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陸軍航空の情報センター

FODとは何か?

FOD(Foreign object debris, 異物 )に対する意識の強化

上級准尉4 ロバート・L・モーラン
事故調査、報告および継続監視
米陸軍戦闘即応センター
アラバマ州フォート・ラッカー

飛行前、飛行後、その他の整備作業などの最中に、機体や車体の中で、あってはならないものを発見したことがありますか?それは、靴に挟まっていた小石かもしれないし、整備作業中に使ったボルト類かも知れないし、それ以外の異物かも知れません。これらの異物は、装備品を損傷させ、事故や不安全の要因となる可能性があります。

FODという言葉を今まで聞いたことがない人はいないと思いますが、安全教育でしか聞いたことがない人は多いかも知れません。エプロンを歩きながらFODを拾うのは、時間の無駄だと思われがちですが、重要な意味を持つFOD対策なのです。FODとは何なのか、そして、どんな影響を及ぼすものなのか、考えてみましょう。

FOD(foreign object damage, 異物損傷)は、陸軍規則385-10により、「陸軍の車両、装備または財産に対する、当該車両等以外に由来する物体による損傷」と定義されています。ただし、航空機用タービン・エンジンは、その対象に含まれていません。その原因となる物体は、「異物」と呼ばれますが、FOD(foreign object debris)と呼ばれることもあります。FODには、コッター・ピンや安全線の切れ端、ボルトやリベット、さらには整備後に残置された工具などが該当します。これを機体に残さないようにするため、数多くの対策が行われていますが、人的ミスを完全になくすことはできません。FOD防止の第1線で勤務する兵士たちは、整備作業中、常に整理整頓に着意しなければなりません。また、整備作業の前後には、工具およびボルト類の確認を怠ってはなりません。

過去2年間に有人および無人航空機の双方で26件のFODによる事故が発生し、約470万ドルの損害が生じています。これらの事故は、すべて、確認を怠りさえしなければ避けることのできた事故なのです。FODを防止するために必要なのは、厳格な規律と監督です。DA PAM(Department of the Army Pamphlet)385-90の第2-8項には、「FOD防止対策を効果的に実施することにより、物資、隊力および経費を節減し、戦闘即応態勢の改善を図ることができる。このため、FOD防止は、各部隊における航空事故防止対策の主要事業として位置づけられなければならない」と記述されています。各部隊が作成する部隊SOP(standard operating procedure, 作戦規定)は、DA PAM 385-90に示された事項を網羅するとともに、部隊のニーズに合ったものでなければなりません。

かつて、DCMA(Defense Contract Management Agency, 国防契約管理局)で勤務した私は、軍用機の製造におけるFODおよび器材管理は、DCMAおよび国防企業の双方にとって重要な関心事項であることを知りました。ボルト類や金屑が製品に機体に残置されないようにするために、数多くの対策が実施されていました。中でも、金屑の残存を減少させるためには、継続的な確認と監督が強調されていました。

機体にFODが発見された場合は、その報告に基づき、企業側と政府側の代表者による原因の究明と対策の検討が行われて、再発の防止が図られていました。私の経験に基づけば、陸軍航空においては、これほどの対応は行われていないと思います。FODが機体で発見されても、通常は、それを除去するだけで、報告されることはまれなのではないでしょうか。これは、FODが発見された場合の対応として、適切ではありません。

FOD対策を推進するためには、それを報告することが必ず必要です。また、兵士たちに、整備中になくなった物は必ず探しだすという規律を徹底することも非常に重要なことです。操縦装置の下に落ちたコッター・ピンの破片を探すことは、たとえどんなに時間がかかっても、航空機が飛行中に不具合を起こすことに比べれば、はるかにましなことなのですから。

                               

出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2019年01月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    本記事では、FODは、Foreign Object DamageとForeign Object Debrisの双方の略語(頭字語)として用いられています。つまり、「FODを防止する」と「FODを拾う」のどちらの使い方も正しいようです。(AR 310-50 Authorized Abbreviations,Brevity Codes,and Acronymsには、Foreign Object Damageの方だけが掲載されています。)