備えはできていますか

私はこの話を、いつも「あれは100パーセント私の責任でした」という言葉から始めます。プライドを捨て、私がクラスDの事故に至った経緯をここに紹介します。
私は、教官操縦士課程を卒業して4か月の新米の教官操縦士(IP, instructor pilot)として、フォート・ラッカーの第22飛行学校(FSXXII, Flight School XXII)に配属されていました。新任の上級准尉3だった私は、ブラック・ホークでの飛行時間が約1,200時間でした。教官操縦士課程を終えて4か月、飛行時間1,200時間――この数字に見覚えはありませんか?私には見覚えがあります。「統計」と題されたパワーポイントのプレゼンテーションで、似たような数字を見たことがあるはずです。それは、パイロットであれば誰でも受けている講義――飛行時間と経験を積んだパイロットが陥りがちな油断について論じるものでした。
私は、その講義を受けた時、「自分はこれまで事故を起こしたこともないし、自分の仕事も分かっている。だから、彼らが話しているのは私のことであるはずがない」と思っていました。ところが、彼らが話していたのは私のことであっただけでなく、私はそのテーマの象徴的な存在にさえなり得たのです。これを読んでいる方には、私が何を言っているのか理解していただけるでしょう。
事故発生時、私には非常に優秀な学生がいました。その学生は常に準備を怠らず、熱心に学んでいました。ある金曜日の午後、我々は近郊の訓練場で、ホバリング時の単発エンジン故障の訓練を行っていました。学生たちには、ある共通の傾向がありました。機体のすぐ下の整地された地面に着陸するのではなく、まるでエンジン故障が高度のある前方飛行中に発生したかのように、ホバリングを維持したまま手順を開始しようとするのです。私は学生に、一度フォート・ラッカーを卒業した後は、単発エンジンではホバリング能力を維持できない機体や環境に身を置く可能性が高いことを説明しました。私は言いました。「着陸適地の上空でホバリング中にエンジンを1基失った場合は、もっと積極的に機体を接地させなければならない。緊急操作手順(EP, emergency procedure)は地上で実施するのである。」それが間違いその1――言葉遣いでした。
その学生は週末の間ずっと、次にホバリング中にエンジン故障が模擬された際に、いかにしてより積極的に行動するかを考えていました。月曜日の朝、我々は再び訓練場にいました。私はその学生に、機体をホバリングさせ、左に90度旋回するように指示しました。それからの私の行動は、この学生が前の週の訓練でホバリング中の緊急操作が少し遅かったことに基づくものでした。私は旋回中に緊急操作訓練を開始しました。その学生は旋回を終えてから反応し、機体を接地させて、手順を行うだろうと考えたからです。間違いその2――緊急操作訓練の実施要領が不適切だったことです。
私がパワー・コントロール・レバーを絞ろうとして手を伸ばした途端、学生は急激にコレクティブを下げました。まだ旋回中の機体の尾輪が地面に激突し、もぎ取られました。この緊急操作訓練中にコレクティブを速く下げすぎることも、学生によく見られる傾向です。そのため、教官操縦士課程では必ずコレクティブをガードするように教えられています。私のように、その下に指を数本添えているだけではいけないのです。また、旋回中に緊急操作訓練を開始していなければ、着陸装置は何事もなく着陸の衝撃を吸収していたでしょう。
私はどこで間違ったのでしょうか。学生にもっと積極的に行動するように言ったのは、言葉の選択が不適切でした。次に、緊急操作訓練の実施要領も不適切でした。すでに述べたように、もし車輪が横方向に衝突しなければ、事故は起こらなかったでしょう。そして、もうひとつの要因は、我々全員が警告されていたもの――油断でした。その学生は優秀でしたが、最高の学生でさえ、時にはあなたを驚かせることがあるのです。あなたは、備えができていますか。
出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2025年08月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
アクセス回数:132
コメント投稿フォーム
1件のコメント
この記事の内容は、次の記事とほぼ同一です。
https://aviation-assets.info/risk-management/poster-child/