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陸軍航空の情報センター

航空事故回顧-UH-60Mの雪上着陸時の事故(NVG使用中)

当該機は、HLZ(helicopter landing zone, ヘリコプター降着地域)への最終進入中にホワイト・アウト状態となり、樹木に向かってドリフトした。機体が樹木に接触し、メイン・ローター・ブレードおよびテール・セクションが損傷した。機体にはクラスAの損傷が生じたが、搭乗員および搭乗者に重大な負傷はなかった。

飛行の経過

当日の任務は、昼夜間の空中機動、昼夜間の編隊飛行、および昼夜間の超低空飛行を伴うものであった。月照度は25% 以下で、月の高度は30度未満であった。気象は、雲高1,000フィート未満(700フィート以上)、視程3マイルと予報されていた。当該編隊を構成する4機の機体は、ヨーロッパ支隊の航空展開部隊に所属していた。

当該飛行任務は、ブリーフィングで示されていた最低気象条件を満たさなかったため、天候が回復するまで延期されることになった。各機長は、それぞれの搭乗員との任務ブリーフィングを完了し、その後、機体の地上試運転を異状なく終了した。天候が回復しないため、昼間の飛行任務は中止となった。その後も、搭乗員たちは待機を継続した。天候が回復し始めたため、編隊指揮官は、訓練課目にDVE(degraded visual environment, 悪視程環境)を追加することについて、機長および任務担当士官と検討した。その際、雪による悪視程環境下での着陸技法についても話し合われた。離陸前に新たな気象状況が入手されると、長機の機長から、PZ(Pickup Zone, 搭載地域)への着陸は単機ごとに実施したいとの意見具申があった。編隊指揮官は、その提案に同意した。

編隊は、4機編隊でPZに向けて離陸した。最初に、長機である1番機が進入を開始した。その間、他の機体は、時間的および位置的間隔を保持するため、空中で待機した。1番機は、25ftでホバリングに移行した後、Z軸プランジを押してホバリング・ホールドに移行し、VS-17パネルの左側に移動した。他の機体も、PZに1機ずつ問題なく着陸し、搭乗者を搭載し、LZ(landing zone, 降着地域)に向けて離陸した。

短時間の飛行の後、編隊は、LZ(最も狭い部分が、長さ約182m、幅35m)の上空に到着した。垂直障害物は、樹木(高さ平均約70フィート)だけであった。事故発生地点は、約5~7度の上り勾配であった。LZには、PZと同じ要領で着陸することになっていた。PZではVS-17パネルが設置されていたが、LZには補助目標がなかった。搭乗員が使用するデジタル・ミッション・パケットには、指定された着陸地点のすぐ先にあるポップアップ・ターゲットが強調表示されていた。

当該機(1番機)が進入を開始した。機長は、積雪により視覚的補助目標を見誤り、着陸予定地点を北西に約 75 メートル超えた地点に進入した。15フィートの高度でホバリング停止すると、すぐに機体が雪煙に覆われてしまった。機長は、サイクリックにあるZ軸プランジを押して、ホバー・ホールドに移行しようとした。しかし、機体が安定したホバリング状態にないため、当該モードは有効にならなかった。

機長は空間識失調に陥り、無意識にサイクリックを左に倒してしまった。左側のクルー・チーフが左ドリフトを報告したが、さらにドリフトを続け、メイン・ローター・ブレードが樹木に接触した。機体は、90度旋回し、4枚すべてのメイン・ローター・ブレードがスピンドルの位置でメイン・ローター・ヘッドから完全に分離した。その後、LZ北側の林の中で停止した。

搭乗員の練度

事故機の搭乗員(1番機)

左の操縦席に搭乗していた機長の総飛行時間は990.7時間、NVG飛行時間は226時間であった。副操縦士の総飛行時間は191.9時間、NVG飛行時間は42.7時間であった。左側のクルー・チーフの総飛行時間は386.4時間、右側のクルー・チーフの総飛行時間は439.8時間であった。

考 察

雪やほこりの多い環境で着陸する際には、地上の補助目標を視認できなくなった場合に、直ちに計器飛行に移行して離陸できるように準備しておかなければならない。予期していなかった天候急変等による計器飛行状態に遭遇した場合には、機体の制御を適切に維持しつつ、計器飛行方式に移行し、上昇を開始することが重要である。その回復操作中は、確実に上昇して障害物を回避するため、姿勢、機首方位、トルク、トリム、および対気速度を継続的にクロスチェックすることが必要である。また、操縦中のパイロットの操作をクロスモニターすることも必要である。IIMCからの回復操作に関するシミュレータ訓練においては、山岳地帯、NVG、低対気速度状態など、さまざまな状況での訓練が可能となっている。

加えて、UH-60搭乗員訓練マニュアルのタスク1058に記載されているとおり、雪またはほこりを伴う着陸は、地表面上または地面効果外ホバリングのいずれかの時点で終了させなければならない。環境適合訓練は、部隊が運用される特定の環境における乗組員の習熟度を高め、維持するために不可欠である。寒冷地、砂漠、ジャングル、山岳、および海上での運用に際しては、TC3-04.11に従った座学および実飛行訓練が必要であることを忘れてはならない。

                               

出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2023年03月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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