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陸軍航空の情報センター

航空事故発生状況:UH-60Mのハード・ランディング

事故調査および対策部局(Directorate of Analysis and Prevention, DAP)
米陸軍戦闘即応センター航空部

悪視程環境(degraded visual environment, DVE)訓練を実施中のUH-60Mの搭乗員がハード・ランディングし、機体が損傷したが、搭乗員に負傷はなかった。

概要

UH-60Mが、投下・降下地域(drop zone, DZ)における悪視程環境訓練中にハード・ランディングした。この事故により機体が損傷し、副操縦士側のチン・バブル(chin bubble)が破損した。搭乗員は直ちに着陸復行を実施し、陸軍飛行場まで飛行して機体を停止させた。搭乗員の負傷は報告されていない。

背景

機長(pilot in command, PC)、副操縦士(pilot, PI)および機付長(crew chief, CE)2名の搭乗員は、計画された悪視程環境訓練を実施するため陸軍飛行場を離陸した。航空機整備記録上も飛行前点検時も、機体に既知の不具合は認められなかった。搭乗員は、危険見積(Risk Mitigation and Crew/Operations Plan, RCOP)に基づき、実際のダスト・ランディングに移行する前に、悪視程環境ではない草地で着陸要領を演練することにしていた。

発生状況

投下・降下地域に到着した搭乗員は、クルー・コーディネーションと操作要領を演練するため、草地への進入・着陸を数回練習した。訓練の悪視程環境の科目に進むにあたり、搭乗員全員が、余裕をもって的確に実施できる状態にあるとの認識で一致した。

続いて搭乗員は、砂塵が舞い上がる適当な区域を選定し、悪視程環境着陸を開始した。機長が最初の模範進入を行い、これを成功させた。次いで副操縦士が操縦を交代し、悪視程環境着陸を約5回実施したが、うち1回は着陸復行を要した。搭乗員は、副操縦士の実施要領を的確かつ安全であると評価した。

その後、飛行場へ燃料補給に向かう前に最後の悪視程環境着陸を行うため、機長が操縦を交代した。進入は、定められた要領に従い、予定接地点の手前約1キロメートルから開始された。機体は、接地点まで0.1キロメートル、高度約35フィート(約11メートル)の地点で、対地速度約30ノット(時速約56キロメートル)まで減速した。機長は、機首上げ姿勢をとって最終減速に入った。

機体が降下するにつれ、ダウン・ウォッシュによって巻き上げられた砂塵が機体を包み込み、操縦席からの視界を奪った。機長は高度約6〜8フィート(約2メートル)で機体を水平にし、着陸の衝撃を和らげるためわずかに出力を上げた。接地の瞬間、搭乗員は鋭い破裂音を聞き、機体が機首下げとなって左に傾く、「不自然」で「不安定」な挙動を感じ取った。これと同時に、機付長の1名が内部通話装置(internal communication system, ICS)で「着陸復行」を要求し、機長は着陸復行に移った。

発生後の対応

機長は機体を上昇させ、塵雲から脱出させた。脱出後、搭乗員は副操縦士側のチン・バブルが破損していることに気付いた。機長は、損傷の状況と、このまま陸軍飛行場へ直接帰投する意図を機内に伝えた。その際、搭乗員全員に負傷がないことを確認した。

飛行場への帰投中、機長は管制所と交信し、ハード・ランディングが発生したこと、および機体をシャット・ダウンする必要があることを通報した。機長は、機付長による降着装置の目視点検を踏まえて着陸に支障なしと判断した。その後、機体は問題なく着陸したのち、エンジンを停止させるためエプロンへ地上滑走した。

機長は、部隊の初動対処計画に従い、任務担当士官、中隊の航空安全担当士官(aviation safety officer, ASO)および大隊副隊長に対して所要の報告を行った。帰投後、搭乗員は受診し、異常なしとして解放され、事故に関する供述を航空安全担当士官に対して行った。

搭乗員の技量

機長はレディネス・レベル1(RL1)かつ飛行従事区分(Flight Activity Category, FAC)1で、総飛行時間は532時間であった。副操縦士はRL1かつFAC1で、総飛行時間は334時間であった。機付長1はRL1かつFAC1で総飛行時間334時間、機付長2はRL1かつFAC1で総飛行時間108時間であった。

所見

本件は、悪視程環境に陥ってハード・ランディングに至った航空機事故として、本会計年度に報告された唯一の事例である。搭乗員は投下・降下地域へ有視界気象状態で進入していたが、操縦していた操縦士が悪視程環境着陸中に過大な操縦操作を行ったことにより、損害額合計571,679ドルのクラスC事故となった。

このほか、UH-60L2機による編隊が順次に駐機場へ進入した際、2番機がホワイトアウト状態に陥り、地面効果外ホバリングで15〜20秒間にわたり地表を視認できなくなったという航空不安全報告があった。この搭乗員は、上昇に移って前進飛行に転じる過程で誘導路灯を再び視認し、機体を安全に着陸させた。

訳者コメント:本記事は、Flightfax 2026年8月号「Mishap Review: UH-60M Hard Landing」の全訳です。悪視程環境訓練中のUH-60Mが投下・降下地域でハード・ランディングし、副操縦士側のチン・バブルが破損したクラスC事故(損害額571,679ドル)を扱っています。悪視程環境に起因するハード・ランディングとして本会計年度に報告されたのは、この1件のみです。草地での慣熟を経てダスト・ランディングに移行し、副操縦士による約5回の着陸の後、機長自身が行う最後の1回で発生しました。
                               

出典:Mishap Review: UH-60M Hard Landing, FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2026年08月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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