AH-64ベアリング・キャップ工具
DES(Directorate of Evaluation and Standardization, 評価・標準部局)が最近実施した5個部隊に対する検査において、「リード・ラグ・リンク・ベアリング・キャップ・レンチ(Lead Lag Link Bearing Cup Wrench)」または「ヘラ(Spatula)」と呼ばれる非正規の工具が使われていることが確認された。この工具は、補給されたものではないが、メイン・ローター・ベアリング・キャップの取り付け、取り外しおよび飛行により回転してしまった場合の修正に広く用いられているようである。
AH-64-07-ASAM-11 およびAH-64用IETM(Interactive Electronic Technical Manual, 対話型電子整備実施規定)には、ベアリング・キャップとリテーナーの間隙が20/1000インチであることを25飛行時間毎に確認するように指示されている。また、リテーナーの再取り付けや交換を行っても、間隙が20/1000インチ以下にならない場合には、メイン・ローター・ブレードおよびリード・ラグ・リンク・アッセンブリを取り外し、ハブ・ベアリングを交換することになっている。この非正規の工具を使用すると、ベアリング・キャップを元の位置まで回転させるのに必要な時間を短縮することができるが、キャップが回転した原因である内部摩耗を見逃してしまう可能性がある。ASAMの規定の目的や背景を理解していない整備員や監督者たちは、この種の手順が論理的かつ効率的であると思いがちであるが、この非正規の工具を使用することは、悲惨な結果をもたらす可能性がある。
部隊に配布されているIETMなどのいかなる規定においても承認されていないこの工具が、ほとんどの検査対象部隊で使われていたことに、DESとしては大きな危惧を抱いている。更に重要なことは、本件のように非正規の手順で整備を行うことは、正規に発行された整備基準の順守を無視することであり、機体の重大な欠陥を見落とすことにつながりかねないということである。本件は、AH-64のみに該当する事例であるが、すべての部隊において、各部隊における整備が、正規の基準に従って適切に実施されているかどうかを見直す機会としてもらいたい。
出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness/Safety Center 2015年09月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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2件のコメント
ちょっと古い記事ですが、Flightfaxの最新版が公開されていないので、翻訳してみました。
AH-64のこの部分については良く知らないので、翻訳に不適切な部分があれば、ぜひ教えてください。