航空不安全発生状況
不安全報告ツールによる報告に基づく情報(2025年2月現在)
67994(AH-64E ロール軸バックアップ操縦システムの故障)
AH-64Eが超低空飛行(NOE)の訓練飛行中、BUCS FAIL ROLL(ロール軸バックアップ操縦システム故障)のコーション・ランプが点灯した。搭乗員はNOE環境から離脱し、ロール軸をエンゲージしなおした。EUFD(強化型アップフロント・ディスプレイ)のコーションライトが消灯したが、3分ほどでBUCS FAIL ROLLが再び点灯した。搭乗員はロール軸を再度エンゲージを行ったが、再びコーションが点灯した。このため、故障が発生した状態のまま飛行場に帰還した。その後も、ロール軸をエンゲージしなおすたびに故障が繰り返し発生した。
68007(AH-64D バード・ストライク)
飛行前点検中、整備試験操縦士(MTP)がAH-64Dのパイロット・ナイト・ビジョン・システム(PNVS)のシュラウド(外板)にバード・ストライクによるものと思われる痕跡を発見した。操縦士は飛行運用部門および安全管理部門に発見した状況を報告した。整備要員が機体を点検し、損傷がないことを報告した。翌日、当該機は修理や整備作業を行うことなく飛行可能と判断された。飛行記録を確認したところ、当該機は2週間前に夜間飛行を行っていたことが判明した。当該飛行を行った搭乗員は、バード・ストライクの発生を認識しておらず、着陸後の点検でも機体の損傷を確認できていなかった。
68029(CH-47 エスケープ・ハッチを脱落と誤認)
平均海面高度25,000フィート、約120ノットの対気速度で飛行中、ランプ・タン・エスケープ・ハッチが装着位置から見えなくなった。ハッチが機体から外れ下方の市街地に落下した可能性があると考えた搭乗員は、現在地点を記録するとともに、ハッチ・パネルを発見するための周回飛行を開始した。旋回を開始して間もなく、搭乗員は目視による捜索を断念した。引き続き目的地に向かって飛行している間に、ランプの内側に挟まっているハッチ・パネルを発見した。損傷は生じておらず、ハッチ・パネルは適切な位置に再取り付けすることができた。
68059(UH-60M スクリュー等取付未了状態での飛行)
UH-60Mの飛行前点検中、操縦士はテールローター・ピッチ・ビーム・ナットにスクリューが2本付いておらず、セーフティ・ワイヤーも取り付けられていないことに気付いた。整備要員がナットの締め付けトルクを確認したところ、緩みは生じていなかった。その後、スクリューとセーフティ・ワイヤーが取り付けられた。飛行記録を確認したところ、当該航空機はスクリューなどが取り付けられていない状態で2回飛行し、2回のPMD(飛行後点検)が行われ、3回の飛行前点検が行われていた。3回目の飛行前点検で不具合が発見された。
68060(エンジン周辺へのセーフティ・ワイヤーの置き忘れ)
整備要員がUH-60Lの機外ホイストの整備を実施していた。その日の夕方、搭乗員が飛行前点検を実施中、メイン・トランスミッション付近のNo.2 エンジン・カウリング上に.020インチのセーフティ・ワイヤの巻線が置き忘れられているのを発見した。当該事案は、整備監督者に通報された。当該FODは除去され、No.2 エンジン周辺の目視検査が再度実施された。週末に安全ブリーフィングが行われ、全搭乗員に対して不安全教育を実施して、教訓の周知が図られた。
68065(飛行中にアキュムレーター油圧が許容値を超過)
トラフィック・パターンを終了する直前にアキュムレーター油圧が許容値を超過した。双方のパイロットが多機能ディスプレイにエンジン・ページを表示させていたため、航空機システムを通じてアキュムレーター圧力が3400を超えているのに気づいた。搭乗員はFADEC-F(※)プロセスを実施し、状況を評価した上で駐屯地への帰投を決心した。帰投中、アキュムレーターの圧力は上昇を続けたが、航空機に他の不具合の兆候は見られなかった。着陸後、APU(補助動力装置)は正常に始動し、搭乗員は通常の方法で主エンジンを停止した。部隊整備員は、不具合の原因がトランスデューサーの故障であると判断し、当該部品を交換した。他の部品または系統への影響はなかった。
※:「FADEC-F」は緊急時における対応手順の記憶法。 F:Fly the aircraft.(航空機を飛ばせ) A:Alert the crew to the problem.(問題発生を警報せよ) D:Diagnose the emergency condition or system malfunction.(本当に緊急状態なのかを判断せよ) E:Execute the emergency procedure.(緊急操作手順を実施せよ) C:Communicate.(情報を共有せよ) F:Fly the aircraft.(航空機を飛ばせ)
68164(飛行前点検中にテール・ローター・ブレードのアブレーション・ストリップの剥離を発見)
機体の飛行前点検において、テール・ローター・ブレードのアブレーション・ストリップ(耐摩耗テープ)が複数箇所で剥離しているのが発見された。同日の夜明け前にASF(飛行支援部隊)の要員によってPMD(飛行後点検)が実施されており、整備記録には異状なしと記載され、署名されていた。経験豊富な操縦士が注意深く点検を実施したことにより、3枚のテール・ローター・ブレードにアブレーション・ストリップの剥離を発見した。この状態は、飛行禁止に該当する。PMDの実施中に補助照明を使用しなかったことが影響を及ぼした可能性がある。PMDは日中に実施することが最善であり、夜間に行う場合は適切な光源を使用することが望ましい。本不具合は、ASFに通報された。
68167(飛行前点検中にFODを発見)
機体の飛行前点検を実施中にFODが発見された。パイロットがテール・ローター区画を点検中、テール・ローター・ホーン上に大型のタイラップが引っかかっているのが発見された。テール・ローター・ホーン上にタイラップがあると、テール・ローター系統に接触する恐れがあった。発見されたFOD(異物)はASF(飛行支援部隊)の整備部門に通知され、問題が是正された。この航空機はテール・ローター・ブーツ・カバーの修理および再取り付けが行われたばかりであったが、PMD(飛行後点検)ではFODが発見されていなかった。整備作業を完了する前に、すべての工具および部品の員数点検を確実に実施するように徹底しなければならない。本事例は、ASFの整備部門に通知された。
68206(電波高度計の故障)
訓練空域内の着陸帯においてフードを使用した計器飛行訓練を実施中、10フィートのホバリングを行おうとしたところ、電波高度計が誤った値を表示した。搭乗員はすべての携帯電子機器を機内モードにしたが、電波高度計の表示に変化はなかった。搭乗員は訓練空域を離脱し、駐屯地に帰投した。
68390(格納庫ドアへのブレードの接触)
クルー・チーフが地上誘導員なしで航空機をけん引車で移動させていたところ、航空機のブレード・タイダウンが障害物に引っかかった。ローター回転し、大型格納庫のドアの角にローター・ブレードが接触した。機体およびブレードに損傷はなかった。
出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2025年02月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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1件のコメント
このような不安全がなぜ起こったのが重要です。
加えて、これらが事故に至らかなかったのはなぜなのか、というのも同じくらいに(もしかするとそれ以上に)重要だと思います。