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陸軍航空の情報センター

航空事故回顧ーAH-64Dロングボウのワイヤーストライク

AH-64Dアパッチが周密攻撃を実施中、操縦していた機長の見張りに間隙が生じた。当該機長は、左肩越しに僚機(2番機)を探すことに集中しすぎてしまったのである。機体は、送電線に衝突し、地面に墜落した。搭乗員は、軽傷を負った。機体は、全損と判定された。

飛行の経過

事故機は、機甲師団に対する作戦支援の訓練に参加中であり、ある諸兵科連合部隊を火力戦闘支援する4機のAH-64Dのうちの1機として行動していた。搭乗員は、任務計画を作成し、危険見積を行って、飛行承認を得た。当該任務は、PNVS( pilot night vision systems, パイロット暗視センサー)、NVG(night vision goggles, 暗視眼鏡)およびTADS(target acquisition and designation system, 目標捕捉・指示照準装置)を使用して行われていた。

事故が発生した時、操縦を行っていたのは、後席の機長であった。レーザー装置に不具合が発生していたため、事故機である1番機は、火力攻撃を行う稜線よりも前方に進出し、2番機に手動で目標情報を送達しなければならなかった。作戦の進捗に伴い、1番機は、敵火力からの陰掩蔽を得るため小移動を行った。移動間、1番機の機長は、機体を操縦士しながら、副操縦士に機内の照準装置を用いて目標情報を把握し続けるように指示した。2番機の位置が気になった機長は、2番機から距離を確保できていると通報があったにも関わらず、左肩越しにそれを探していた。連続した旋回を終えた後、超高圧送電線に衝突する直前になって、副操縦士がワイヤーを発見・報告した。機体は、不時着して、地面に激突した。搭乗員に重大な負傷はなかった。

搭乗員

機長の総飛行時間は2,813時間であり、当該機種での飛行時間は2,733時間であった。副操縦士の総飛行時間は495時間であり、当該機種での飛行時間は411時間であった。

考 察

当該機が送電線に衝突した原因は、距離を確保できており問題がないという通報が2番機からあったにも関わらず、機長が2番機を目視で確認することに集中しすぎたことにある。当該機長は、搭乗員訓練マニュアルに示されている空域の監視を怠ってしまった。

さらに、当該機の搭乗員は、飛行時間管理が不適切であり、機内に障害物情報も携行していなかった。これらの作戦規定および搭乗員訓練マニュアルから大きく逸脱した状態を生じさせたことが、送電線事故を発生させたものと考えられる。

陸軍航空が装備する最新の情報システムを活用して飛行任務や飛行前準備を実施したとしても、エラーによる事故の発生を完全に防止することはできない。指揮官および指導者は、部隊における搭乗員の飛行時間管理、搭乗員訓練マニュアル(空域の監視)の遵守および飛行計画の作成がどのように行われているのかを確実に把握しなければならない。

国外派遣頻度が高く、実戦的な訓練が必要とされる中、事故の発生を防止するためには、基本的事項が遵守されていることの確認が重要である。指揮官等による監督も十分に行わなければならないが、指揮官等が判断するために必要な情報を提供するのは、現地で任務を遂行する搭乗員の責務である。

いくつかの研究によれば、疲労した人員には、認知作業に固執しすぎ、複数の作業を同時並行的に行う能力が低下する傾向が見られる。搭乗員の疲労の兆候を把握するためには、継続的な観察が必要となる。搭乗員は、任務遂行に積極的になるがあまり、自分たちの疲労度や累積飛行時間について、控えめに報告をするようなことがあってはならない。そのようなことを行えば、危険見積や搭乗員選定を行うために必要な情報を指揮官に与えないことになってしまうのである。

                               

出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2019年07月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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