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陸軍航空の情報センター

計画を守れ

上級准尉3 アエンドリ・デッカー
イリノイ州兵陸軍航空隊第106強襲ヘリコプター大隊第1中隊Bカンパニー
イリノイ州カンカキー

著者注:訓練であれ実任務であれ、任務には本質的に危険が伴います。したがって、任務を成功させるためには、危険管理のための方策を確立し、これを厳格に遵守しなければなりません。本稿では、訓練中に、確立されていた危険管理のための方策が軽視され、事故になりかけた不安全事例を取り上げます。その事案が発生する前の計画、事案の経過、そして事後に得られた教訓の順に説明します。

2022年7月、私が所属するUH-60医療後送部隊は、テキサス州フォート・ブリスで実施された「セージ・イーグル」訓練演習に参加しました。この統合演習において、我々のクルーには、市街地戦闘訓練場(military operation in urban terrain, MOUT)での深夜の患者搬送訓練任務が付与されました。私が副操縦士(Pilot, PI)として割り当てられた機体は、ベテランの教官操縦士(Instructor Pilot, IP)が機長(Pilot in Command, PC)を務め、経験豊富な機付長と救難員が同乗していました。任務要求書には日時、搭乗者、おおよその場所が明記されており、事前の計画立案、訓練および降着地域(Landing Zone, LZ)の偵察に数日間を充てることができました。

任務前の計画立案は、教場で、飛行経路、経路逸脱時の手順、通信要領、既定のLZに関する安全ブリーフィングを受けることから始まりました。そして、昼間および暗視眼鏡(Night Vision Goggles, NVG)を使用した夜間に、周辺地域の慣熟飛行を実施しました。また、ダスト・ランディングの訓練も、砂塵のない状態から濃厚な砂塵状態へと段階を踏む「クロール・ウォーク・ラン(這う・歩く・走る)」方式で行いました。

任務当日、我々は指定された座標の昼間偵察飛行を行い、LZを選定しました。砂塵が少なく、MOUT訓練場から十分な距離を確保できる地点を選びました。PCは地上部隊に正確な座標を伝え、初期の合図にはケミカルライトを束ねて振り回す光の輪(バズソー)、LZの表示には逆「Y」字を使用することを確認しました。危険見積(Risk Common Operating Picture)も問題なく完了しており、我々は計画に自信を持っていました。

日没後、出発前の準備をすべて終えると、LZへ向けて出発しました。MOUT訓練場周辺の照明はごくわずかでしたが、それはこの地域では通常のことでした。到着に先立って、私が主として操縦を担当し、PCが航法と通信を担当することを取り決めました。しかし、PCは地上部隊との確実な通信を確立できませんでした。訓練環境では地上・航空間の通信が不安定になることもあるため、我々はこれを些細な問題として片付けてしまいました。

現地に到着すると、選定していたLZには車両や人員が展開していることが判明しました。LZは、MOUT訓練場の反対側に移動されていました。訓練できていない場所への変更に苛立ちを覚えましたが、低空通過による確認の後、当該区域は使用可能と判断しました。ショート・ファイナルに入ると、砂塵が立ち始めました。その量は予定していたLZよりも著しく多く、最終的には完全なブラウンアウトに至りました。

砂塵の中に進入しても、私は逆「Y」字を視認できていました。しかし、ブラックホークが接地しかけたとき、地面に固定されていなかったケミカルライトが四方に吹き飛ばされ始めました。このため、視覚的な基準の維持が極めて困難になりました。機付長から、地面を視認できているとの報告があったため、パワーを絞ると、尾輪が接地する感覚がありました。その直後、機体がロール軸方向に傾き始めました。着陸継続に不安を覚えたPCは、着陸復行を宣言しました。私もこれに復唱で応じました。

PCの援助を受けながら水平姿勢を維持しつつ、パワーを増加して砂塵の雲から垂直に脱出しました。我々は、MOUT訓練場からより離れているものの、当初偵察していたLZに近い場所に代替着陸地点を設定することとしました。そこへの着陸は成功して搭乗者を収容し、以後は特段の問題なく任務を完了しました。

教訓

検討会(After-Action Review, AAR)において、この事案は不安全事例であったと結論付けられました。もし着陸を継続していれば、機体はさらにロールを続け、ダイナミック・ロールオーバーに至った可能性がありました。

我々は、以下のとおり、いくつかの主要な危険要因を特定しました。

最も重要な結論は、任務において、不測事態への備えとリハーサルが極めて重要であるということです。地上部隊を交えた入念な事前リハーサルを実施していれば、全参加者の認識を一致させ、LZを移動したり、通信が途絶したりした際の手順を確立できたはずです。機内での意思疎通と着陸復行の即断により、惨事に至らずに済みましたが、地上部隊との連携がもっとできていれば、そもそも危険な状況自体を回避できていたはずです。

豆知識

陸軍安全管理情報システム(Army Safety Management Information System, ASMIS 2.0)の事故・不安全事例報告アプリケーションは、あらゆる区分の事故および不安全事例を報告する手段を提供しています。このツールは、安全担当者の報告負担を軽減するとともに、必要データ量を削減し、陸軍の全階層において事故・不安全事例の可視性を高めることで、意思決定の改善を図るために作成されました。

詳細はhttps://mishap.safety.army.mil/を参照してください。


本稿で示される見解は、特に断りのない限り執筆者個人のものであり、陸軍省の公式見解を示すものではありません。

訳者コメント:本記事はRisk Management Magazine(米陸軍戦闘即応センター発行)2026年7月12日掲載の「Stick to the Plan」です。イリノイ州兵UH-60医療後送クルーが、2022年7月のセージ・イーグル訓練演習(フォート・ブリス)中に経験した、LZ変更に伴うブラウンアウトとダイナミック・ロールオーバー寸前のニアミス事例を扱っています。 翻訳にあたり、初出の「chemlight buzzsaw」については、原文には具体的な動作の説明がないため、読者の理解を助けるよう「ケミカルライトを束ねて振り回す光の輪(バズソー)」と補足説明を加えました。事実関係を変えるものではなく、用語の意味を補う趣旨の追加です。
                               

出典:Stick to the PlanRisk, Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2026年07月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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