AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

陸軍航空に関わる教義の改定について

大佐ジョージ・G・フェリド
退役大佐ジミー・L・ミーチャム

この記事は、陸軍航空に関わる教義(ドクトリン)の改定について、その概要を説明するものです。私は、USAACE(United States Army Aviation Center of Excellence, アメリカ陸軍航空教育研究センター)のDOTD(Directorate of Training and Doctrine, 訓練および教義部)長に着任するまで、航空科職種にとって何が変わったのかをほとんど理解できていませんでした。操縦課程への入校や2,3回の臨時勤務を除き、陸軍航空の原動力であるフォート・ラッカーで勤務したことがなかった私には、それについての十分な知識がなかったのです。長年にわたって第一線部隊で勤務し、フォート・ラッカーが作り上げた教義および訓練に関する教範類を使うだけだった私が、今度は、それらを作成する立場になってしまったのです。

絶えず進化を続ける教義や訓練に関する教範類の作成は、頭がクラクラするくらいに大変な作業でした。MDO(Multi-Domain Operations, マルチドメイン・オペレーション)、LSCO(Large-Scale Combat Operations, ラージスケール・コンバット・オペレーション)およびAviation Warfighting Initiative (アビエーション・ウォーファイティング・イニシアチブ)などの用語も、よく耳にしてはいたものの、それに対する理解は表面的なものに留まっていました。運用部隊から数年間離れ、特別な任務(non-typical assignments)を行なってきたため、教義に関する基礎的な知識が失われ、それを航空専門家として活用する方法を忘れてしまっていたのです。加えて、対反乱作戦の計画、準備および実行や、他国軍の能力向上のための派遣というような任務を場当たり的に繰り返してきたため、航空教義に対する理解を失ってしまっていたのです。言い訳ではありませんが、これまでの20年間の現実は、実際、このようなものだったのです。

部長に就任し、部隊用の教義解説書を評価・承認する立場となったからには、現在の戦術、技法、手順および用語への習熟に没頭しました。まずは、部長として、というよりも航空専門家として、教義に関する教範の作成を最重視し、その方向性を確立しようとしました。USAACE司令官が中隊および大隊レベルの教範を非常に重視していたことが、その意識をさらに高めてくれました。

(陸軍航空に関連する)3-04シリーズの教範類は、そのほとんどが改定を完了しており、LSCOにおける航空運用の基盤を格段に充実させています。DOTDおよびUSAACEチームが、LSCOが重要視されるようになってからわずか1年以内の期間でそれをやり遂げたことを誇りに思っています。各級指揮官には、教義と訓練に関する教範類に従い、訓練の方針を転換し、部隊を最高の状態に維持するように努めてもらいたいと思っています。DOTDは、LSCOにおける「即応」能力の向上を重視しつつ、教義の更新を継続してゆきます。今後数カ月の間に、いくつかの主要な教範類が公開されてゆく予定となっています。

FM3-04 陸軍航空(Army Aviation)は、従来の教義を改定し、諸職種連合チームの一部を形成する陸軍航空戦力が、作戦環境を形成し、紛争を防止し、LSCOを遂行して対抗部隊(peer competitor)に対する優位性を確立するための方策を示しています。また、下位の教義および訓練に関する教範類、専門的軍事教育、指揮官の育成ならびに各個および部隊訓練の基盤を提供するものとなっています。FM3-04の重要な改定事項には、航空科部隊におけるマルチドメイン効果の実現、敵の攻撃に対する航空科部隊の抗堪性(指揮所の抗堪性を含む)に関する項目の追加、航空科部隊への対空戦闘およびエア・ボルケーノ(air-volcano, 航空地雷散布)能力の追加などが含まれています。

ATP3-04.1 航空戦術運用( Aviation Tactical Employment)に関しては、LSCOにおける諸職種連合チームの一員として運用される小部隊指揮官として必要な情報を提供できるように書き換えられました。この書き換えには、次の3つの意図があります。(1)航空戦術任務を計画、準備および実行するすべての中隊規模の部隊に役立つ教範とすること、(2)いかなる運用環境にも適合できる教範とすること、(3)T&EO( training and evaluation outlines, 訓練評価基準)に適合させつつ、さらにその内容を拡張した教範とすることです。この教範は、T&EOによって示された航空戦術任務に関する指針をより具体的に説明しています。その内容は、T&EOに記載された練度段階に適合し、かつ、それらの戦術任務の計画、準備および実施に関し、より詳細な説明を加えたものとなっています。航空機の取扱書が単なるチェックリストよりも具体的な手順を述べているのと同じように、この教範は、T&EOに示された手順に詳細かつ広範な説明を加えているのです。

ATP3-04.2 航空戦闘戦術及び生存性(Aviation Combat Tactics and Survivability)は、DOTDの生存性(サバイバビリティ)部門が作成を完了したばかりの教範です。生存するための技術と敵の脅威に関する情報を網羅したこの教範が、部隊にとって役立つものであることを確信しています。戦闘部隊が実施する生存性に関する訓練の効果を増大させ、いかなる環境においても任務を遂行できる能力の向上に貢献できると思っています。この教範は、まもなく、DOTD生存性部門の情報共有サイトで入手が可能になります。

ATP3-04.7 陸軍航空整備(Army Aviation Maintenance)は、過去9ヶ月間に実施された一連の航空整備TTX(Table-Top Exercises, 卓上演習)で得られた成果に基づく修正が行われます。これらのTTXは、LSCOにおける兵站業務に関し、機動展開作戦の一部を担う航空整備部隊に焦点を当てた詳細な分析を行うための想定に基づき、LSCOの時系列に沿って実施するものでした。具体的には、駐屯地から戦場への移動能力を確認し、その後、敵部隊と対峙しながら行う補給整備業務を検証したのです。このTTXを通じて、戦場における部隊の配置、整備チームの構成、能力および規模、ならびに航空機の後送要領について、さまざまな知見が得られました。

ATP3-04.2を除く教範類は、www.armypubs.army.mil.で入手が可能となっています。DOTDの教義および部隊訓練部門からは、DOTDから公開されているすべての教義、訓練および訓練支援に関する教範類の現状を表した要約版が公開されています。それは、https://www.ako1.us.army.mil/suite/ files/8816809で入手が可能です(訳者注:このサイトへのアクセスには、ユーザーIDおよびパスワードの入力が必要です)。

教義および訓練戦略は、現在の敵の能力に対処できるように進化させなければなりません。現状を維持することは、敵との戦いに敗北することを意味するのです。

大佐ジョージ・G・フェリドはアラバマ州フォート・ラッカーの米陸軍航空教育研究センターの訓練および教義部長、退役大佐ジミー・L・ミーチャムは同副部長である。

                               

出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2019年07月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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2件のコメント

  1. 管理人 より:

    本記事で紹介されている教範の改定版については、現時点では、まだ公開されていないようです。

  2. 管理人 より:

    以下の訳語については、適当なものが見つけられませんでした。適切なものがあれば、教えていただけると助かります。MDO(Multi-Domain Operations)、LSCO(Large-Scale Combat Operations)、Aviation Warfighting Initiative、non-typical assignments、peer competitor。