのような状況で不測の事態が生じた場合、それに気づく可能性は格段に低くなります。謙虚であり、自身に正直であることは、学び続け技術を磨こうとする継続的な意欲を促し、真の自信を培うとともに、過信から生じる慢心を防ぎます。
この事故を発生させた操縦士は、数か月にわたり毎夜実施してきた飛行要領を行っていました。慢心と過信が既に生じていたのです。部隊の上級操縦士たちと話し合った結果、擁壁を越える際の手順が基準を満たしていなかったことが分かりました。その夜、彼は貴重な教訓を得ました。いかに単純に見える操作においても、常に改善を追求するということです。この姿勢こそが、慢心と過信に対する最も効果的な防衛なのです。
出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2026年04月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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