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陸軍航空の情報センター

ATECによる安全リリース(Safety Release)プロセスの合理化

ディアドラ・サンプター
テクニカル・ディレクター
米国陸軍評価センター

安全は ATEC (U.S. Army Test and Evaluation Command, 米国陸軍試験評価コマンド) における最も重要な考慮事項の一つです。安全性の確認は、陸軍上層部が特定の装備品を第一線の隊員に交付すべきか否かを決心する際の重要な支援材料となるためです。ATECは今日、陸軍の変革を支援するため、安全リリースのプロセスを大幅に合理化し、厳格さを保ちつつ迅速化を図ることで、これまで以上に素早く極めて重要な装備システムを部隊に届ける一助となっています。

安全リリースとは、部隊の隊員が試験や実験において未制式の装備システムを使用する際に発出される文書です。これらの安全リリースが特に不可欠となるのは、実動部隊が実際の作戦環境下で各企業のさまざまな試作装備品を試験運用する、陸軍の主要な実験的演習「Transformation in Contact(実動部隊における変革)」を支援する場合です。

AEC (Army Evaluation Center, 陸軍評価センター) は最近、ドイツで実施された C-UAS (Counter-Unmanned Aerial Systems, 対無人航空機システム) 演習「Operation Flytrap 4.5」、ハワイの統合太平洋多国籍即応センター(Joint Pacific Multinational Readiness Center)における第25歩兵師団のローテーション訓練、そして小規模企業向けプログラム「xTech Overwatch」といった3つの大規模な陸軍実験演習を支援しました。この間、AECのチームは小型 UAS (Unmanned Aerial Systems, 無人航空機システム)、UAS用ペイロード、およびパッシブ/アクティブC-UAS技術向けだけで34件以上、さらに C5ISR (Command, Control, Computers, Communications, Cyber, Intelligence, Surveillance and Reconnaissance, 指揮・統制・計算機・通信・サイバー・情報・監視・偵察)、地上機動システム、および各個戦闘装備を支援するその他19件の安全リリースを起案しました。チームはまた、xTechのプログラム室や第25歩兵師団へ赴き、現地での評価支援を実施しました。こうした安全リリースは、陸軍が新興技術を迅速かつ安全に評価し、変革構想を推進する能力の基盤となっています。

現場のニーズへの対応

これまでATECは陸軍規則に基づき、特定の部隊、演習場などの特定地域、および特定の有効期限に限定した安全リリースを作成・発出していました。また、その危険見積は総じてリスク回避に偏重しており、平時の訓練成果よりも、リスクを極限まで低減させることに重きを置いていました。しかし、陸軍が急速な技術革新と実験的運用へ舵を切り、訓練成果を最大化するために積極的にリスクを管理したいと要望したことを受け、ATECは方針を転換しました。ATECは過度に制限的な文言を削除し、特定された各危険に対するリスク軽減前および軽減後の危険見積を併記するよう、安全関連文書を改善しました。これにより部隊長には、訓練目標とバランスを取りつつリスクを管理・受容するための選択肢が提供されます。

ATECはまた、管理手続きを見直すことで安全リリースプロセスを迅速化させています。具体的には、文書を発出する署名権限をATEC内部の最下層レベル(実務レベル)に委任して決裁を早める一方で、安全リリースの宛先をより上位の指揮階梯とすることで広範な部隊を一括してカバーし、さらに一部の安全リリースの要件を一時免除するなどの措置をとっています。さらに、ATECは以下の4つの施策を実施し、安全リリース・プロセスをより一層加速させています。

ATEC安全リリース・データベースへのアクセス。このデータベースは、CAC (Common Access Card, 共通アクセス・カード) を保有するすべての陸軍ユーザーに公開されています。ユーザーは、装備システムまたは実験演習ごとに発出済みの安全リリースを検索できます。開発中の装備システムは仕様変更が起こり得るため、部隊の安全幹部はATECと連携し、部隊の使用目的に直接合致した最新の安全リリースを確実に入手しなければなりません。安全性に影響を及ぼす変更が生じた場合、または安全リリースが失効した場合、ATECは今後の部隊行動を支援するため、修正版の安全リリースを発出します。

有効期限の延長または無期限化。ATECは、装備システムの形態(ハードウェアまたはソフトウェア)の改修や変更がないことを条件として、有効期限を延長した、あるいは無期限の安全リリースを発出できます。同一の装備システムによる継続的な実験が予定または予測される場合、部隊の安全幹部は、最終的な文書が部隊の要求を満たすよう、ATECの POC (Point of Contact, 窓口担当者) と綿密に調整する必要があります。またATECは、管理上の変更事項に対しては、過去の安全リリースを速やかに修正することが可能です。

包括的安全リリース。ATECは、国防契約管理局が承認したUASブルーリストに掲載されている、グループ1およびグループ2の非武装・ COTS (Commercial-Off-the-Shelf, 民生品) の sUAS (small Unmanned Aerial Systems, 小型無人航空機システム) 向けに、共通のリスクと軽減策を記載した安全リリースを発出しています。この包括的安全リリースにより、ブルーリスト掲載の非武装・民生sUASを隊員が使用する際の危険見積情報が提供されるため、新たな安全リリースを個別に取得する必要がなくなります。

教材。ATECはUASコミュニティと連携し、安全に関する図解教材を開発するべく積極的に取り組んでいます。これは、潜在的な危険や推奨される軽減策に対する隊員の理解と定着を深め、部隊使用時のリスクを極限することを目的としています。

ATECは、隊員の安全に対するリスクを極限するために必要な情報を指揮官等の意思決定者に提供しつつ、迅速な装備化を求める陸軍の要求を支援するため、引き続き機敏に対応していきます。下図は、従来の安全リリースのプロセスと迅速化されたプロセスを比較したものです。

安全リリースは、部隊長の危険見積において不可欠な情報基盤です。ATECは、部隊長が十分な情報に基づき状況把握・リスク判断を行えるよう支援するとともに、スピードと厳格さをもって陸軍の変革を推進することに引き続き尽力していきます。

                               

出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2025年12月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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