AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

無人航空機RQ-7 シャドーの事故

無人航空機システムの任務を安全に遂行するために

ジョン・ルルー

2017年、私は、「生来の決意作戦」を支援するため、陸軍州兵戦闘航空旅団と一緒にイラクに派遣されました。私の役割は、戦術無人航空機システムの担当者として旅団長を補佐するとともに、指揮下の無人航空機システム部隊の連絡員として勤務することでした。戦術無人航空機システム小隊長としての経験しかなかった私は、責任範囲が不明確なことにやや不安を感じていましたが、戦闘航空旅団と一緒に派遣させて貰えるという、このチャンスに飛びついてしまいました。何年もの間、この戦闘航空旅団のほとんどの部隊を間接的に支援し、良好な関係を築いていたからです。

バクダッドでの最初の数か月の仕事は、無人航空機システムとは無関係なものばかりでした。なぜ自分がこの派遣に参加させられたのか、疑問を持ち始めたくらいでした。しかし、2017年6月頃、イラクからクェートに配置換えになり、戦闘旅団の隷下部隊である4つの無人航空機システム部隊を支援するようになりました。驚いたことに、その支援の内容は、無人航空機システムの事故調査でした。今、振り返ると、このことをうれしく思っています。非常に貴重な教訓と経験を得ることができたからです。

(特に砂漠地域で活動する)無人航空機システム部隊にとって、夏は、装備上の問題が生じやすい時期です。このシステムは、熱に弱いため、温度が上がりすぎた場合に、警報を表示するようになっています。自分が派遣されていた期間にも、これが原因で数件の事故が発生していました。旅団内の無人航空機システムの専門家は、自分と自分が推薦したもう一人の上級シャドー操作員の2名だけでした。我々は、無人航空機システムに発生した4件の事故について、正式な事故調査委員として、旅団安全将校を補佐するように命ぜられました。それらの事故のうち1件は、私にとって非常に印象に残る事故であり、そのことがこの記事を書くきっかけとなりました。

我々は、離陸直後に墜落したシャドーの事故調査を行うため、イラクに向かいました。事故発生部隊は、ある海兵任務部隊に配属されたシャドー小隊(親部隊は、別な地域にあった)でしたが、到着した我々に対し非常に協力的でした。関係する装備品や記録を保存し、大量の写真を撮影し、調査のための作業場所も確保してくれていました。それからの数日間、我々は、事業聴取、飛行および整備記録の確認、写真の精査などを行いました。

毎日、調査を終えると、各人の確認した事項をすり合わせ、問題点を明らかにしました。第1に確認できたことは、事実上、部隊安全プログラムが行われていなかったということでした。担当していた将校は、適切な教育を受けた航空安全将校であり、かつては無人航空機システムの操作員でしたが、安全プログラムが最優先事項であるとは考えていませんでした。

第2に確認できたことは、その担当将校の部下である無人航空機システムの運用技術者は、そのシステムについて、見識のある決定を下すのに十分な知識を有していないということでした。例えば、その事故の原因の1つは、バッテリーの容量不足であり、このために離陸した機体に不具合が生じたことが判明していました。事故機の操作員は、離陸する前に警報が表示されていることを確認していました。また、機体のチェックリストには、表示されていたバッテリー容量で離陸することが明確に禁止されていました。にもかかわらず、その操作員(無人機の機長でもあった)は、上司である無人航空機システムの運用技術者に、離陸して問題ないかを尋ねてしまったのです。その技術者は、問題ないと答えました。後になって、彼は、どうしてそんなことを言ったのか分からない、と私に認めています。必然的に、機体は、発射台から射出されるとすぐに墜落してしまいました。

このことは、我々にいくつかの疑問を投げかけることになりました。機長は、なぜ自信をもって離陸を中止することができなかったのでしょうか?運用技術者は、なぜ離陸を承認したのでしょうか?安全に関する指揮関係はどうなっていたのでしょうか?

この事故には、数多くの要因がありました。この部隊の隊員たちからの事情聴取や非公式の会話を通じて、その問題、あるいはその問題に対する自分の理解を指摘することができました。このことが、この調査を私にとって非常に印象に残るものにしたのです。担当将校や航空安全将校は、任務以外のことに目を向けようとせず、それは小隊の隊風になっていました。安全は、ほとんど顧みられることがなかったのです。

航空安全将校は、正式な機長訓練プログラムが行われておらず、そのことが、操作員が自信をもって状況判断できなかった原因となったことを認めました。残念なことに、自信のない操作員が経験不十分な指揮官(運用技術者)に指示(または確認)を受けたがために、この事故が起こってしまったのです。包括的安全プログラムが実施され、任務と同じように重視されていれば、この事故は避けることができました。

部下に対し任務を安全に完遂するために必要なツールを提供することは、指揮官の責務です。そのことにより、的確な判断を行うために必要な自信を与えることができるのです。

                               

出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2019年05月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

アクセス回数:2,747

コメント投稿フォーム

  入力したコメントを修正・削除したい場合やメールアドレスを通知したい場合は、<お問い合わせ>フォームからご連絡ください。

1件のコメント

  1. 管理人 より:

    陸自的には、まず、操作員が無帽というのが信じられないですよね。