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陸軍航空の情報センター

上昇中のエンジン故障:CRMとリーダーシップの実践

筆者匿名

フォーラム:論説・意見・アイデア・情報

本欄の見解は専門的な議論を喚起するためのものであり、米陸軍または米陸軍戦闘即応センターの方針ではありません

クルー・リソース・マネジメント(Crew Resource Management, CRM)は単なる流行語ではなく、陸軍航空の戦闘力を倍加させる要素です。航空機のシステムは何の前触れもなく故障することがありますが、統制のとれたコミュニケーション、明確に定められた役割分担、そして乗員相互の信頼があれば、その緊急事態が事故に発展するのを防ぐことができます。CRMは、ワークロードが分担され、決心が熟慮のうえで行われ、重要な操作がためらいなく実行されることを保証します。C-12のような高性能の多発機の場合、一刻を争うような飛行フェーズを生き残れるかどうかは、個人の技量よりも、クルーがチームとしてどれだけ有効に機能するかにかかっていることが多いのです。

米陸軍のあるC-12は、定期的な技量評価を実施中、上昇中の片発エンジン故障に見舞われました。クルーは機長(Pilot in Command, PC)と副操縦士(Pilot, PI)からなり、副操縦士が操縦を、機長がモニターを担当していました。飛行前ブリーフィングは通常どおり行われ、燃料補給直後に採取した燃料サンプルにも異状は見られませんでした。ただし、このサンプル採取は整備実施規定に従ったものではなかったことが後になって判明します。

離陸した機体は、標準的な戦術的離陸プロファイルに従い、平均海面高度(Mean Sea Level, MSL)約4,000〜5,000フィート(約1,220〜1,520メートル)、対地高度(Above Ground Level, AGL)にして約3,000〜4,000フィート(約910〜1,220メートル)を上昇していました。最初の徴候が現れたとき、機長は周波数を変更するため一時的に下を向いていました。はっきりと分かるヨーイングが生じ、その直後にプロペラがオートフェザリングしたのです。機長が顔を上げると、No.1エンジンのトルクが低下していくのが目に入りました。ほぼ同時に、副操縦士が「No.1エンジン停止」と発唱し、パワー・レバーに手を伸ばしました。

クルーは航空管制機関(air traffic control, ATC)と交信して緊急事態を宣言し、計器着陸装置(Instrument Landing System, ILS)進入のためのレーダー誘導を要求しました。出発飛行場の近くにとどまるというこの判断には、明確な理由がありました。双発機では、一方のエンジンが故障すれば、残るエンジンの信頼性への疑念が直ちに生じます。飛行場から遠ざかることは、不必要にリスクを増大させることになります。クルーは進入を開始し、その後は何事もなく着陸しました。

飛行後の点検で、燃料の汚染が明らかになりました。着陸後に採取した燃料サンプルには、明白な汚染の痕跡が認められました。飛行前のサンプルは燃料補給の直後に採取されており、これは規定に従った手順ではありませんでした。(訳者注:陸軍機においては、その日の最終飛行の着陸後に給油し、翌日の飛行前点検でサンプルを採取するように規定されています。)さらに、当時は把握されていなかったことですが、新たに契約した燃料供給業者がPRIST添加剤(PRIST additive)を使用していなかったため、燃料系統内で微生物が繁殖していたことも判明しました。またこの機体は、直近3か月の間に2回、燃料流量指示の不具合により、燃料コントロール・ユニット(fuel control unit)を交換していました。その他のシステムはすべて安定しているように見えましたが、この一連の傾向には疑念を抱くべきでした。

機長は後日、燃料がしばしば異常に黄色みを帯びて見えていたと振り返っています。しかし今回に限っては、燃料は透明で、通常の見た目をしていました。以前に燃料の色の変化について質問した際には、契約が変わったからだと説明されていました。そのときは、その回答をそのまま受け入れていました。得られた教訓は明白です。機長たる者、その注意はコックピット内の手順にとどまってはならないということです。その監督責任には、整備の傾向、繰り返し発生する不具合、さらには燃料の品質に注意を払うことまでもが含まれます。何かがおかしいと感じたら、実際におかしいと考えるべきなのです。

この事案が発生した当初、副操縦士は、技量評価という状況もあり、エンジン故障は模擬かもしれないと考えました。しかし、その疑念はすぐに消えました。それは、飛行前ブリーフィングが徹底したものだったおかげでした。クルーは、離陸時にエンジン故障が起きた場合に事象がどのような順序で進むか、そしてどう対処するかを、事前に明確にしていたのです。こうした共通認識が確立されていたため、副操縦士は「評価の一部だろう」という思い込みから「実際の緊急事態だ」という認識へと素早く切り替えることができました。この明確さが副操縦士のためらいを防ぎ、役割の遂行を確実にし、両操縦士が即座に、かつプロフェッショナルに対応することを可能にしたのです。

この事例の要点は、3つの基本に集約されます。徹底した飛行前ブリーフィング、統制のとれたCRM、そしてコックピットの外にまで注意を払うという機長の責任です。質問を促し、想定される事態を明確に定める詳細なブリーフィングは、異常事態が生じた際の果断な行動の条件を整えます。有効なCRMは、役割が理解され、プレッシャー下でもワークロードが適切に管理されることを保証します。同時に、機長の責任には、機体を操縦することだけではなく、整備の傾向、燃料の品質、その他飛行の安全に影響するあらゆる要因への注意を保ち続けることが含まれています。

この事案において、状況の悪化を防いだのは、運ではありません。それは、強固なクルー・コーディネーション、統制のとれた手順の実行、保守的な意思決定、そして操縦操作の枠を越えたリーダーシップでした。クルーは訓練どおりに対応し、その結果、機体は片発状態でも無事に着陸できたのです。

訳者コメント:米陸軍航空科の将校は原則として全員が操縦資格を持つ操縦者であり、整備部門の指揮官も操縦者が務めます。一方、陸上自衛隊では整備班長は整備幹部(非操縦者)です。本記事が示す、燃料の色の変化や整備実績の傾向への注意という教訓は、陸自においては燃料サンプルの採取を行う整備員を指揮・指導する整備班長が、その責務として強く自覚すべきものであると考えます。
                               

出典:Engine Failure in Climb: CRM and Leadership in Action, FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2026年07月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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