航空事故回顧-AH-64のメイン・ローター・システムの不具合
当該AH-64Dは、レディネス・レベルの昇格をねらいとした昼間飛行訓練を実施していた。対地高度718フィート、真対気速度129ノットで直線水平飛行中に、ストラップ・パック・アセンブリのラミネートが疲労破壊して引っ張り荷重が過大となり、No.2 メイン・ローター・ブレードが飛散した。当該飛行を開始する前から、No.2 アウトボード・ストラップ・パック・ボルトのリテーナー・ナットが応力腐食割れにより破断し、アウトボード・ストラップ・パック・ボルトの締め付け荷重が減少していたものと推定される。メイン・ローター・ブレードの飛散により、当該機は、操縦不能状態に陥って墜落し、死亡事故の発生に至った。
飛行の経過
事故機のパイロットは、部隊が所在する飛行場から離陸した後、飛行場上空において1.4時間の飛行を行いながらレディネス・レベルの昇格に必要な基本的な課題を実施した。その後、通常の経路を経由して飛行場上空から離脱し、近郊の訓練地域に向かい、ノース・チェックポイントを通過した。マスト・ベースからマストが分離した状態となり、操縦不能となって墜落した。2名のパイロットが死亡し、機体は損壊した。
搭乗員の練度
機長は、教官操縦士および整備確認飛行士の資格を有しており、当該機種での飛行時間は2,477.8時間、総飛行時間は2,616.7時間であった。副操縦士は、当該機種での飛行時間は86.1時間、総飛行時間は170.2時間であった。
考 察
この事故のように、飛行中の器材上の不具合は、悲惨な結果をもたらす場合がある。
試験飛行操縦士、教官操縦士、パイロット、航空整備士および検査官は、適切な手順に従って整備検査および飛行点検を実施するように、不断の注意を払わなければならない。
飛行部隊の要員が、既成概念にとらわれず、その経験および訓練を生かせるかどうかは、自らの自覚によるところが大きい。パイロットおよび整備員の特技を有する者は、飛行安全の確保に直結する部品について、それが要修理品なのか、使用可能品なのかを確実に判断できない場合など、その品質に疑問が生じた場合には、所要の処置を講ずるとともに部隊長への報告を行わなければならない。
出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2018年09月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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2件のコメント
本記事には示されていませんが、2016年にテキサス州のガルベストン湾で発生した事故に関するものであると考えます。
また、この事故の発生原因に対する対策として、ストラップ・パックの改修が行われています。
「部隊での飛行時間」に対応する原文は、「hours in MTDS」です。
Flightfax 編集者に確認したところ、「MTDS」は「Mission, Type. Design, Series」の略語で「aircraft in Army」を意味するそうです。
対応する日本語が見つかりませんでしたので、「部隊での飛行時間」と意訳しています。